俄川とんで見せけり鹿の祖父
あれから数年、無事赤ん坊の時期を生き抜くことが出来た。
ヨチヨチとだけど歩く事が出来るようになり、
少し舌っ足らずだけど喋れるようにもなった。
そこで、長いこと抱いていた疑問をじいちゃんにぶつけてみることにした。
少し離れた所に居る、机に向かう背中に向けて‥‥
「いーちゃん何あってうの?
(じいちゃん何やってるの?)」
「おぉコレはな、魔導書を写してるんだよ」
「まおーしょ?(魔導書?)」
「そうだぞ~見てみるか?」
そう言ってじいちゃんは一枚持って、こちらに腕を伸ばした
自分は魔法で受け取り、床に積んであった本の上に広げる。
「上手になったなぁ‥‥」
あっじいちゃん何か上機嫌だ
エへへェ~~と照れながら、魔導書に目を走らせる‥‥
相変わらずサッパリ解らん
「おーやっておんの?(どうやって読むの?)」
「おぉ それは魔法言語って言ってな、俺らの言葉とは違う言語なんだよ」
なるほど道理で読めない訳だ
じいちゃんは本棚の方を見て、
「俺らの言葉はこっちだ~」
と言いながら、分厚い本を浮かべて来た。
杖を使わずに、
じいちゃんもすっかり上手になって‥‥
手元に来た本を開くと‥‥
(‥‥‥うぉ!!!!)
‥‥‥そこに並ぶのはアルファベット‥‥‥だけども読める‥‥‥
(ローマ字かぁ~‥‥‥)
その本は辞書のようだった、しかし‥‥
漢字とひらがなに慣れた脳みそには、メリハリが無さ過ぎて頭がクラクラする‥‥‥
それに漢字が無いから、文の一つ一つが兎に角 長い‥‥
成る程、その辺の本がいちいち分厚いのはその為か‥‥
って、いかんいかん、本題から逸れた
「とーおえ まおーしょってあーに?(所で魔導書って何?)」
「ん?魔導書っていうのはな、文字で魔法を組み立てて置いてな、魔力を込めるだけで発動するようにした物だぞ。
まぁ使った方が早いな、ちょっと外行くぞ~」
そう言って自分を抱き上げ、移した魔導書を一枚取り、じいちゃんは外の薪割り場に向かった。
「いいか~見てろよ~」
そう言って、おもむろに掌を魔導書に置くと‥‥
パキャ!!
いきなり薪ざっぽが真っぷたつになった
「ほれ、やってみぃ」
そう言って魔導書を自分の前に差し出し、新たな木を準備した
(いや そう言われても‥)
今までは目的有りきで魔法を使っていたから、何の狙いも無く魔力を出す感覚が分からない。
とりあえず手を魔導書に置き、
魔力を使った時の疲れを思い出し、
こんな感じの後 疲れたんだったかなぁと逆算し、
くっ と、力を込めるようなイメージ
パキャ!!
‥‥‥おっかねえ~~‥‥‥
自分の意志とは何の関係も無く、いきなり木が割れた‥‥‥
何かアクセル踏みすぎて車が急発進した様な感覚‥‥‥
いやまぁ体の疲労は有るんだけど‥‥‥
「おっかい おっかい(もう一回 もう一回)」
‥‥この感じ早く覚えておこう‥‥
うっかりしたら事故りそう‥‥ 使わなきゃならない機会が無いとは限らないし‥‥
そうかそうかと、じいちゃんは上機嫌で準備をする。
‥‥ひょっとしたら‥‥
もっと力を込めたら、下敷きの丸太まで真っぷたつになるかな?
不意にイタズラ心が湧いてきた
よ~し、ちょっとじいちゃんを驚かしちゃおう
さっきと同じように魔導書に手を置き、
さっきよりもずっと強く力を込め
ジュッ!!
‥‥‥魔導書に大穴が空いた‥‥‥
うわ~~!!!じいちゃんゴメ~~ン!!!!
「ハッハハ!!いやぁ~~こんな小さいのに、もうそんな事まで出きるのかぁ!!!」
良かったぁ~~怒られんかったぁ~~
むしろ喜んでくれてるよ~
その日の夜から‥‥
目的を持たず ただ魔力を流す感覚を覚えたので、
寝付くまで筋トレ感覚で魔力を垂れ流す事が日課になった
疲れてた方が良く眠れるし、
何よりじいちゃんは 魔法が上手くなると喜んでくれるし‥‥