【第一二話】
少し歩いていると、どこからか美味しそうな匂いが漂ってきた。
僕は匂いに釣られるように歩を進めていくと、そこにはひとつの屋台があった。
「いらっしゃい!」
近づいてきた僕に気がついたのか、店のおじさんがそう声をかけてきた。
「こんにちは、美味しそうな匂いに釣られて来たんですけど、何を売ってるんですか?」
「お、兄ちゃんいい鼻してるね! ワシが売っとるのはハンバーガーちゅうものじゃ。東の国では結構有名なファストフード? とやららしい。ひとつ二百ペリ、買ってくかい?」
おじさんが見せてきた食べ物は、トマトやレタス、チーズや肉などをパンで挟んだ食べ物だった。
出来たてなのかまだ湯気が出ていて、とても美味しそうだ。
二百ペリは銅貨二枚とお手軽に食べれるのもポイントが高いだろう。
硬貨の説明をしておくと小さい順に
鉄貨が十ペリ
銅貨が百ペリ
銀貨が千ペリ
金額が一万ペリ
というふうになっている。
袋いっぱいの金貨……僕はアシュタルさんからいったいいくら貰ったんだろうね。
「二百ですよね……じゃあ、二つください」
僕は元々持っていた小銭入れから銅貨を四枚取り出してそう言った。
できることなら、アシュタルさんから貰った金貨は念の為に取っておきたい。
今後何があるか分からないから念の為にね。
「あいよ、少しだけ待ってな」
僕はそのまま、おじさんがハンバーガーを作り終わるのを待っていた。
店を出してるだけあって、おじさんの手際はすごく良かった。
「ほい、ハンバーガー二つだ」
「ありがとうございます」
ほんの数分で完成したので、僕はお代を払い、品を受け取ってその場を離れた。
歩きつつ、僕はハンバーガーを食べてみる。
歩きながら、っていうのは少し行儀が悪いかもしれないがそんなことを指摘してくるような人もいないわけで、僕は気にせずハンバーガーにかぶりつく。
「ん! うまっ……え、なにこれすげぇ美味いんだけど!」
みずみずしいトマトと、シャキシャキのレタス。
ジューシーな肉とそれによく合うチーズ。
上下のパンとマッチしていて、いくらでも食べれるような気さえしてくる。
さらに食欲を誘うのはなんと言っても間にあるタレだろう。
何で作られているのかは分からないが、全ての食材の味を最大限にまで……いや、それ以上に引き出していた。
いわば味の暴力。
今僕の口内はこのハンバーガーにボコボコにされている。
「…………」
気がつけば僕はハンバーガーを食べきっていた。
その場に残ったのは謎の喪失感だけ。
もっと食べたいとも思うが、腹は十分に満たされている。
手軽に食べれてこれだけ満足出来るのなら、東方で有名になる理由もわかる気がする。
僕はまた来た時に絶対買おう、そう決意して乗合馬車を出している場所へ向かった。
馬車停——馬車が止まる場所——に着くと、僕以外に人はいなかった。
時刻表を見れば、あと数分で馬車が来るらしい。
僕はハンバーガーを思い出しながら、馬車が来るのを待ったのだった。
それから数分後。
二頭の馬が引いている馬車が馬車停に止まった。
御者台には、二人座っていた。
「王都行きの馬車だけど、乗る?」
手網を握っていた男の人がそう聞いてきたので、僕は頷く。
「それじゃあここからだと三千ペリだよ」
「すいません、銀貨がないんで金貨で出してもいいですか?」
「お釣りはあるから大丈夫だよ。っと、じゃあお釣りの七千ペリね。もうすぐ出発するから乗って」
七枚の銀貨を私ながら男の人がそう言ってきたので、僕は言われた通りに馬車に乗り込む。
中には僕以外に、三人の人が乗っていた。
一人目は全体的にボロボロの服を着ていて、フードを深く被っているせいか顔をよく見ることの出来ない男と思われる人。
二人目はどこかの制服を着た少女だ。
金髪を腰くらいまで伸ばしていて、何となくだけど気が強そう。
最後の三人目も二人目の少女同様、制服を着ており、双子なのか姉妹なのか分からないが、とてもよく似た少女だった。
二人目の少女との違いと言えば、二人目の少女……この言い方はめんどくさいから次から二人目の方を少女A、三人目の方を少女Bとするが、少女Aは目の色が赤色なのに対して、少女Bは青色の目をしていた。
少女Bは何となく、気の弱そうな気がする。
どこに座ろうか迷った結果、一人目のフードを被った人の横に座ることにした。
あの少女二人の隣は色々言われそうで怖かったってのもある。
僕がちらっと少女ーズの方を見ると、少女Aと目が合い、キッと睨みつけられた。
「こ、こんにちは……」
出会ってそうそうなんでこんなに嫌われてるのか分からないけど、これから王都まで同じ空間にいるわけだから、さすがにこのままだと気まずい。
そう思ってとりあえず挨拶をしてみるが、当然のように返事は帰って来なかった。
「…………」
気まずい雰囲気の中、馬車は王都に向かって走り続けるのだった。
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