【第一一話】
書いていくうえでの矛盾点を加筆修正しました。
他に矛盾点がありましたら、感想などで教えてくださると助かります。
アシュタルさんの許しが出てから、僕は小袋いっぱいのお金と王立図書館への紹介状を持って王都に向けて出発していた。
アシュタルさんは、馬車を出してくれると言ってくれたけど、道中出てくるモンスターを倒して、戦闘経験を積みながら行きたかったから申し訳なく思いながらも断った。
出発直前になって、シャルがカバンを背負って着いてこようとしたけど、アシュタルさんやメイドさん達に止められていた。
僕はそんな感じでフォーサイス家の人達に見送られながら旅立ち、現在は辺り一面の花畑の中を歩いていた。
街を出る直前に知ったのだが、街の名前はエストブルと言うらしく、今僕が歩いているこの花畑もエストブルの名所の一つだそうだ。
街を出てからだいたい一時間ほど歩いているけど、未だに花畑の終わりが見えないことから、相当な広さがあることが分かる。
今度戻ってきた時には、シャルと一緒に見て回りたいなぁ……
そんなことを考えながら僕は歩き続けた。
***
一時間ほど経って、ようやく花畑の端にまで来た。
街からここまで二時間程歩いてきたが、モンスターとは一度も遭遇することがなかった。
アシュタルさんの話では、花畑が終わってから三時間程で次の街にたどり着けるそうだ。
だから、ここから次の街までの三時間の間に、何かしらのモンスターと遭遇出来たら少しくらいは僕でも戦闘技術が上がるのではないだろうか。
「——ッ!」
そう考えて歩いていたからだろうか。
花畑を出てすぐに、近くの木々から何本かの矢が飛んできた。
僕は奇跡的にそれに気づいて、咄嗟に地面に伏せた。
すると、僕の上を六本の矢が通り過ぎて行った。
僕はすぐに剣を抜き構える。
木からはまた矢が飛んできたが、今度は準備ができていたので、余裕を持って避ける。
そのあと数回飛んできたが、僕が全部避けると当たらないと理解したのか木からは十体近いモンスターが降りてきた。
「ゲギャ! グギャギャ」
「ギャギャ、ゲギャギャ!」
理解できない言葉で会話している目の前のモンスター達は、ゴブリンと呼ばれ、最弱のモンスターとして有名だ。
ゴブリンは、緑色の肌を持ち子供ほどの身長しかない鬼だ。
知能は高く、武器や集落をつくるが、その分力も弱く、魔力も持たない。
ゴブリンにはメスがほとんど生まれないと言われ、人などをさらって苗床にすることから、見つけ次第殲滅することが推奨されている。
しかし、最弱と言っても戦う力のある者達からすればの話で、農村などはゴブリンの被害に苦しめられるところも少なくないと聞く。
そんなゴブリンが、今僕の目の前に九体。
全員が木製ではあるものの武器を持っており、一番先頭に立つ一体はラウンドシールドを持っていた。
そしてその両サイドの二体が槍を持っていて、残りの六体が弓だった。
知能が高いと言われるだけあって、編成がしっかりしていた。
「油断は出来ないけど、いい練習相手にはなるかな……」
僕はゴブリン達の方に一気に駆ける。
狙うは厄介な遠距離武器を持った六体。
僕が急に近づいてきたことで、盾持ちのゴブリンは慌てて前に出てくる。
僕が剣を振りかぶると、盾持ちは盾を上に構えた。
そこで僕は勢いを落とさないまま方向転換をして、ゴブリン達を中心に時計回りに走る。
盾持ちゴブリンがいた場所を六時だとすると、僕は十二時の場所まで走り、一気に弓持ちゴブリン達に接近する。
盾持ちは未だ構えたままなので、どうしたらいいか分からず慌てふためいている弓持ちの一体を手に持った剣で切り裂く。
すると、切られたゴブリンは傷口から血を撒き散らしながらその場に倒れた。
僕はそのゴブリンが倒れたのを横目で確認しつつ、次の標的に斬り掛かる。
そのまま弓持ちのゴブリン達に抵抗させず斬っていくと、やっと気がついたのか盾持ちがこちらに来るのが見えた。
僕は最後の一体の弓持ちを倒した後に、盾持ちを対処する。
「ふっ!」
盾を正面に構えながら突撃してくるゴブリンを、体格差を活かして蹴り飛ばす。
ゴブリンは飛ばされる際に盾を落としたが、何をされるか分からないのでしっかりとトドメを刺しておく。
僕が倒れた盾持ちゴブリンの胸に剣を一刺しした瞬間、槍持の二体が飛びかかってきた。
そしてゴブリンたちは僕に向かって槍を突き出してくる。
僕はその槍を半歩横にズレることで回避した。
そのまま横を通り過ぎた槍に剣を叩き込み、槍の真ん中から真っ二つにへし折った。
「グギャッ!?」
「ギャギャァ! グギャ!!」
武器を失ったことで不利だと判断したのか、二体のゴブリンは叫びながら逃げ出した。
僕は折った槍の先端を拾い上げ、片方のゴブリンに投擲する。
それと同時に僕はもう一体のゴブリンに斬りかかった。
投げた槍先は見事、ゴブリンの背中に突き刺さりゴブリンはその場に倒れた。
斬った方は無防備な背中を斬られ、こちらも同じく地に伏した。
「ふぅ……思ったより上手く立ち回れたな」
魔法が使えれば、逃げ出したゴブリンの処理がもっとスムーズにできたのに……。
僕はそう思いながらも、倒れているゴブリン達を見る。
息絶えて、ピクリとも動かないゴブリンたちから魔石を剥ぎ取り、腰のポーチに入れていく。
この魔石もエネルギーの塊のようなものらしく、街で売ればそれなりの値段にはなる。
アシュタルさんに結構なお金を貰っているが、それもいつまでもある訳じゃない。
こういったところで稼いでおいて損は無いだろう。
こうして、ゴブリン達との戦闘を終えた僕は、また王都に向けて歩き出したのだった。
***
あれから四時間ほど経って、ようやく街が見えてきた。
僕はゴブリン達を倒した後、すぐにウルフという狼の魔物に襲われた。
数は三匹と、そんなに多くなかったので結構簡単に倒すことができた。
そのあとも何度かゴブリンやウルフに襲われながら、この街にたどり着いたのだった。
僕の剣術は我流のものだったので、実際にモンスターと戦ってみて色々と必要なものが見えた気がした。
その上結構な量の魔石も手に入ったので、剣術を鍛えながら金を稼ぐ……フォーサイス家で馬車を断った甲斐があったと言えるだろう。
「次……」
そんなことを考えていると、街の入口まで着いていた。
一応犯罪者などではないかのチェックがあるようなので、列に並んで自分の番が来るのを待った。
「次……」
それから二十分程で僕の番が来た。
鎧を身にまとった男性のところに行き、犯罪などをおかしていないか検査する。
検査と言っても、設置された石板に魔力を流すと、その人間の過去の犯罪などが分かるというものだが。
僕は石板に魔力を流し、犯罪歴がないことを証明してから、街に入った。
街の中は、道路がしっかりと舗装されており、至る所に該当が設置されていた。
これなら夜も安心して外に出られるだろう。
人が多く、色々な店があった。
王都から帰ってくる時にもう一度寄って、シャルやアシュタルさん、ハンリエッタさんにお土産でも買っていこうかな……。
そんなことを考えながら街を歩く。
ふと、近くにあった時計を見れば、もうすぐ昼食の時間なので、どこかで軽く食べてから王都に向かうことにした。
僕はそのまま街を歩きつつ、どこか美味しそうな店を探した。
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