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サウナスーツよ、さらば。

 げんなりしている僕を楽しそうに見つめていたが、満足したのか、真面目な顔で話し始めた。


「あの後、あの事件について調べてみたのよ。」


彼女は、スカートのポケットから、薄紫色の上品な手帳型カバーに包まれたスマホを取り出した。

細い白魚のような指先がスマホを操作するのを何となく見つめながら、彼女がこんな風に物事を気にするのは珍しいな、と思った。

元々、自分の興味の対象に対してはアクティブな彼女だが、今回の事件はもう終わっている。

その事件を再び掘り起こして、こうして僕を巻き込みにかかるということは、それだけ彼女好みだったんだろう。


ということは、僕は全く楽しくないということだ。

なんとかして逃げ出したい。


脳を絞りだしてなんとか策を思いつかないと、と必死で頭を抱えていると、目当てのサイトを見つけたらしい彼女がスマホの画面を僕に向けた。


「これ見てみなさい。」


彼女の目はらんらんとしており、上機嫌なのがひしひしと伝わる。

それに反比例して僕の中の生気が死んでいく気配がする。関わりたくないという思いが胸いっぱいに広がる。


しぶしぶ覗いたスマホには、黒背景に、赤文字の掲示板サイトが映っていた。

いかにも中学生が一時の気の迷いで作った、後々の黒歴史といった風体のサイトだ。

なんでこんなサイトを…。

あまりにも彼女に似合わない雰囲気に思わず見上げると、「いいから読みなさい。」とせっつかれてしまった。



 自分の古傷がうずくのを抑えながら、掲示板の内容を読むと、どうやら宗教か何かについて話しているようだ。


『神に祈れば願いが叶えられる』『人々の強い願いに救済が下る』『深く信仰せよ、さすれば救われん』『神は恵まれぬ人々に手を差し伸べる』


どこにでもあるような、ごくありふれた内容だ。

どうしてこれを見せるのだろうか。


不思議そうな顔をする僕を見た彼女が、スマホを上にスクロールする。

どうやらつい昨日投稿されたコメントのようだ。


タイトルには『とうとう神が降り立った!』とある。どうやら、神がいかに素晴らしいのかをとうとうと語っているようだが、僕の目線は張り付けられた二枚の写真にくぎ付けになった。

昨日テレビで放送されていた黒いドーム状の何かが映っている。


そして、もう一つには、黒い繭となった少女、原 香澄が映っている。


ぼさついた癖のある黒髪を、耳程度の高さで二つ括りにしている。

少し見える襟から察するに、服装は制服だろう。

顔は普通なのだが、その目はどす黒く濁り、この世のすべてを憎むように鋭くにらんでいて、何か異様なものを感じる。


これは…、


「彼女についての報道はされていないし、そもそも規制されていて、昨日報道されていた以上のことは、一切出ていないわ。

 それなのに、この投稿では彼女のことを、写真付きで紹介している。”敬虔な信徒”としてね。」


一呼吸おいて、僕の目をまっすぐ見つめて言う。


「これは、あの子と関係がありそうよね。」


まず間違いなくそうだろう。

このコメントが投稿されたのは昨日の午後3時。警察が事情を知るより先に投稿されているということだ。

彼女が言っていた神様というのは、これのことなのだろう。


この宗教が今回の事件に関わっていることは分かった。

だが、何故彼女は警察ではなく僕に言いに来たのだろうか。

嫌な予感がする。みぞおち辺りが凍えるような緊張を感じる。

恐る恐る彼女を見上げると、イイ笑顔が出迎えてくれた。


「これに入るわよ。」

しっとり系のクッキー食べたい。

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