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桜散ってしまって、無性にさみしい。
祭りの屋台とかで売ってる、あのちゃちいかき氷が食べたい。
しゃりしゃりしゃり
コンコン
「小春さん?大丈夫ですか?」
返事がない。
これは本格的にやばい状況なのかもしれない。
我が家のお手洗いの鍵は、やろうと思えば爪で開けられるのだ。
最悪、彼女には悪いが開けて入ることになるだろう。
「小春さん、体調悪いんですか?」
「小春さん、入ってもいいですか?」
大きめの声で何度も声をかけるが、返事がない。
最近は気温がひどく高いから、熱中症や、脱水症状の可能性もある。
もしそうだとしたら、スポドリとアイスノンを持ってきて、首や脇を冷やし、水分補給をさせないと。
症状がひどければ救急車も呼ぶ必要がでてくるかもしれない。
ぐるぐると回る頭で対処法に関する情報を手繰りよせる。
「小春さん、小春さん。入りますよ。」
しばらく声をかけても返事が無かったため、お手洗いの鍵に爪をかけた。
まかせろ、小学生のころに散々開けたり締めたりして遊んでた腕は伊達じゃない。
かちり、と音がした。
急いでドアを開けようとするが空かない。
なぜ、もしかして角度が甘かったのだろうか。
再度鍵に爪をかけるが、混乱と焦りでうまくいかない。
「小春さん!すぐ開けるので、もうちょっと待っててください!。」
乱れた心を宥めるように、大声が出た。その後ろから、
「お手洗いのドアを締めてどうするつもりなのかしら?」
小春さんの声が聞こえた。
一瞬状況が理解できなかったが、一拍置いて、彼女がすでにお手洗いから出ていて、僕は誰もいないお手洗いに向かって必死に声をかけていたということに気が付いた。
「小春さん?!。出てたんなら言ってくださいよ!!
というか、返事してください!無駄に心配しちゃったじゃないですか!。」
安心を通り越して怒りが湧いてきた。
「けどまぁ、無事でよかったですよ。はぁ…、無駄に疲れた…。」
「誰もお手洗いに行くなんて言ってないわよ。」
愉快そうに話すので、何かあったのだろうかと視線を彼女に移した僕の視界に、あるものが映った。
「ななななななんでそれを…。」
それは雑誌だ。本来なら、僕の部屋の隅、本棚にある「芥川龍之介全集」のカバーの中に入れられている。
表紙には全裸の女の人が大きく印刷されており、こちらに笑いかけている。
いわゆる、エロ本だ。
そう認識するが否や、小春さんの手から本を奪うべく素早く手を伸ばした。
しかし、それを予測していた小春さんがひょいと避ける。
「このページが好きなのかしら?ここだけ随分くたびれてるわね。」
僕の手を避けながら雑誌を広げる。
「わーー!やめろ馬鹿!!!!。変態!!!!!!」
「変態はあなたね。大きい胸がすきなのかしら?それともこのポーズ?。」
にやにやと笑う美しい顔が恨めしい。
「あーーーっ!もう!!馬鹿!やめろください!!!!。」
黒田くんは巨乳好き。
ノリが男子高校生なのは、きっと書いてる人に乙女心というものが無いからです。現実は非情。




