星04 進級試験の内容
ステラは今、三学年在籍しなければいけない騎士学校の第一学年にいる。
だがそこは普通の学校と違って、騎士の学校で剣を持つ人間を育てる場所である事に関係してか、そう簡単には進級させてくれない場所だった。
一年、二年は進級テストをクリアしなければ、上の学年になれないし、三年生も実力テストに合格しなければ卒業できないのだ。
そういうわけで、ステラはまさに今話題に出したそのテスト、一年の進級テストに挑んでいる最中だった。
人のいない寂れた遺跡の中を進んで行く。
緑の蔓が伝い、苔の生えた建物の中を。
ここは、試験会場。
この遺跡の最奥に辿り着く事が、テストの合否に関わる事柄だった。
歩く人影は一つではなく、いくつか。
ステラ「皆、大丈夫? 全員いるわよね」
ステラに友人のニオ、そしてツェルトと、そのツェルトの友人のライドで四人で行動していた。
確認の声を賭ければ、背後から三つの返答が返ってくる。
なぜ、背後からなのかはステラが前を歩いていて、リーダーとして指揮しているからだ。
ニオ「はいはい、いるよー」
ツェルト「俺も、俺も」
ライド「あー、俺もいるわな」
ステラ「……私は真面目に聞いているんだけど?」
予想以上に呑気な声が返って来たので、ステラが不機嫌そうな声音で文句を言うと、背後から三つ分の焦った声。ただし、彼等彼女らなりに……という言葉が付くが。
ニオ「ニオ・シュタイナー、います!」
ツェルト「ツェルト・クレイダー、了解!」
ライド「あー、ライド・ウルセイツ存命しております」
ステラ「……はぁ、もういいわ。ちゃんと付いてきてるなら」
ため息を放って、ステラは再び前歩に集中。
ちゃんとついてきている事は分かっているので、これ以上大事な試験で集中を散らすのは良くないと判断したのだ。
ニオ「もうもう、ステラちゃんったら真面目なんだからー。こんな試験、ステラちゃんがいる時点で合格したも同然なんだし。そんな緊張する事ないと思うけどなあ」
ツェルト「そうそう、なんたってあの熊殺しの、俺のステラなんだから。まさか不合格になるなんてないだろ」
しかし、こちらの緊張はなんのその。後ろにいる友人達はそんな気の抜けた様子でいるようだ。
というか熊殺しのというのは異名なのだろうか、そんな物騒なあだ名が付いているなんてステラは知らなかったのだが、後で聞いておかなければ。そして、そんな事を言った人には釘を刺しておこう。もし、先生と再会した時にステラがそんな名前で呼ばれている事を知ったら、どんな風に思われるか。きっと笑われる。それは物凄く嫌だった。
まあ、そんな激しく個人的な事情は置いといて、やはり油断と言うのは良くない。
ステラ「もう、二人ともしっかりして。現実は考えてるほど甘くは無いのよ。先生も付いてないんだし、学校の外で駆動してるんだから、気を引き締めてなきゃ駄目じゃない」
そう、ステラは注意を飛ばしていく。
ライド「そうそう、ここら辺、実は最近狂暴な魔獣が暴れ回ってるって噂だし、気を付けた方がいいぜ? 俺はニオちゃんやツェルトみたいに能天気にしてて、後ろから頭蓋カチ割られたくないの」
ニオ「ちょ、怖い事言わないでよライド君」
ツェルト「頭蓋カチ割られるのは、結構痛そうだな」
幸いにも、ニオ達ほど気が抜けてないライドが同意してくれたので、少しだけ場の空気を引き締め直す事が出来た。
くすんだ赤の髪に赤の瞳をしている彼は、お調子者でもあるが、間違いなくこのメンバーの中では一番現実的な考え方をしている。
くやしいがリーダー的な立ち位置になりがちなステラよりも、だ。