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【第一〇話】

誤字脱字がありましたら報告お願いします。

「あの、ルイス様……昨夜のお風呂での返事……聞かせて頂けますか……?」


 シャルロットは恥ずかしそうに、だが、真剣な顔で僕にそう言ってきた。


「ッ! ……はい……」


 昨夜気持ちの整理も着いて、今日しっかりと伝えるって決めてたのに……いざこうしてシャルロットを目の前にすると、どう切り出していいか分からなくなった。

 僕がそうやっていつまでも言えないでいるからシャルロットにこんなこと言わせて……


「僕は……シャルロット様の事が好きです。平民の僕なんかで良ければ……ぜひ付き合ってください」


「ッッッ!! ルイス様!!」


 僕がそう言うと、シャルロットは僕に抱きついてきた。


「ちょっ……シャルロット様!? 運動したばかりで少し汗もかいてるんで……」


「気になりません! 私、ルイス様に断られるものだと思っていたので……だから、嬉しくて……!」


「……僕も凄く悩みました。シャルロット様のことは好きですけど、身分差とか、色々と(しがらみ)も多くて……。最初は断ろうと思ってたんですけど、どうしても断れなかったです」


 これから相当頑張らないといけなくなる。

 シャルロットに釣り合う男になるためには、少なくとも男爵以上の貴族にはならないと。

 そう簡単になれるとは思ってないが、なる為なら努力を惜しまないつもりだ。


「……私とお付き合いすること、後悔はしてませんか……?」


「どうしてそんなに不安そうなんですか……後悔なんてしませんよ。僕はシャルロット様の事が好きなので」


 抱きついていた体を離し、不安そうな目でそう問いかけてくるシャルロットが可愛くて、僕はシャルロットの頭を撫でながらそう返した。


「んぅ……それなら良かったです」


 シャルロットは頭を撫でられたのが嬉しかったのか、僕の返事が嬉しかったのか、それとも両方なのか分からないが、顔を赤くしながらも笑顔でそう言った。


「そうだ。こうしてお付き合いすることになった訳ですし、お互い敬語は無しにしませんか?」


「わかり……分かった。これからは普通に喋るよ」


「はい! そっちの方が自然な感じがして好きですよ。えっと……ルイ君!」


 ルイ君!?

 なんかあだ名みたいなのは呼ばれ慣れてないから、ちょっと恥ずかしいな……

 それに、シャルロットは微妙に敬語が抜けきれてないし。


「じゃあ、僕はシャルって呼ぼうかな」


「お願いします!」


「……さっきからシャルは敬語が無くなってないね」


「えっ……あ、そのー……癖になっちゃってるので……すいません。自分から言い出したことなのに……」


 ま、と言っても今までに比べたら随分と柔らかくなった方じゃないかな?

 最初とか、結構ガチガチに敬語だったし……

 癖ならしょうがないみたいな所もあるし。


「そのうち僕相手には敬語じゃなく喋れるようになったら嬉しいけどね」


「頑張ります……」


「うん。……っと、そろそろ戻った方がいい?」


 太陽の位置的に、僕が外に出てきてから結構時間が経ってそうだけど……


 僕がシャルに聞くと、シャルはポケットから懐中時計を取り出し時間を確認した。


「あっ! もうこんな時間! そろそろ朝食の時間なので、戻りましょう」


 まだ素振り五十回しかできてないけど……

 今はいいか。朝食食べ終わったら続きをやれば。


 そうして、僕はシャルと手を繋いで屋敷まで戻った。



 ***



 昨夜も使った食堂にまたやって来た。

 扉を開けて中に入ると、もう既にアシュタルさんとハンリエッタさんは椅子に座って待っていた。


「……二人は随分と仲良くなった様だな」


「あらあら……ふふふ……」


「あっ……」


 二人にそう言われ、手を繋いだまま入ってきてしまったことに気がついた。

 中にいた二人は、僕達の様子を見て何かを察したらしい。

 アシュタルさんは青筋を浮かべつつ、引き攣った笑顔で言う。

 それとは対照的に、ハンリエッタさんは純粋に嬉しそうにニコニコと僕達のことを見ていた。


 ここに来るまでの途中、シャルが水の魔法である【ウォッシュ】を使って、僕の汚れなんかを綺麗にしてくれた。

 その時に何故かまた抱きつかれて、さっきは告白の興奮からかそこまで意識してなかったが、今回は色々と意識してしまい理性との殴り合いになったせいで手を繋ぎ直したことを忘れていた。


 肝心のシャルは両親に見られたのが恥ずかしかったのか、俯いてプルプルと震えていた。

 プルプル、ボク悪い男じゃないよ。


「とりあえず、食事でも摂りながらゆっくりと話を聞こうじゃないか。ゆっくりとな……」


 ヒィ! ほんとすいません。大事な娘さんと付き合ってすいません!

 怖いよアシュタルさん! なんか心臓止まりそうなくらい威圧されてんだけど……!


「は、はい……」


 僕は最悪殺される覚悟をして、大人しく席に着いた。

 シャルはずっとプルプルしてた。

 ぷるぷるぷるぷる……


「恥ずかしい……」


 小声でボソッとそう呟いたのを僕は聞き逃さなかった。

 プルプルしながらそんなこと呟くとか可愛いな。


 僕が隣のシャルを見て癒されていると、アシュタルさんが話し始めた。


「さて、ルイス君。シャルとは一体どういう関係なんだい?」


「えっと……お付き合いをさせて頂いておりますです。はい」


「……ふむ」


 それっきりアシュタルさんは黙り込んでしまった。

 そしてすぐにハンリエッタさんが質問してくる。


「告白はどっちからしたのかしら?」


「わ、私からです……」


「まぁまぁ! シャルはルイス君の事が好きなのね?」


「はい! 一目見た時から!」


 さっきまで震えていたシャルはハンリエッタさんの質問に元気よく答えた。

 そんなシャルの真っ直ぐな好意に、僕は顔が熱くなるのが分かった。


「ルイス君も、シャルのことは想っているのか?」


「はい!」


 何かを考え込んでいたアシュタルさんがそう聞いてきたので、僕はしっかりと答える。

 告白されてから意識しだしたところはあるけど、この気持ちは僕のものだ。

 シャルを想っているか、なんて質問は当然と答えられる。


「ふぅ……当人同士が決めたことなら、私たちから言うことは無い。ルイス君は食後に執務室まで来てもらえるだろうか」


 ぐっ……呼び出しとか怖すぎる……

 けど、一応許しは出たということでいいんだろうか?

 アシュタルさんは「私たちから言うことは無い」と言っていたし、親公認でいいんだろうか。


「……分かりました」


 それから朝食を食べたが、どんな話をされるのか心配であまり味を楽しむことは出来なかった。



 ***



「失礼します、ルイスです」


 そして朝食後、僕はアシュタルさんのいる執務室にやって来た。

 場所が分からなかったので、メイドさんに案内してもらった。

 シャルはハンリエッタさんに捕まっていたので……


「入ってくれたまえ」


 すぐに中からアシュタルさんの声が返ってきたので、僕は扉を開けて中に入る。


「さて、ルイス君を呼んだのは二つの理由がある。一つ目は昨日聞いていたお礼の品を何にするかについて。これはルイス君が王都に向かう時にでも渡そうと思っている。もちろん図書館への紹介状も付ける。二つ目はシャルロットについてだ。ルイス君がシャルロットと交際したいというのなら、それに伴う責任を理解してもらいたい」


 一つ目に関しては昨日のうちにお金を貰うと決めたので、それを言えば問題ないとして、二つ目のシャルと付き合うことで起こる責任。


「責任……」


「あぁ、あの子はあれでも公爵家の令嬢という立場がある。私は個人の自由に恋愛をすればいいと思っているが、貴族の中にはそうでない考え方をする者も多い。貴族は貴族と、そういう考えを持った者が少なからず存在する。そして、そういう連中は、言い方は悪いが……中古を嫌う。今までシャルロットは誰とも交際してこなかった。ルイス君が初めての相手となる。今までの話の流れで察しているとは思うが、もしルイス君との交際が上手くいかなかった場合、シャルロットは嫁の貰い手がほぼ居なくなると言っても過言ではない。……ルイス君がシャルロットと交際するということはその先の結婚まで見据えて貰いたいのだ」


 そうか……

 一度、パートナーを作ってしまえば変えることは出来ない。

 それが貴族の世界の考え方なのか。

 僕はシャルをずっと大切にするつもりだし、別れるつもりなんて毛頭ないから大丈夫だと胸を張って言えるが、そういう考え方も多いってことは覚えておいた方がいいかもしれない。


「それでもルイス君はシャルロットと交際するかい?」


「……僕はシャルロットを幸せにしたいです。シャルロットが僕のことを好きだと言ってくれるなら、僕はなんでも出来る。交際することで、シャルロットの今後を背負わなければならないというなら、僕は喜んで背負います。ですから、シャルロットとの交際を、許してください!」


 僕は自分の気持ちを全て話し、アシュタルさんに頭を下げる。


「……さっきも言ったが、当人同士が決めたなら私は許さないなんてことは無い。ただ、シャルロットと交際するということがどういう事なのかをしっかりとわかっていて欲しかっただけだよ」


「アシュタルさんのおかげでよく理解出来ました。僕は絶対にシャルロットを裏切るようなことはしません」


「分かった。ルイス君が悪い男じゃ無いことは話していて分かった。どうか娘をよろしくお願いする」


 そう言ってアシュタルさんは頭を下げてきたので、僕も慌てて「こちらこそお願いします!」と言いながら頭を下げたのだった。

なかなか書くのが難しくて、主人公にとって都合よく話が進みすぎじゃ……?と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、作者ではこれが限界でした。

これからも精進していくのでどうぞよろしくお願いします!


評価や感想など支えになるのでぜひ。

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