吸血鬼な彼女
某地方における古い洋館。
レンガのかべ前面に蔦が生え、見るからに異様な雰囲気を醸し出している。
その洋館にはビーカーやら試験管やらが並ぶ科学実験室とまごう地下室があった。
その部屋で、今日も今日とて怪し気な実験を繰り返すマッドサイエンティスト佐々雪乃。
田辺早紀はマッドな雪乃の友達だ。
その日、彼女が実験する同じ部屋で、一本一本丁寧にチビた鉛筆を小刀で削っていた。
そしてうかつにも、左の一指し指をモノの見事に掻き切ってしまった。
まわりにぽたぽたと鮮血がしたたる。
「アッ」
やっちゃった。
「あらっ、勿体ない」
隣でマッドな実験をしていた雪乃はそう言うと迷わず、
ぱくりと指を咥えおいしそうに舐め始めた。
「キャーーン。やめてーっ。カットバン。カットバン」
雪乃は何を隠そう吸血鬼の血を引いている。
人を襲わない代わりに、誰かがケガをしようものなら
吸血鬼の血がうずくのか、迷わず吸いに来る。
「雪乃、いい加減、指から離れないと友達やめるわよ」
拳をぶんぶん振り回し、ぷんぷんモードで怒って見せると彼女はようやく指から離れた。
そのすきにカットバンを探してすばやく指に巻く。
勿論、本気で怒ったりしない。
だって、これは彼女の性なんだもの。
「ごめんなさい。ついついやっちゃうんだよね」
雪乃は「あははっ」と笑ってぺろりと舌を出した。
「人間の血ってすぐ錆びるから、鮮血はごちそうなの」
彼女はそう言って笑う。
「今度の実験は人間の血を錆びさせないようする実験なのよ」
「へぇ、そうなんだ」
「錆止めが完成したら早紀ちゃん。実験台になってくれるわよね」
「……雪乃。そういう発想から離れないと今すぐ友達やめるわよ」
早紀はすかさず予防線をはった。
実験台になるなんてとんでもない。
雪乃は「あははっ」と笑ってぺろりと舌を出した。
「やだなー。冗談に決まってるじゃないの」
「そう願いたいわね」
小悪魔で魅惑的な笑顔。
その笑顔に魅了されてやっぱり友達をやめる事はないだろう。
「やれやれ」と思いながらも早紀はひそかにため息をついた。