相談チケット1 (1)
”相談チケット1”を千切った
何も起きない…
あんなに緊張してたのに…
あきらめて床に寝転んで、希望の転生の妄想でもするしかないなとおもっい始めていたら
「次の方どうぞ~」
と、声が聞こえた
「次の方って言われてもどうすりゃいいんだよ」とつぶやきながら周りを見渡すと、壁の一面にいつの間にか扉ができていたことに気が付く。この辺りは妙に異世界っぽい雰囲気が出ている。
「次の方って、なんか就職面接みたいだな」と誰にも聞こえないような声でつぶやいていたことは本人も意識してないらしい。
ま、行くしかないかと思い「失礼します」と言いながら扉をくぐる。
扉の先で待っていたのは、少年とも少女ともつかない、東南アジアっぽい民族衣装をまとった若い子だった。机の上にはいくらかの紙と、情報端末と思しき機器が乗っている。
「三途河川庁代表、閻魔大王の代理であなたの入境、出境の相談の手続きをさせていただく審査官142号と申します。よろしくお願いいたします」
丁寧でありながら感情のこもってない定例句の挨拶
「わたしは、えっと…」 ことらのあいさつが必要かと思ったが、自分の名前もわからないので、名乗ることもできない。
「あぁ、個人的に記憶は消してあるので、名乗ってからのあいさつは不要です。時間も限られているので先に進めますがよろしいですか?」
言葉自体は丁寧なのだが、基本的にマニュアル通りの対応しかする気はありませんという雰囲気をわざと強調しているかのような応答である。
「えっ?死後の相談って時間制なのですか?」と、とっさに聞き返す。
「いや、時間制ってわけでもないのですが、我々のほうの人材も有限でして、お待ちになっている方も大勢いらっしゃいますし、永遠に面接を続けるわけにもいかないので…」
急に、歯切れの悪い応答となる。マニュアルの枠を超えてしまったらしい。
「さて、順を追って説明していきますね」
「ハイ」マニュアルの範囲を超えていじってみるのもいいかとも思ったのだが、相談員の心証を悪くしても得るものはないだろうと思いなおし、定型の状況説明を先にしてもらおう。
「三途河川庁は、死亡した皆様にどの道に転生するかを選択していただいた上で、それぞれの道での最低限度のサポートを行うために存在しています。」
「転生は確定なんですか?」
「転生そのものは確定していますが、道によっては個人的記憶だけではなく知識もすべて消去させていただくことになりますので、転生したことに対する記憶も無くなります。その場合、あなた本人は何もないところから生まれたのと大差無いということになります。実際のところ、これまであなた自身も30回以上転生していますが、今のあなたには最後の人間道で得た知識しか残ってないことからも理解できると思います。」
「へぇ、30回以上も…」
「30回というのは、三途河川庁の記録に残ってる分というだけで、実際にはそれ以上の回数転生しているということですね」
「そういうものなのですね」
「で、お勧めなのはこのまま天上道に転生することです。天上道とは通称天国と言われていた世界で、記憶も知識も消えてしまいますが、人間道で感じた欲や苦悩から解放された人生を送ることができるといわれています。実際この三途河川庁を利用された方のほぼ9割の方が天井道への転生を希望されることになります。」
「なるほど」
「別の選択肢としては、地獄道への転移があります。地獄道といっても人間道で噂されているような、永遠に窯でゆでられるような苦痛を味わい続けるような非人間的な行いはそう多くはなく、一部の人たちにとっては快適ですらあるそうです。また、こちらを選択した場合には、天上道に転生した場合と違い、記憶や知識の操作は行われません」
なんか、突っ込みどころ満載なのだが、とりあえずの選択肢は示されたようだ。
「さ、あなたはどちらを選びますか?」
「えっ? もう選ばなくちゃいけないんですか?」予想外に結論を急がせられる
「はい、時間は有限ですから、効率よく使わないと」
ひどく勝手な言い分である。そっちは、忙しいかもしれないけど、こっちは白い部屋で暇してたんだよ、このまま適当にごまかされて、『はい、行ってらっしゃい』で終わらされてなるものか。
「この世界に来てからと、これまでの相談内容から、いくつか疑問点があるのですが質問しても大丈夫でしょうか?」
「はい、構いませんよ、そのための相談なのですから」
文言は平素なものだが、露骨に面倒くさいといった顔しながら返事をされた。
これからの人生すべてがかかってるんだ、イザ勝負である。
週1更新予定だったのだけど、話の方針が決まるまでは早めに書いといたほうがいいかなということで、連続投稿にしました。
文章がとっ散らかってるのはもうしばらくご勘弁ください。