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サウナスーツ凄い。
汗が滝のように出る。どぱー
翌日、高校から休校との連絡がきた。
昨日の出来事で、ほとんどの生徒の状態が良くないためだろう。
休校になるほどなのか…。
友人や、知り合いの顔が浮かび、心配になった。
「大丈夫かな…。」
そうは思うが、どうすれば心の傷をいやせるかなんて知らない。
下手なことをしないように会わない方がいいだろう。
すでに着てしまっていた制服を脱いで、緩い黒ズボンに、ぶかっとした白パーカーを羽織る。
よし、せっかくの休みだ。二度寝しよう。
ピンポーン
いそいそと布団にもぐりこむ僕を叱責するようにチャイムが鳴った。
くそ、宅配か?。早く受け取ってさっさと寝よう。
「あがるわよ。」
扉を開けると黒髪美少女がいた。
ノースリーブの白シャツを、足首までのロングスカートの中に入れ、しっかりした生地の黒リボンで結んでいる。
日光を受けて白く輝く二の腕は、透き通るような透明感で、彼女を儚く見せた。
白いサンダルは細身で、ストラップに包まれた足首の細さが際立っている。
「いや、ちょ、まって、小春さん?!。」
なんとしても彼女を家に上がらせるものか。
必死で二の腕を掴み、引き留めた。
「何よ、離しなさい。」
心底不思議そうに言う。
本当にこの人は…、自由人とはこういう人の事を指すのだろうな…。
遠い目をして、現実逃避をしかけたが、今の自室の状態を思い出して、我にかえった。
「あのですね、今日小春さんが家に来る予定なんて無かったものですからね?。
少し部屋が散らかっててですね。だから、家に上がるのやめてください!!。
待って!!待てよ!!すみません待ってください!!!!!。」
必死で引き留める僕を無視して、ずんずんと彼女は家に乗り込んできた。
僕の秘儀「DO・GE・ZA」で、せめてリビングで勘弁してもらった。
彼女の身体には血の代わりに毒でも入っているんじゃないか。
「お茶も出てこないの?。常識知らずね。」
にやにやしながら言われた。
「いきなり来たんですから、準備なんてしてませんよ。」
常識知らずはお前のほうだ。
ため息が漏れる。
納得いかないが、逆らうほうが面倒なのは、小学校からの付き合いで嫌というほど知っている。
「ダージリンがいいわ。」
なんか注文付けている声が聞こえるが無視だ。つーかそんな洒落たもの僕の家にはねぇ。プロテイン飲ますぞ。
あいつにはテキトーに冷蔵庫開けたらあった麦茶で十分だ。
むしろ水道水にしてやろうか。
真剣に悩んだが、彼女が僕の部屋に行く危険性を考えて麦茶にした。
机の上に置くと、彼女は話しはじめた。
飲まねぇのかよ。
「昨日のこと、覚えてる?。」
「覚えてますよ。小春さんは覚えてないんでしたっけ?。」
それで来たのか。気になる気持ちは分かるが、来るなら来ると言って欲しかった。
非常に心臓に悪い。
しかし、彼女は何とはなしに言った僕の言葉を聞いて、口端を楽しそうにゆがめた。
「誰が言ったのよ、そんなこと。全部覚えてるわよ。」
心底馬鹿にしてるのが、その目からにじみ出ている。素直に腹が立つ。
「はぁ?。昨日警察の人に聞いたんだけど、お前覚えてんの?。」
「口調乱れてるわよ。…簡単な話よ。眠たかったから覚えてないって言ったの。
だってわざわざ説明するとか面倒じゃない。」
当たり前と信じて疑わない、まっすぐな目をしている。
澄んだ目だ。こいつは本当に僕の胃を荒らすのがうまい。
「はぁ…。そういう人ですよね。知ってましたよ…。
はい、僕も覚えてますよ。それがどうかしたんですか?。」
胃がきりきりと痛む。
彼女は胸をそらしながら、腕を組んだ。
残念ながら、協調される胸はない。まるで今の僕の胃のように悲壮な光景だ。
「そういうことしてるから、あなたはモテないのよ。」
楽しそうに笑われた。
「気にしないんですね。あと余計なお世話です。」
せめてもの意表返しに絶壁を弄ったが、まったく意に介していない。
ものすごい敗北感が胸に満ちた。
「なんでゴミの価値観で私を測ることが出来ると思ったのよ。
私以外の人のための価値観で、私がどうであろうと、気にするわけないわ。」
「…。」
彼女のメンタルが強すぎる。
たとえば、ネズミに「あんた毛なさすぎー。すごいキモイ!。」
とか言われても気にしないし、何言ってんのこいつって感じですよね。
彼女の感覚はそんな感じ。




