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1/18

姉とは妹に翻弄されるもの

開幕微エロ(?)注意。

言うほどでもないが。

4/26 再度全体的に改稿しました。

――.


「――んっ、あぅ……やっ……え、りすぅ、ンっ」

「ちゅっ、じゅぷ……んあっ、ちゅ」


 月明かりと燭台。

 そんな僅かな灯火を光源とする一室。

 少しの調度品と数脚の椅子、テーブル。それと一組のソファー。

 室内の置物は最小限に、けれどそれらの材質には拘りを感じさせる。

 嫌らしくない程度に贅の凝らされた室内は、しかしその趣に反して淫靡な空気に染まっていた。


 無垢材で組まれた沈み混むような上質のソファに二人の少女が横たわっている。

 一人は暗灰色の長い髪の少女――セラフィム。もう一人はピンクブロンドの、少女よりも幼いエリスと呼ばれた女の子。

 エリスは抱きつくように覆い被さり、セラフィムの首筋へと顔を埋めていた。

 

 ちゅぱ、じゅぷ、と。小さく水気のある音がセラフィムの首筋から聞こえてくる。

 時折、息継ぎをするように小さく顔を上げるエリスの頬は上気していて、左右で色の違う瞳が怪しい光を湛えている。口許から仄かに覗く犬歯が紅い筋をぽた、と口内に落とす。

 エリスがまた首筋に噛みついた。傷跡が残らないように配慮して小さく開けられた傷口から血の珠が浮かぶ。それを舌で舐めとると、そのまま口づけるように唇を落とす。


 何度目かの水音。その度に、セラフィムの口から艶っぽい吐息が零れる。

 彼女の頬もまた朱に染まっていた。その表情に恐怖や嫌気などの否定的な色は一切無く、抱きつくようでいながら、その実しがみついているようでもあるエリスのやや低い体温と、その一心不乱さに胸の奥から愛しさが込み上げてくる。

 唯一難点を上げるのなら、血を吸われる度に感じる痺れるような甘い刺激と高揚感。それと身体の芯から昇ってくるふわふわとした感覚。未知のそれに戸惑うも、思考する暇なんてもらえない。

 齢を二十に届かない少女にとって初めて感じるその未知の感覚に抗う術は無く、ただ耐えることしか出来ない。。

 唇を噛み、声を圧し殺していても、吐息と供に艶っぽい声が漏れてしまう。


「ひんっ、……やぁ……っ、ッあっああああ」

「ちゅぱ、じゅうぅ、ちゅっ、ンはぁ、ちゅうぅ、ぢゅっ」


 びりびりと、ふわふわと。

 愛しさと、冷たさと、熱さと。

 そんな未知と既知の感覚がさざ波のように寄せては返していく。

 堪らず、セラフィムの口から一際大きい声が響く。それは間違いなく快感によるもの。けれど、セラフィムにはそうとは判らない。ただ、なんとなく恥ずかしさを感じて潤んだ瞳を隠すように瞼を固く閉じる。


「……ふにゅぅ。……? あーっ! エリスずっるーい!」


 セラフィムの発した嬌声に、テーブルを挟んで反対側のソファで眠っていたもう一人の女の子――ケレスが目を覚ます。

 目尻をくしくしと擦りながら起きた彼女は、最初はぼんやりとした顔でくんずほぐれつしている二人を眺めていたものの、直ぐに状況を理解して抗議の声を上げた。


 そのケレスはエリスとよく似た容姿をした女の子だった。顔立ちは非常に似ており、違うのは髪型と瞳の色の配色が左右で逆であるということくらいだろうか。

 それもその筈だ。エリスとケレス、彼女らは双子なのだから。

 

 そんなケレスの声にエリスは答えない。無視を決め込んでいる――と言うよりは、現在進行形の行為に夢中で耳に入っていない様子だった。

 セラフィムの方は視線を目覚めたケレスの方に向けるも口は固くつぐんだまま。もはや殆ど奏功していないとは言え、口を開ければ反射的に意図しない声が出てきそうで、声をかけることができない。

 二人のそんな反応がお気に召さないらしいケレスは頬を膨らませた。けれどすぐに何かを思い付いたように顔を綻ばせると、セラフィムの足元へとぱたぱたと小走りに駆け寄っていく。


「いーもんっ。エリスが首筋そっちを一人占めにするなら、あたしはこっちをもらうんだから」


 そう言って、片膝を立たせていたセラフィムの左脚、スカートから覗くその太ももの内側にケレスは顔を寄せていく。


「お姉さまの、脚きれー……。すべすべで、とっても――おいしそう」


 幼く無邪気なその表情とは裏腹に、声には熱が篭っている。

 紅潮した頬は熱に浮かされているようで。

 恍惚とした瞳を妖しく輝かせたケレスは、繊細な手つきでセラフィムの肌理きめ細かい脚線を撫で擦り、ゆっくりと、接吻くちづけるように唇を落とした。

 そして――


「――ぁああっ! ひぅ、……あっ、やっ……、そ、こはぁ……ぁ、あんあああっ」


 セラフィムが小さな痛みを感じた、と同時。

 耐えていた一切合切を嘲笑うように、雪崩のような波によって諸共に呑み込まれた。

 セラフィムの脳髄をこれまでの比ではない強烈な痺れが駆け抜け、蕩けそうなほどの熱が爆ぜる。

 不快感は無い。むしろその逆だ。

 全身を羽毛で優しく撫でられいるかのような感覚。

 どろどろにふやけてしまいそうなのに、それでもこの波に身体を任せてしまいたくなるような甘美な誘惑。

 それが罠だと解っているのに抗えない、甘い蜜に誘われる蝶の気持ちがわかったような気がした。

 ――耐えていたものが壊れた。

 茫洋とした意識の中でそんなことを感じながら。

 己の口が小さく、けれど確かにはっきりと嬌声を上げていることにも気づかずに、ただただ押し寄せる波に身を任せてしまう。

 抗えない。

 耐えられない。

 熱にうなされるように、三人は縺れ合いながら睦事めいた行いを続ける。


 最後に彼女の頭に過ったのは、二つの感情。

 此処は完全に“違う”のだという歓喜。

 お腹を透かせた赤ん坊が母の乳房にそうするように、自らの首と太股に吸い付く二人の妹への、心底から来る愛しさ。

 だがそれも次第に、絶えず押し寄せる波に飲み込まれて、混ざっていく。

 ない交ぜになった快感で朦朧とする意識の中、セラフィムは夢見るようにここへと至る経緯を思い返していた。

 

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