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ゆっくり書いていきます。

よろしくお願いいたします。

 僕は昔から運が無い。

それは例えば、たまたま行ったファミレスの横の席でカップルが喧嘩しだして、彼女の投げた物が何故か僕に当たったり。同級生がたばこを吸っている現場をたまたま見かけた時に、ちょうど教師が通りがかって、僕も共犯と思われたりといった様に。

昔から僕は運がなく、また、巻き込まれやすい。

正直、うんざりする。今日も朝から、家の扉を開けてすぐでネコが喧嘩していて、何故か両ネコからひっかかれた。

「…はあ。」

深くため息をついた。ネコに引っかかれた頬がじんじんと痛む。

うなだれる僕に追い打ちをかけるかのように強い日差しが僕の黒い学ランを照らし、首を焼いた。

すっかり気分の落ち込んだ僕の視界の端に、艶やかな黒が映った。

「おはよう、黒田くん。」

にっこりと微笑む彼女の姿はなかなか様になっていた。きれいなストレートの髪がその華奢な肩を覆う。少し明るい紺色のブレザーが彼女のスレンダーな身体のラインを美しく出している。

 本来、こんな美しい女性に朝から声をかけられたら、舞い上がって喜ぶものだが、理由は後に語るが僕は素直に喜べない。複雑な気分になりながら返事をした。

「おはよう。小春さん。…どうしてここに。遠回りになるんじゃないんですか。」

彼女の家は僕の家の二棟ほど東にあり、学校に行くには彼女の家からまっすぐ北上するのが最短だ。

「なんだか今日、君の傍にいれば楽しいことが起こる気がしたのよ。もしかして、もう起こった後?。」

首を傾げたことで、髪がさらさらと音を立てて流れた。

それをぼおっと見る。悔しいけどきれいだ。

「朝からネコの喧嘩に巻き込まれて、頬をひっかかれましたよ。」

「そんなつまらない不幸じゃなくて、もっと大きなことよ。」

にやりと口の端を吊り上げる。

「何を期待してるんですか…。いくら僕でもそんな頻繁に大きな不幸には会いませんよ。」

本日二度目のため息が思わず出た。この人はまた…。

「一週間前に6股男に間違われて、女の子に刺されそうになっていたわね。

人違いに気づいたときの、あの女の子の顔ったら!。おかしくてたまらなかったわ!。

そのまた一週間前には、発作を起こして叫んで暴れ回っていた精神病患者の標的にされていたっけ。

あの男の人の言っていたこと支離滅裂で面白かったわね。

たしか、宇宙人が俺を狙っている。あそこの男が俺を殺した。世界が俺を殺そうとしている。

しまいにお前のせいだ!っていきなり黒田くんの襟をつかんだ時なんて、噴き出してしまうかと思ったわ。

その前は…。」

「もう分かったから。」

そういえば、そんなこともあった。

気にしないようにしているし、正直年に一度はあることだから、嫌だなという感想で終わってしまっていた。それにしても、

「なんでそんな把握してるんですか…。」

げんなりとしながら言った。

「女の勘よ。」

「ほんと、そういうことに対する鼻の良さは異常ですよね。」

恐らく、彼女の言う通り今日僕は大きな不幸に遭うのだろう。憂鬱だ。

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