田舎の思い出
初投稿なのでお手柔らかにお願いします。
結構考えて書きました。
その女の子は泣いていた。僕が開いた扉の方を見て。
その女の子は泣いていた。驚いたような表情をして。
その女の子は泣いていた。でもどこか少し嬉しそうに。
その女の子は泣いていた。まるで
自分の探し物が見つかったかのように。
突き刺さるような暑い日差し、焦げたにおいのする道路、陽炎が揺らめく景色遠くに見ながら、荷物の見張りとして軽トラックの荷台にゆられる。青い空と白い雲はどこでも同じはずなのに、なぜかここではもっと高く、広く感じる。自分の記憶と照らし合わせながら景色を見ては、懐かしさに少し心が躍る。
「この町も全然かわらないな。」
「そういう夏樹君はすっごいかわったけどなぁ。」
軽トラックを運転するおじさんに、そう返されて少し返答につまる。なにせおじさんに会ったのは五年近くも前の事だ。転校してから一度もこの町に来ていなかったのに加え、都会の空気に慣れてしまった今では、この田舎の人間の距離感に少し尻込みしてしまう。昔は自分もこの町に住んでいたのだからそのうち慣れるだろう。そんなことを思っているとおじさんの家に到着した。周りの家と比べると少し新しい感じのたたずまいは僕の昔の記憶を呼び覚ます。懐かしい玄関、見覚えのあるリビング、トイレの位置も完璧に覚えていた。
その瞬間、僕はある違和感を感じた。自分の記憶と事実の間にある薄い壁があるような。少し押せば壊れてしまいそうな、しかし僕の意識がそれを拒んでいるような壁が。
「荷物はこれで全部かな?」
おじさんのその一言で僕は我に帰った。後ろを見ると荷台の荷物を降ろし終えたおじさんがシャツで汗を拭いていた。
「すみません!!自分の荷物なのに。」
「気にしなくてもいいよ、それよりさっきそこにずっと立ってたけどどうかしたかい?」
「いえ、少しめまいがしただけです。」
「それだったら、荷物は後で私が運んでおくから、夏樹君は少し休むといい。そのためにうちに来たんだから。」
そう。今回僕がこの町に戻ってきたのは療養のためだ。都会での生活が合わなかった僕は、都会の人間との関わり方が分からず、精神的にまいっていたのだ。そのため昔住んでいたこの町で少しでもリフレッシュしてもらおうという両親の計らいだった。
「それじゃあ、お言葉に甘えて。」
「夏樹君の部屋は二階の一番奥の部屋だから。もし布団が必要だったら勝手に敷いていいから。」
ありがとうございます、と伝え階段を上がろうとしたとき、おじさんが思い出したかのように僕に言った。
「あ、あと一階の居間の横のふすまは開けないでおいてくれるかい。」
そんなに急いで言うようなことだろうかと思ったが、
「夏樹君が来ると分かってから急いで掃除したからね。あの部屋に色々詰めちゃって。」
なるほど、合点がいった。確かにそんなものはわざわざ人に見せるようなものではないだろう。納得した僕は階段を上がろうとする。すると今度は、
「しまった!!山下のおじいちゃんに届けないといけないものがあったんだ!!ごめん夏樹君、しばらく留守番を頼んでいいかい?」
下から突然大声が響くものだから少し驚いてしまう。
「も、もちろん大丈夫ですよ。」
そう答えながら僕は思った。おじさんって結構おっちょこちょいだな、と。
その後僕は布団を敷き、部屋で休んでいるといつの間にか寝てしまっていた。
懐かしい、昔の夢を見ながら。
いかがでしたでしょうか。
少しでも続きが気になると思ってくださったらありがたいです。
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