表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/80

山には埋もれたミスが有る

 小さな紙片を机に山積みにし、

束のようなロウソクの逆光に浮かぶ、じいちゃんの背中からは‥‥



「……………終わらん……………」



 重たい声が響いて来た‥‥


 よく熱出してた頃に よく聴いたっけなぁ‥‥



「お~し~の?(どうしたの?)」


「おぉ…… 魔導書のな、写しがな、終わらんのよ………」



‥‥机の上の紙 全部に書くのか‥‥ いや、紙は下の箱から上げてたっけ‥‥ と言う事はまだ‥‥



 そりゃ さぞかし気の滅入る‥‥




「みぃて みぃて(見せて 見せて)」


 両手でせがむと、書き上がった何枚かを取って こっちに差し出した。


 いつもより遥かに小さい、前世の 英単語の暗記カード位の紙片に書かれていた文字は、一様に


【phlox】


 とだけであった。



「こえあ~に?(これなに?)」


「そんなんだけど魔導書だ~、魔力 通したら火が出るぞ~………」



 あ、相当お疲れのようだ。

 机につっぷしながら細い声で返事してきた。

 おんなじ文字ばっかりの単純作業だもんなぁ‥‥




‥‥何かお手伝い出来ないかな?‥‥



 机の下の箱から 書く前の用紙を魔法でそっと拝借し、

 雑然とした机の横の山から、インクと羽ペンも引っ張って来た。


 箱の中の残りは、机の上の山よりは多少マシな量だった。



 先ずはただ写してみる………

 この小っちゃいおててじゃ書きにくいなぁ‥‥





………書き上がった物に魔力を通してみて………


 うん ダメだ。ウンともスンとも言わん。



 そもそも魔力が上手く通らない。


 なら、書くときに魔力を押し出す様に、それこそ道を作る様なイメージで書いてみる。

それに魔力を通すと‥‥



 ボッ‥‥



 おっ よし、成功した。


 じゃあやる事は只一つ、机の下の残りを全部終わらせて、じいちゃんをビックリさせてみましょ。





「フゥ………… お??………」


 机の上の紙を片付けたじいちゃんが 下の空になった箱に手を伸ばした時、思わず声を上げた。


 こっちを見た瞬間に、移した魔導書に魔力を通し、炎を出して見せる。


 その様子と、書き上げた紙片の山を見てポカンとするじいちゃん。


 よっし!ドッキリ大成功!



「お前は………本当に‥‥‥」



 目元に手を当てて、口元にうっすら笑みが浮かぶじいちゃん。


 良かった~~喜んでくれたわ~~



「じゃあお前はもう寝てていいぞ。」



 そう言うとじいちゃんは さっきの箱の隣から、今度はA4サイズ位の紙を掴んで机に上げた。


まだ仕事あったんかい‥‥



 が、そうは問屋が卸さない。


 ここまで来たら一蓮托生、徹夜でも何でも付き合いますぜ、じいちゃん。



‥‥‥と 気合いを入れ直した時に、ふと思い出した‥‥‥



 一番最初に書いた紙!!


 魔力の通らんやつ!!!


 あれ避けとくの忘れてた!!!



 ギャー!!!!!

 

 この山の中から!!たった一枚探し出すのかよ~~~!!!!!





 こうして じいちゃんを手伝いたいとは思いつつ 要らん時間を費やしてしまう、情けない自分なのであった‥‥‥

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ