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星72 フランシャリアの国



 世界では魔物の被害に歯止めがかかった様だった。

 精霊と契約して癒しの力を備えた少女と、剣の天才である青年が良く活躍しているからだと。


 彼等は、一説によると特別な力を用いて不老不死になっているとかそんな馬鹿馬鹿しい話も聞こえてくるくらいに。


 そんな中、森の周囲に……村や町しかなかった場所に国が出来た。


 フランシャリアというその国は、よく富んでいるらしいが、秘密裏に裏で囚人を集めて呪術の研究をしているのだとかそんな話も聞こえてくる。


 一方焼けてしまった森の中で暮らしていけなくなったステラ達は、森の中で手がかりを掴む事を諦めて、外の世界へ出る事にした。






 人通りの多い道。

 通りかかったそこには、熱狂が渦巻いていた。


 久々に見る大勢の人だが、彼らのその雰囲気は平常時のそれではなかった。


ステラ「何かあるのかしら」


 興味が湧いて覗き込もうとするのだが、呆れた様子のツヴァイに止められる。


ツヴァイ「おい、よせ。厄介事に首を突っ込むんじゃねぇ」

ステラ「心外です。それじゃあまるで私がいつでも厄介事に巻き込まれてるみたいじゃないですか」

ツヴァイ「違わねえだろ」


 確かに運は悪い方だとは思うが、そこまでだろうか。

 世の中にはステラよりももっと大変な人がいると思う。


 ともかく、この時代の人間ではない自分達が衆目の目にさらされる事になってはいけないと言う事で、人の輪から離れて行動する事になったのだが……。


町人「見て、あれが噂の朝の騎士よ」

町人「素敵ね。こんな一般市民の前に姿を現してくださるなんて、何て素敵な人なんでしょう」

町人「隣にいるのは巫女様かしら。可愛らしい方ね。お似合いだわ」


 どうやら人の輪の中心にいるのは、今話題になっている人物、癒しの力と魔物を滅する力を持った精霊使いの様だった。


 暮れた夜の世界に朝をもたらす者。

 純粋な真白の心で人の傷跡を癒す者。


 彼等はそのように人々から呼ばれているのだ。


ツヴァイ「あれが朝の名を持つ者か……。言われて見りゃあユースに雰囲気が似てなくもねぇな」

ステラ「先生?」

ツヴァイ「別に何でもねぇよ」


 一瞬立ち止まるも歩き出そうとするのだが、数歩もしない所で足を止める事になる。


?「バウッ」

ステラ「あら?」


 眼の前に現れたのは腰の高さほどもある体長の大きな獣。

 白い体のその獣は、人懐こそうな様子でこちらへと向かって来たのだた。


?「ワオンッ」


 大きな体格の割につぶらな瞳でこちらを見つめてくるその獣は、獰猛な生物の形をとっている割には愛嬌が感じられる。


 獣はこちらに寄って来て、手をなめた。


ツヴァイ「何だ? なつかれてるみたいだな」

ステラ「人懐こいわね。誰かが飼っている狼? 犬……でいいのかしら」


 見分けが尽きそうにないが、こんな人の多い中で体格の大きな動物が歩いていてよくパニックにならないものだと思う。



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