ツイてない
…………夢の中で夢を見た…………
空を飛んで遠くを眺めたり、動物になって芝生を駆けたり、それはもう夢らしい夢を。
そして今、目を覚ましてみると………
再びぼやぼやした視界へ戻ってきた‥‥
………認めたくはないけれど、いい加減もう現実逃避も限界だ‥‥
夢の中で目が覚めて、二度も同じ状況の夢なんて流石に無理がある‥‥
………死んだんだろうなぁ~………
きっと日本での弓削 真矢としての人生は終わったんだろう………
状況から察すると、生まれ変わって産み落とされた赤ん坊って所だろうか。
道理で痛いし苦しい訳だ……
(まさか両親より先に死ぬとはなぁ……
叔父さんごめん……)
前世の事が色々と胸に浮かぶ。でもあまり物思いに耽ってもいられない。
赤子の命は綱渡りなのだ
さぁ早速次なる問題が迫ってきた
(‥‥トイレ行きたい‥‥)
‥まぁこれは然したる問題じゃない、幸い人の気配が近くにあるし。夜と同じ人だろうか。
とりあえず声を掛けてみようと‥
「アゥァ~……ヴ!」
しまった!! 言葉が話せないんだった!!
別に漏らしたって死にゃあしない! けれども前世で十八まで生きた記憶がある! これで漏らしたら……崩れる! 何かが!!!
ガタリ‥‥
良かった! こっち来た!! 頼む~ この状況に気付いてくれ~~!!!
「アゥ~~!!ヴゥ~~… ゥアァ!!!」
相変わらずの不機嫌そうな声が近づく、ただしピンと来てない雰囲気で
ダメだ!! この人察しが悪い!!!
いや!! これだけで察する方がムリがあるか!!!
このピンチを早く伝えねば… 必死に頭を回転させる。が、悲しいかな 前世の記憶が残っていても、自立神経は赤子寄りだった……
(あ…………)
プリリ……
耐えきれなかった‥‥
お通じも我慢出来ないんだから、前に泣いたのもしょうがないやな‥‥
精一杯の足掻き、目線を変えて、心の平穏を保ってみる
味わいたくもない悲しみをしみじみと味わっているうちに、
例の人が一際不機嫌な声を上げながら、多分お尻を拭きにやってきた。
足を持ち上げオムツをほどかれ、股を拭われた時に
(……?!!!!!!)
重大なあることに気付いた‥‥
無かったのだ、有るべき物が、男のシンボルが、十八年連れ添ってきたモノが股間に‥‥
剰りにも予想外なこと過ぎて………
泣いた‥‥
生まれ変わって二度目の涙だった‥‥