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黒猫プランの災難な1日

作者: ケボ氏

黒猫プランの続編?

前作を読んでいなくても一応話はわかると思います

今日も猫ヶ島町は平和だな。


私は欠伸をしながら縁石の上でそんな取り留めもないことを思っていた。

何しろ、猫ヶ島町は今日も晴天。人通りも多い地域でなくまちゆく人々はご老体の方ばかりだ。

そんな町だからこそ、プランはこの町で日々放浪している。


さて、そろそろこうしてのんびりしているのにも飽きてきた.....。今日はどんな出会いがあるだろうか。


そうして黒猫プランはどこか気品を感じる仕草で起き上がり、一つのびをしてから歩道を駆けた。

今日も、黒猫プランはこの町を往く。



ーーー



これはどうしたものか.....。


黒猫プランは苦悩していた。

パトロール感覚で歩いていると、何やら弱々しい、今にも掻き消えそうな鳴き声が歩道にちょこんと置かれたダンボールの中からしてきたのだ。

ダンボールに猫心をくすぐられるのをぐっと我慢しつつ、中をそっと見てみると、自分とは全くの対極、傍に置いてあったミルクよりも白く、ネズミよりも小さい子猫がそこにはいた。

しかしその体はとても細く、衰弱しきっている様子なのだ

人間のお情けであろうミルクは全く減っておらず、飲むことすらままならない事が見受けられる。

そんな姿を見て、プランはどうしてやるべきかと逡巡していたのだ。


このまま放置して素知らぬ顔で見過ごすのは私の美学というか、猫学に反する.....。

しかし、私に出来ることは少ない。もしも私がメスだったならば他にも手段はあったかもしれないが、生憎私はオスだ。


そうして色々と考えを巡らせていると、上から突然声が聞こえた。これは、あいつか。もしかしたらこの子を何とかしてくれるかもしれない。


上からの声は民家の屋根から聞こえていた。

大まかに分けて黒ずんだ茶色、黄土色の2色の毛で体は覆われており、顔は地が黄土色、左目に丸く黒ずんだ茶色という色合いをした猫が身軽そうな体で屋根からブロック塀へと飛び移り、そこから私とこの子の元へとわざわざ来てくれた。


やあプラン!なにかお困り事かな〜〜?

そんな時は情報屋チャムにおまかせだよ〜!


そんな快活に挨拶をしてきたこの猫は名乗ったとおりチャム。身軽な体で色んな所を駆け回り、人間も猫も知らないような情報をかき集めてくることから、情報屋という二つ名が付いているのだ


やあチャム、ちょうど良かった。実はこの子を何とかしたくてね。相当衰弱してるんだけどミルクがそばにあるのに飲まないんだ。


私はダンボールの中でそう言うと、チャムはすぐに覗き込んでこの子を見ると



あ〜〜.....。これは相当まずいね。なにか食べる元気はまだ残ってそうだけど、このミルクはこの子には冷たすぎるかな。


なら食べるものを探しに行くべきだろうか?


うーーん、それも難しそうだ...。

あんまり消化に悪いとむしろそれが致命傷になる恐れもあるよ.....。それよりもぉ〜。



なにかチャムが面白そうなことを考えついた!と言わんばかりのしたり顔をしながら言葉を伸ばす。



それよりも?


このミルクを飲ませた方が確実かな!

冷たいなら温めれば良いんだよ!


なるほど、どう温める?


えっとね、大体この子ぐらいの子が飲める温度は大体人肌くらいなんだけどね?僕らとだいたい同じ温度なんだよ!つまりね!



ミルクを体で温めてあげればいいんだよ!



プランは目をドングリのように丸くしながら、ポカーンとしていた。



い、いやいやチャム。今日は折角の晴天だ。こんな日に何もしないで歩き回らないのは少し私には厳しいかな、と。

他に名案はないかな?


ええ〜。さっきまで縁石で寝てたやつのいうセリフじゃないなあ〜。

それに、この子が食べられるものはスグそこにあるんだし、不確かな行動をする時じゃないと思うよ〜?



ニヤニヤしながらチャムはそう言ってくる。

相変わらず良い性格をしているやつだ。痛いところを的確に突いてくる。

しかし、さっきのこいつの案も別に荒唐無稽という程ではない。確かに、この子が何かを食べられる間にミルク以外の何かを用意できる保証などないのだ。



そうして、少ししてプランはため息とともに



仕方ない。その案を採用させて貰うよ。


やったあ!これでプランの献身的な独身子育てをみられ.....ああいや何でもないよ!


建前というものを君は覚えた方が良いよ...。



そうして私のまさに献身的な看病が始まったのだ。



ーーー



チャムはがんばってね〜と一つ応援の声を残してどこかへ行った。相変わらず身軽なやつだ。

私は何をしているかというと、ミルクの入った缶詰と、ついでに弱ったこの子も包み込むように寝ていた。

この子ではいい加減呼びにくいので、ヴァイスと勝手に呼ぶ事にする。

ヴァイスは鳴くことに疲れた様子でぐっすりと寝ているようだ。

まあ、私も気負わないでやるべき事をしようか。


そうしてダンボールの中でひっそりとして、時折現れる通行人や、仲間達から親子を見るような微笑ましい顔で見られながら数時間がすぎた。



弱々しい声とともに、ヴァイスがまた鳴き始めた。

まだ目も開ききっていない目で必死に親を呼ぶ。

プランは過去の自分に重なるものを感じ、いつの間にか見入ってしまっていた。

ハッとするとヴァイスはこちらを見ている所に気づいた。

鳴くこともやめてただじっと弱々しい瞳で見てきているのだ。



君は、まだ生きたいか?


う△。


どうして?


だっ〇、おか□さ×とお〇う□さん#まって&から



弱ったせいか、聞き取りにくい声で答える

ヴァイスは捨てられたのだ。

だいたい人間はこういう時、自分の家とは離れた場所に捨てる。

もしかしたら、ということもあるがきっとこの子もそれに当てはまる。

この子は絶対とは言わないが親と会うことは難しいだろう。

私はそっと起き上がり温まったミルクを差し出した。



お飲み。



そうすると、ヴァイスはたどたどしくも、ミルクの元まで歩き、匂いを嗅いだ。そろそろと慎重にミルクに顔を近づけていくと

ーーーヴァイスはチロッと舌を出してミルクを飲み始めた



ミルクがなくなる頃には、もう日は暮れていた。

ヴァイスは毛並みが白なのに口を汚していることがわかる。

そんな姿に微笑しながら



じゃあ、お父さんとお母さん、探しに行こうか。


え?どうして?



多少の元気が出たのだろう。

爛漫な口調のヴァイスが聞き返してくる。



君が迷わないように、案内してあげるからだよ。


そんなの一人でもできるよ!


さっきまで死にかけてた君がいうセリフじゃないかな。


うぐっ.....。

でもおじさんはどうしてそんなことしてくれるの?


お、おじさん.....。お兄さんと呼んでほしいかな。

まあ、ただの気まぐれさ。ここまで面倒見て放っておくのも忍びないよ。


でも、自分は何も出来ないし、何もしてあげられないよ?


そういう所も面倒を見るってことさ。

君にはこれから親を探す道程で成長してもらうよ!


で、でも.....


いいから、さあ行こう。まずは僕のご飯探しからだ。

君の看病でもうお腹がすきっぱなしでね、このままだと餓死しちゃうよ。


え、そんなのだめ!


ならご飯探し、手伝ってくれるかな?



困った顔をしながら私はそういうとヴァイスは嬉しそうに一言



う、うん!



こうしてプランはヴァイスと共に、道を進む。

黒猫プランは白猫ヴァイスと共に進む。

きっといつか、見つかると信じて。

いつまでも、いつまでも。

お互いの未来を信じて。

ちっちゃい猫は可愛い

おっきい猫も可愛い

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