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011 不機嫌の始まり

ブクマ評価ありがとうございますm(__)m


「やっぱり手っ取り早く稼ぐ方法って考えたら、ギルドだよな」


 アルは目の前にそびえ立つ大きな建物に呟いた。

 この建物は冒険者ギルド。

 冒険者ギルドのことは今更説明するまでもないだろう。

 クエストを受け、達成することで報酬が貰える仕組みになっている。


 アルとルミアはギルドの中へ入ると早速クエストボードへと向かう。

 そこにはありとあらゆる種類のクエストが貼られてあり、どのクエストにするか悩みどころだ。

 費やす時間に見合う報酬が貰えるのであればいいのだが、そういうクエストはすぐに他の冒険者たちに取られてしまうので、中々良いのが見つからない。


「……ん、これは」


 そんな中でアルの目に留まったのは『翼竜討伐』のクエスト。

 この依頼ならばそこまで面倒くさくもないし、そして報酬も約束されている。


「よし、これにしましょう」


 アルはルミアに一言だけ残すと、クエスト用紙を受付で受理してもらう。


「こういうとこ結構来るの?」


 すると傍で見ていたルミアが意外そうに尋ねる。

 てっきり普段から王宮に引きこもっていると思っていただけに、妙に手馴れているアルが不思議だったのだ。


「まぁ、色々と都合がいいので」


 それにクエストの中では今回のように空を飛ぶようなモンスターも多い。

 そんなモンスターたちは飛行魔術の研究をするアルからしてみれば立派な研究対象なのだ。

 もちろんそれらのモンスターが飛行魔術を使っているわけではないということくらい理解している。

 空を飛ぶモンスターたちはどれも、それぞれに違いはあれども、空を飛ぶための翼を持っている。


 しかしアルはそれでもモンスターたちから何か得られることはないだろうかと必死なのだ。

 そもそもアル自身、飛行魔術を覚えたいわけではない。

 アルの最終目標は『空を飛ぶ』ことだ。

 飛行魔術はあくまでも過程でしかない。


 だからアルは暇があれば、ギルドで翼竜などの討伐クエストを受けているのだ。

 空を飛ぶための研究に加えて、報酬も貰える。

 それがアルにとってどれだけ好条件であるかなど言わずとも分かるだろう。


「ふーん……」


 幸いルミアは今回のクエストに関して文句を言うこともなく従ってくれる。

 それは恐らくルミアが王族という立場のせいで、これまでギルドに足を運んだことがなかったというのが大きいだろう。

 ギルドの中は冒険者の集まりだけあって屈強そうな男たちも多い。

 こういう場所では慣れているアルに任せて、大人しくしておいたほうが変なことにも巻き込まれないだろうと思ったのだ。


「じゃあ今からクエストに行きますが、ルミア様はどうしますか?」


「どういうこと?」


「いや、面倒でしたらここで待ってくださってても大丈夫ですが……」


 本来アルはルミアの護衛であり、出来るだけ離れないようにするのが基本だ。

 しかしここギルドにおいては大勢の凄腕の冒険者もいるので、最悪の事態にはならないだろう。

 アルはそう考えたため、クエストが面倒だったらギルドで待っていてくれてもいいと提案したのだ。


「いやよ。私も行くわ」


 しかしそんなアルの提案はルミアに一蹴される。


「なんであんたにそこまでして貰わなくちゃいけないわけ?」


「……はい?」


「そもそもあんたの稼いだお金とか、お世話になりたくないんですけど」


「……さいですか」


 どれだけ理不尽なら気が済むんだと言いたくなるのを、アルはぐっと堪える。

 だがそれ以上ルミアと会話していたら確実にキレてしまうと思ったアルはそれ以上何も言うことなく、早々にクエストに向かうことにした。


「ち、ちょっと待ちなさいよ!」


 ルミアはそんなアルを見失うまいと必死に後を追う。

 先の発言も一人でこんなところに残りたくないだけだったのだが、口を出る時に、アルに知られたくないという気持ちからかキツイ言葉になってしまった。

 その瞬間アルが不機嫌になってしまったのが分かったが、時すでに遅しというやつである。

 しかしルミアは、アルが不機嫌になったところで何てことはないと首を振った。


 アルはクエスト用紙に書かれる詳細を見ながら、翼竜のいるらしい場所へ向かう。

 今の場所から考えて、恐らく小一時間もすれば着くだろう。

 そこでアルは一度、何か外で食べられるようなものを買っていくべきかと悩む。

 今から行けば恐らく昼過ぎくらいにはクエストも終わるだろうが、それでは帰って来るまでにお腹が空いてしまうかもしれない。


「…………」


 普段だったら迷わずにパンか弁当か何かを買っていただろう。

 しかし今アルはルミアと二人だ。

 ここでアルが自分の分の昼食を買うのであれば、ルミアにも買わないわけにはいかなくなる。


 それがアルには癪だった。

 さっきあんなことを言われたのに、これ以上何かをしてやろうとも思えない。

 幸いルミアはギルドに慣れていないようで翼竜を討伐する場所も知らないだろう。

 だとしたら出発する前に昼食を買った方がいいなんて思いつかないはずだ。

 結局アルは何も買うことなく、翼竜の討伐に行くことにした。

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