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命危うし無理せよ赤子

 馬車を碌に見送ることもなく、祖父と呼ばれた人は振り返り、建物に向けて歩きだした。

 そして収まりが悪かったのか、抱いていた自分を持ち直‥‥


(痛い痛い痛いイタイ!!!首押さえて首!!

まだ首座ってないから!!!)


「アヴゥ!アーー!!」


「ぉ ぉお‥‥」



 よかったぁ~~すぐ気付いてくれたぁ‥‥


 だけどもマズイ‥‥多分この人、子育て全然知らんぞ‥‥



 建物に入ると、本棚は有るのに あっちこっちに本が平積みになっていた。‥流石 男ヤモメの一人暮らし、散らかってるなぁ‥‥‥


「んん…………」


 考える素振りで一つ唸ると、洗濯物を山にして 赤子の自分をその上に乗せた

 ワ、ワイルドだなぁ‥‥‥


 しばらくそのままになっていると、一抱えの木箱を持って来た。


 そして自分を持ち上げ、その中にポスン…………


 どうも藁を詰め込んだ上に 布を布いたような感じで‥‥

 なんとなくメロンになった気分‥‥‥


 あれ? カサカサうるさいのは玉に傷だけど 意外と寝心地悪くないような‥‥


 予想外の心地よさに包まれて、次第々々に 零れ落ちるように、

 眠りの海にいざなわれていった…………


 遠くに 朧気に、扉の音を聴きながら……………




…………目が覚めたのも、扉の音だった‥‥


 屋内が随分暗くなっていた。


 押し寄せる命の危機の数々に、大分疲れていたのかもしれない

 結構シッカリ寝ていたようで。

 そして‥‥


(お腹空いた‥‥)

 赤ん坊の体ってホント燃費がわるい‥‥


 すぐ声を出して呼ぼうかと思ったけれど、

 うるさい・面倒くさいと思われたら、死の影が近づいてくる気がして‥‥


 近くに来た時に声をかけることにした

 ご飯屋さんで お店の人を呼ぶ時みたいに。



 そして………





(………来ないなぁ‥‥)



 まぁまだ多少余裕はあるから、もう少し待ってみましょ




………それからしばらく………




(………まだ来ないんかい‥‥)



 参ったなぁ‥‥そろそろ大分キツくなって来た‥‥


 まあでも、これだけ待ったんだから、いい加減近くを通るでしょ




 と、思ったのが甘かった‥‥






 ダメだ全然来ない!!というか人の動く気配が全く無い!!!


 もう限界だ! なりふり構ってる場合じゃない!!


「アァーー! アアーーゥ~~!!」


 すると やっと足音が一つ近づき、遠目から覗き込まれると


「おぉ ちょっと待ってろ」

そう言って離れて行く。

 あー良かった~~ちゃんと通じた‥‥のかな?


 しばらくすると そちらから、湯の沸く音緩やかに響いてきた。そしてカチャカチャと音も聞こえる

 頼む~~早くしてくれ~~!


 そして足音の後に 木箱の上から覗きこまれると、

 背中に丸めた布を挟まれ少し体を起こされてから、木の匙で口元に何か液体を運んでくる。



‥‥粉っぽいような穀物臭‥‥


(アレっ この感じ、どっかで…………

確かに覚えが‥‥‥)


 記憶の辞書をひっくり返しながら探っていくと………




 行き着いた‥‥‥



(コレってパスタの茹で汁じゃん‥‥)


 正確には それより大分濃いめ。小麦粉製の重湯の様な?




‥‥でもあれっ? 意外と悪くない??



‥‥あ、そっか。

考えてみれば、前世じゃ麺類は好物だったなぁ‥‥粉違いだけども、蕎麦湯も好きだったし。


 なるほど道理で水飴より口に合う訳だ。


 まぁカロリーの少なさに一抹の不安があるけれど‥‥‥





(…………ふぅ、ご馳走様でした‥‥

 はぁ‥‥何とか今日は生き延びられた…………)


 食後の満足感に包まれると、睡魔が来るのが赤ん坊の性。


 食っちゃ寝食っちゃ寝で 牛になりそうな過ごしっぷりだけど、他にやること‥‥というか出来ることがない。


 早くおっきくなりたいもんで………




‥‥‥お休みなさい‥‥‥明日も生き延びられますように…………









………………何となく予想はしていたけど‥‥‥腹が減って目が覚めた‥‥‥


 スミマセ~ン!!もう一杯お願いしま~す!!

 夜分にホントスミマセ~ン!!!

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