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星10 帰って来た理由



 ステラはツヴァイがなぜ学校に来たのか尋ねる。


ステラ「それで、どうして先生がこんな所へ。嬉しくないわけじゃないですけど」


 保険医だと言うのならまだ分かる。

 しかし、ツヴァイが付くのはなぜがこの学校の実技の教師、剣の先生なのだ。


 元騎士だと言う事でおかしくはないだろうが、関わった時間の大体を医者の姿で見て来たステラには不思議でたまらなかった。


ツヴァイ「それは……」


 ツヴァイは、視線をそらして言いよどむ。

 何か言えない事情があるのだろうか。


 そんな風に内心疑問に首を傾げていると、こちらに頬に手を添えられた。


 つままれる。

 引き延ばされてた。

 痛い。


ステラ「何するんですか」

ツヴァイ「ああ、悪い悪い。生き物だな」

ステラ「生きてるんだから当然です」


 何ツェルトみたいな事してるんだろうか、この人。

 彼も時々そんな事いってステラに触りに来る。


ツヴァイ「ステラード、お前は死んでたりしないよな」

ステラ「当たり前じゃないですか。もしかして、酔ってるんですか?」


 ずっと目の前で話していたと言うのに、ステラが幽霊だとでも思っているんだろうか、この人は。

 ステラは自慢ではないが幽霊が嫌いだ。

 自分がそんなだったらきっとこんな冷静ではない、耐えられない。


 それ以前に色々思ったり喋ったりできないだろう。


ツヴァイ「ああ、そうだ。生きてる。ここにいる奴らは全員。今、俺が見ているのは夢なんかじゃないんだよな、俺に都合の良い幻でもなんでもない現実だ」

ステラ「先生……?」


 一体何があったのだだろう

 自分の知らない所で。


 見つめるツヴァイの瞳は悲しみで溢れていた。


ツヴァイ「皆、皆死んじまったからな。俺は守れなかった」


 誰か親しい人を失くしたのだ。大切な人を。

 それで、ツヴァイは傷ついている。


ツヴァイ「俺は、守れなかった。くそ……っ。医者でいる事を止めてまで剣を取ったってのに、何の為の剣だ。誰も守れやしねぇじゃねぇか」

ステラ「せん、せい……」


 ステラードはそんな人間にかけてやる言葉を知らない。どうすればいいのかも。


 だが……。


ステラ「元気出してください。今は出せなくても良いけど、そのうち元気になるまで私は傍にいますから」


 いなくなったり、そう簡単に死んだりはしない。


 己の手をこすって温めた後、その人の耳を両手で挟み込んでみた。


ツヴァイ「……ステラード?」


 こちらの行動の意図が読めなかったらしいツヴァイが目を丸くして驚く。


ツヴァイ「何やってる」


 ちょっとだけ、当てていた手をずらしてこちらの声が聞こえるようにする。


ステラ「あったかいと、心もちょっとだけ温かくなるんです。先生がまだ私の先生だった時、寒がってた私に教えてくれたじゃないですか」

ツヴァイ「いや、それは子供に……」


 ツェルトはこうすると喜んでくれたのだけど。


ステラ「じゃあ、大人は違うんですか?」

ツヴァイ「子供扱いされてるみたいで恰好悪いだろ。当たり前だ、第一こんなこっ恥ずかしい恰好、いつまでもしてられるか」


 どうやらステラードの行動は効果が無かったようだ。


ステラ「ごめんなさい。余計な事でしたか」

ツヴァイ「でも、いや、助かった」


 謝れば返って来たのは苦笑だ。


ツヴァイ「お前は全然変わらないな。昔のまんんまだ」

ステラ「そんな事ありませんよ、私結構剣の腕とか強くなりましたし。ほんとですから」

ツヴァイ「いーや、まだまだ子供だろ。そうやってふくれるところとか」


 それはツヴァイが意地悪な事を言うからだ。


 けれど、ツヴァイは子供の頃の様に、ベッドの上で初対面の人間に不安がっていた時のステラードへ向けて、浮かべた様に笑みを作って答えた。


ツヴァイ「だけど、まあありがとうな」


 そんな風に。




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