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014 ルミアの葛藤

ブクマ評価ありがとうございます!

すみません!実は話の途中までしか貼れていなかったらしく、もう一度ちゃんとした話を投稿しなおしました!

既に最新話を読んでくださった方は申し訳ありませんが、続きからでも読んでいただけると幸いです……!



 昼食を食べ終えた二人はその後、短時間で終わるクエストをこなし、資金確保を進めていた。

 そしてそれも終わり、辺りが暗くなってきたところで夕食を取り、今は宿屋への帰り道を歩いている。


 「よし、これで資金確保も出来たし明日には出発出来そうですね」


「そうね。一日無駄にしちゃったし急がないといけないわ」


「はい、分かってます」


 ルミアの言う通り、これ以上時間を無駄には出来ない。

 縁談の日程は決められていて、本当だったら今日ももっと目的地に近づけていたはずだったのだ。

 しかしお金が無いのであれば移動手段さえ確保できないことになるので、今日は仕方なく一日を費やし、目的地までの資金確保を行っていたのである。


「ルミア様、そこは右ですよ」


 ルミアが宿屋までの道のりを間違えそうになった時、アルは指摘する。

 しかしルミアからしてみればまだ一度か二度しか歩いていない場所のことをどうしてそんなに覚えているのかと、思わずアルを二度見してしまった。


「わ、分かってたわよ」


 だがそんなアルを認めるのはどうしてか癪で、ルミアは意地を張る。

 アルに教えられた通りの道を歩くと本当に宿屋が見えてきた。

 ルミアは悔しくなって、少しだけ拳を握る。

 しかしそんなルミアに気付かないアルはどんどん宿屋の中に入ると、そのまま一直線に部屋へ戻る。


 それまではずっと後ろを歩いてくれていたアルが突然自分の前に出てきたことに驚くルミア。

 もしかしたらアルは万が一のことがないように先に部屋の中を確認してくれようとしたのだろうかとルミアはアルに視線を向ける。

 しかし実際のところは少しだけ違う。

 部屋の中に何も怪しいことがないのはアルが部屋の外にいる時点から分かっていた。


「はい、どうぞ」


 今回アルがルミアの前に出たのは単純に、部屋の扉を開けるためだ。

 アルとは違い女の子であり、かつ、自分よりも地位が高いルミアに対して、それくらい気を遣っているということである。


「あ、ありがと」


 結局またアルの気遣いに触れてしまったルミアは戸惑う。

 さすがにここまでされて気付いたのだ。

 アルという男が噂の真偽は関わらず、少なくとも自分は良くして貰っているということに。


 だがだとしたら問題が一つ。

 ルミアはこの数日間でアルに対して強く当たっていた。


 例えば出発の日にはあからさまに悪い態度をとったりもした。

 他にもお金の管理は自分ですると言っておきながら見事に失くしてしまうし。

 更に昨日の夜なんかは、アルのお金で借りた部屋から追い出して、一晩廊下で過ごさせたりもした。


 そんな自分の行動がどれだけ理不尽だったのか、今考えても容易に想像できる。

 それなのにアルはルミアに対して一度でも文句を言うことがあっただろうか。

 確かに不機嫌な雰囲気を出すことはあったが、それでもルミアに直接的に文句を言ってくることはなかった。

 ルミアはアルに視線を向けることが出来ず、堪らず俯く。


 アルはそんなルミアに気付くことなく、部屋の中にルミアを入れると続けて入って来る。

 扉を閉める時、アルは出来るだけ音を立てないように静かに閉めるが、それさえも自分のためなのではないかとルミアは気が気でならない。


 こんなにも気を遣って貰っているというのに、自分はどうだ。

 ルミアは数々の自分の行動を思い返し、顔を青くする。

 望んでもない縁談に、たった一人の護衛という状況に腹を立て、八つ当たりしていただけではないか。

 アルはそれでも真剣に護衛をしてくれているというのに……。


「な、なにかしないと……っ」


 このままではルミアは、本当にただの嫌な奴でしかない。

 ルミアはこれまでの自分がしてきたことを少しでも清算出来ることが無いかと必死に探す。

 もちろんそれがあまりにも都合のいい話であることも重々承知しているが、それでもルミアは居ても立ってもいられなかった。


「そろそろ夕食にするかー……」


 ちょうどその時、窓際に立つアルの独り言が聞こえてくる。

 これだ! ルミアは瞬間的にそう思った。


「ゆ、夕食は私が下の食堂に貰いに行くから!」


「え、いや別に俺が行きますよ」


「良いから! あんたはここにいなさい!」


 ルミアは突然のことに戸惑うアルに問答無用に言い放つ。

 そしてアルの返事を聞くこともなく、部屋の外へ駆け出した。

 ルミアは自分がこれまで八つ当たりをしてきたことを反省しながら廊下を走る。

 本来なら宿屋の中にある食堂で夕食を貰って、それを部屋に持っていくだけの簡単な仕事だ。


 アルもそれが分かっていたからこそ、ルミアの要求を呑んだのである。

 そもそも護衛が護衛対象から離れること自体あり得ない話なのだが、数百メートル圏内に敵意を持つ人間がいないことは既に確認済みだ。


 しかしルミアはそれでは満足できなかった。

 これまでしてきたことを考えたら、この程度じゃ足りない。

 ルミアは食堂を通り過ぎると宿屋へ駆け出す。


 宿屋を出た先で、何かもっとこれまでのことをアルに謝れるような美味しい夕食を探して――。

 

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