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「毎日投稿」と書いて、「儚い夢」と呼ぶ。
「ショックを…。」
今日の高校の様子を思い出す。
皆何かしら傷を負っていたし、精神をやられていた。
記憶を失ったり、呆然自失状態になっていてもおかしくはなさそうだ。
僕以外皆…。
………みんな?
「戸田と小春さんもですか?。」
あの二人は、僕と一緒に高校から出たから、他の生徒ほどの精神状態ではないはずだ。
「…ああ、一緒に高校を出た友人達ですか。」
一瞬考えた後友田さんは言った。
小春さんが友人という響きに激しい違和感があるが、あえて触れずただ頷いた。
「…彼らは、記憶を失ってしまっていますよ。」
少し目をそらしながら答えた友田さんに、話していいラインを見極めているんだろうな、と気にせず納得した。
小春さんが精神をやられるだなんて世界がひっくり返ってもありえないだろう。
ということは、精神状態だけが記憶を失う条件ではないのだろう。
…まあ、終わったんだし、もういいか。
考えても分からないことだ。思考を放棄すると、途端に空腹を感じはじめた。
そういえば、朝食以降何も口にしていない。
気づいたら気になってしょうがない。
今日の晩御飯はなんだろうか。
今日は動いたからがっつりから揚げとかが食べたいなぁ。
から揚げのジューシーな肉汁を想像していたら、お腹が盛大に鳴った。
「…ここらへんで帰りますね。」
苦笑しながら友田さんは、軽く頭を下げ帰っていった。
友田さんはもうご飯たべたのかなぁ。
「ご飯にしましょうか。」
くすくすと笑った母に言われた。
姉と父はそれを聞いて「おなかすいたー」とぼやいた。
「あれ、みんな晩飯まだだったの?。」
そんなに心配してくれていたのか。
申し訳なく思いながら二人を見ると、照れくさそうに首をかいている。
「ごめ…」
「食べたんだけど、安心したらお腹へってなぁ。」「私もー。」
姉と父が少し頬を染めた。
姉はいいとして、ピンクの頬の大男の姿は、正直に言って目が腐りそうだ。
ちょっと感動しちゃったじゃないか。やっぱり大胸筋しぼめ。もしくは取れろ。
「ほら、早く座りなさい。」
いつの間にかリビングに行っていた母がせっつく声が聞こえる。
父と姉がご飯を大盛り持って、目をキラキラさせながら食べている。
母の作ったいつも通りの味噌汁を飲みながら、帰ってきたんだな、としみじみ思った。
初めて心が休まったような気がする。
こんな普通の日々がずっと続けばいいのに、そんなことを思いながら眠りについた。
けれど、心のどこかでもうそんな日々は終わったことにも気が付いていた。
黒い、黒い繭。
彼女のあの姿は、誰の意見も聞かず、ただ自分のみを信じ、他人のことを考えない、そんな彼女の性格を表したもののように見えた。
神様が願いを叶えてくれる、と彼女は言っていたが、果たしてあの時彼女は幸せだったのだろうか。
から揚げおいしい。