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魔導書実験

〔カリカリカリカリ【phlox】…………カリカリ【phlox】…………カリカリカリ……………筆者:ヘンリ・ラポラっと‥‥〕


 ヘンリ・ラポラは じいちゃんの名前。




 泣きたくなる様な自分のうっかりを 思う存分噛みしめた後、

 だだをこねて じいちゃんの仕事の続きを無理やり手伝っていた。

 今度は原本から一ページ、直写しさせてもらっている。


 A4サイズ位になったけれど やる事は大体同じ、違いは文章が長いって事ぐらいで。



 今度の魔導書は より広範囲に炎を生み出す、より物騒な代物だと じいちゃんは言っていた。確かに説明文もそんな感じ。

そして【phrox】という文字を、今も書いている。



 炎を意味する文字が幾つも並ぶ魔導書


‥‥‥これ‥何に使うんだろ‥‥‥



(…………あれ?)


 単調な筆記作業の続く中、ちょっと気になった事があった……………




 翌日………… は眠かったのでスルーして、


 その次の日 ごみ箱をあさり、

 書き損じを破って切れっ端を作り、少し実験してみる事にした。



 一昨日書き移した魔導書の原本には、一つ妙な点があった。

 それを確かめる為に‥‥



 先ずは切れっ端に、【phlox】と書いて魔力を通してみた…………


…………うん、ちゃんと火が出る。



 次に、あの魔導書の気になった点


【phrox】


【l】と【r】の入れ替わった、書き間違えと思われるスペルを 切れっ端に書いてみて…………



………ボッ‥‥


 あ やっぱり。

 しっかり火が出た‥‥


 と、いうことは‥‥




 …………更に後日の昼下がり…………



「いーちゃん いーちゃん、おっといて~~(じいちゃん じいちゃん、ちょっと見て~~)」


 机に向かっていたじいちゃんの背中に、声をかけた。


「お~? どうした?」


「こえ~~(これ~~)」


 振り向いてくれたじいちゃんに、先ずは【phlox】と書いた切れっ端に魔力を通して見せる。


………ボッ‥‥


「おぉ~~、上手い 上手い」


 じいちゃんは微笑み、温かい目でこちらを見てくれた。じゃあ次は‥‥


「こえ、いて~~(これ、見て~~)」


 次の切れっ端【phrox】の、rの部分に人差し指を当てて、


「ん?‥‥」


 じいちゃんは疑問を目に浮かべる


 自分はそのまま、他の指と一緒に指の腹を文字に添わせ、魔力を通す。



………ボッ‥‥


「ぉ‥‥お?」


 よかった~ これのおかしさに すんなり気付いてくれた~



 それでは最後は大トリの‥‥


「こえこえ~~(これこれ~~)」



【hi】



 ローマ字で[火]と書いた切れっ端に魔力を通してみせた。



………ボッ‥‥


 三度目も、同じように火が現れる。



 じいちゃんは僅かに目を見開いて‥‥


「………………」


 ありゃ?

 ドンドン真顔になってきた‥‥


 些か長めの静寂が続く………



「あ………あぉ いーちゃん、い~あんねも ぉあ~ぁいたい……(あ………あの じいちゃん、字 何でも良かったみたい……)」


 沈黙に耐えられなくなって説明を始めると‥‥




 じいちゃんは、フゥ‥‥と軽く息を吐き、スッと片手を伸ばし‥‥


「‥‥まったく‥‥驚かされるよ…………」


 頭を撫でながら、そう言ってくれた。




 柔らかい声、優しい手の感触‥‥‥


 あ‥あはは‥‥なんか照れくさいなぁ‥‥




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