ツイてないの始まり
初めての投稿です。色々至らない所もあるかと思いますが、笑って許していただけると幸いです。
リンゴーン…
(終わったぁ‥)
終了の鐘が鳴り、空気が一気に弛緩した。
ここは某工業大学の受験会場、その中の一人、弓削 真矢は最悪の体調で試験を受けていた。
前日に移動しないと間に合わないので、受験会場近くのビジネスホテルに泊まったのだが、慣れない長距離移動のためか それとも乾燥した空気のせいか、ガッツリ風邪を引いてしまったのだ。
熱 咳き 鼻水 だるさや胸や喉の痛みと戦いながら、しかし頭は妙に冴えていた。
立ち上がるのも億劫なので始まりから終わりまで机にかじりついて試験をこなした結果、手ごたえはバッチリ。
これなら点数に問題なさそうだ。
(さてと、帰ろっか)
久しぶりに立ち上がり、二歩ほど動いたその時‥
(………??!!!!)
突然、胸の痛みが強く、鈍くなり、思わず机に左手を着く………が、支えきれず、床に横に倒れこんでしまった。
(い! 痛た!たたた…… 何だコレ!…)
周囲が徐々に騒がしくなるのを意識の遠くで感じながら、何が原因なのかを焦りながら考える。
ここ最近のことを記憶の中から引っ張り出し、
ひょっとしたら……
と、一つの仮説に行き着いた。
思えばかなりの時間 脚もロクに動かさずに座りっぱなし、
おまけにだるくてトイレに立つのも避けたく、水分も取らずに過ごしていた。
更にはこんな体調、さぞかし血液がドロドロになっていたのではなかろうか
(あぁ゛~ひょっとしてこれエコノミークラス症候群かなぁ…………
あぁもぉ…こまめに水分取っときゃ良かった………)
後悔先に立たず
仮説が立ったところで何が出来る訳もなく、
(こんな所で死んだら、叔父さんにエッライ迷惑掛けちゃうなぁ…)
などと考えていた。
真矢の両親は 真矢が中2の時、交通事故の時に受けた輸血で大病に感染し、病院に居る日数の方が長い。
幸い保険が下りたのと、
搬送先だった病院の院長がいい人で、
責任を感じてか 自身の院で色々便宜を図ってくれるは、 輸血血液の供給先と一緒に渡り合ってくれるはと 様々な気遣いをしてくれ、金銭面の不安は薄かった。
が、一年の大半を一人暮らしという訳にはいかず、農家をしている叔父さんの家にお世話になっている。
元々仲が良く、奥さんを亡くしていたので 人手としても重宝され、
一個下の従妹との空気が微妙なことを除けば、概ね関係は良好だった。
が、流石にこんな遠方で死んだとあっては、掛ける迷惑が大きすぎる気がする
…………遺体の搬送とかもあるし…………
…………二人に色々思い出させちゃいそうだし…………
(あぁもぅ何でこんなことになるんだよぉ‥‥ それによりにもよって何でこんな時に………)
やり場の無い怒りと、どうしようもない焦りが、次第々々に膨らんでゆく。
何も出来ない自分に、徐々に死の気配が近づいてくるのを感じつつ、
(誰か救急車呼んでくれないかな………)
などと思いながら、意識は暗く沈んでいった。