~狩人殺し 捜索~
何とか奇跡的に助かった俺は回復を試みる。
このゲームで回復するにはいくつかの方法がある。
ゲームの定番である薬による回復、現実同様の医学的処置による回復、レアドロップ等で手に入るマジックアイテムによる回復などがある。
「ポーション買っておけば良かった・・・」
完全なる準備不足。ただの間抜けである。
残るは処置をすることだが俺に医学の知識などない。しかも処置をしようにも全身骨折なので動くと微ダメージが入る。HPが少ないこの状況では少しのダメージも怖い。
「あ、詰んだわ。」
完全に詰みである。もうどうしょうもない。お父さん、お母さん今までありがとう。ここで死んでしまう弱い息子をお許しください。来世ではきっといい息子になることを願います・・・
と、半ば諦めかけていると、
「おや、調子はどうでござるか?」
野生のデブが現れた!
「あ、どうも。今全身骨折中です。」
そんな状況ではないが、ちょっととぼけて答える。
「これを飲むでござる。にしてもポーション位は常備しておかないといけないでござるよ。」
そう言いつつデブは青紫色の見た目が悪いポーションをくれる。え、これ毒じゃないよね?前にレモンに貰った薬っぽいやつとは全く違うように思えるんだが。
恐る恐るポーションを飲む。
すぐに効果が現れた。状態が健康になったのだ。
「あ、ありがとう。」
「気にしなくていいでござるよ。困った時はお互い様でござる。」
なんだ、このデブ良い奴だったのか。見た目で判断するのはダメだったな。
「あとこれも飲んでおくといいでござるよ。」
そう言って次は淡い緑色のポーションをくれる。
ありがたく頂いて飲む。すると今度はHPが急激に回復する。
「じゃあ我は行くでござるよ。頑張るでござれよ。」
なんか変なござる口調になりながらデブは立ち去ろうとする。
「ありがとう。」
「気にしなくていいでござるよ。」
デブは手を振りながら去っていった。
(さて、HPも回復できたことだしあの狸を探して倒さなきゃならないな。リベンジだ。)
回復した途端強気になる俺。あるよねこういう時。
しかしどこを探せばいいのかがさっぱり分からない。
「おーい!どこだー!」
とりあえず大声で叫んでみる。これでこっちに来ないだろうか。
ガサガサ
背後で草の音がする。来たか!?
ガサッ
出てきたのはクマのモンスターだった。なぜモンスターだと分かったかといえばその見た目のせいだ。
クマの頭には大きな角が1本生えており、目が赤く光っている。体毛は黒っぽい色で、手からは30センチ程もある爪が伸びている。そして何よりクマの体長が3メートル以上もあれば普通でないことはすぐに分かる。
「ええええ・・・」
こいつがボスなんじゃないかと思うくらいこのクマからは強そうな雰囲気が出ている。
「グォォォォォ!!」
そして明らかに戦闘態勢のクマ。
「あーもう!やってやるよ!」
逃げてもいいのだが、なぜだか分からない強気な心が俺をクマに立ち向かわせる。これがアドレナリンの力なのか。
「グルゥゥ!ガォォ!」
クマは大きな爪を振り回してくる。
「うおっ!うわっ!」
俺は何とかギリギリでかわし続ける。
「くそっ!てりゃぁぁぁぁ!」
ぶん!ぶん!
俺はカウンターを狙ってバットを振るが、クマの爪の攻撃の方がリーチが長く、バットはクマに届かず空を切る。
(やばい、攻撃出来ないかもしれない!)
バットの攻撃が届かなければクマを倒すことなどできない。つまりは勝てない。
(どうする?ダメージ覚悟で突っ込んで攻撃するか?いや、あいつの攻撃は強そうだし一撃だけでもHPが危うくなるかもしれない。)
「くそっ!じゃあな!クマ野郎!」
俺はそう捨て台詞を吐いて背を向ける。そして走る。戦略的撤退である。
(今やるべきなのはクマを倒すことじゃない、あの狸を倒すことだ!ここで無駄にHPを減らすのは得策じゃない。)
狸を探して、倒す!
そう俺は心に決めて森の中を走る。
読んで下さり本当にありがとうございました。
とても嬉しいです!ありがとうございます!
これからも駄作を作り続けると思いますが、読んでもいいやという方はよろしくお願いします!