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星13 過去の回想



 数年前 王都


ツヴァイ「どうした、ステラード」


 それは、車いすに乗せられて先生と町の中を巡っていた時の事だった。


 家の中にばかりいるのも良くないと、そう言って先生が外出できるようにしてくれたのだ。


 町の中は賑やかで、うるさくて、人がたくさんいて。


 王宮の中と屋敷の中しか過ごした事の無かったステラードにとっては、とても新鮮な景色だった。


ステラ「先生。今日はお祭りの日か何かなんですか? だってこんなにいっぱい人がいるわ。それにお店だって出てる。私知ってるのよ。お祭りの日は、普段閑散としてる町がずっとうるさくて、どこから集まったのかと思えるような大集合になるんだって。それで町中にお店がいっぱいになって、通せんぼだから。全然前に進めないの」

ツヴァイ「どういう覚え方してんのか分かんねぇけど、それ教えた奴誰だよ。まあ、ある意味間違っちゃいないが、今日は別に特別な日でも、何でもないぞ」

ステラ「え、本当ですか」

ツヴァイ「ああ、当たり前だろ」


 ツヴァイの物言いに驚愕しながら、ステラは先程やったのと同じように周囲を見回していく。

 たくさんの人が数えきれないほどいる。

 

 そんな景色が普通とは思えなかった。


ステラ「信じられません。こんなにこの町に人がいるんだったら、世界中には一体どれくらいの人がいるんだろう」

ツヴァイ「数えきれねぇくらいだよ。俺達の想像なんて追いつかねぇくらいだ」

ステラ「世界って、すっごく広いんですね」

ツヴァイ「ああ、果てが見えねぇくらいにな」


 ずっと今まで自分が生きて来た身の回りが、世界の全てだったステラにとってその事は衝撃的だった。


 世界は広い。

 理屈では分かっていても、本当の意味では分かっていなかったのだ。


 今まで見てきたものが、いかに狭い世界だったのかそれを思い知らされた気がした。


店主「そこのお兄さんと、お嬢さん! 見ていきなよ! 綺麗な細工物今なら、一つオマケしちゃうよ!!」


 そんな風に考え込んでいると、近くの店から声がかかる。


 ステラと同じ年くらいの女の子だった。


 長い前髪の間から、愛嬌のある顔立ちが覗く。


店主「良いものあるよー。買ってきなよ!」


 あの少女はそうやって声を張り上げて、通りかかる人を呼び込んでいたらしい。


 周囲を見るが大人の姿はない。

 お手伝いか何かなんだろうか。


 荷馬車を改造したような、そのお店は雨天の事も考えられているのか、上部に立派な屋根がついていて、布切れを飾り付けられていた。


ステラ「え、一つオマケって事は無料って事ですよね? そんな事したら、売っただけ損になっちゃうんじゃ……」

ツヴァイ「お前、一人で外出たらカモられるぞ。こういうのは、大体そうやっても良いように一個の単価が高めになってるか、売れ残ってて在庫管理に困ってるようなハズレを押し付けられるようになってんだよ」

ステラ「なるほど、それが上手な商売のコツなんですね」

店主「ちょいちょーい、それ店主の前でする会話じゃないでしょー。冷やかしならどっか行ってくんない?」


 店の前で堂々と商売方法を推測してしまった事に気が付いた。

 確かにその子の言う通り、商売の邪魔以外の何物でもない。




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