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覇神なんて俺には荷が重い  作者: だるま座
武極大会編
1/10

#1 事の始まり、そして異世界へ part1

  俺の名前は東雲崇星(しののめしゅうと)。17歳。

  アニメ鑑賞や漫画、ラノベを読むことを趣味としているバリバリ現役の高校生だ。

  俺が通う高天原(たかまがはら)高校(通称『神隠し高校』)は全校生徒500人、男女共学、朝の授業は8時から始まり、最終授業が17時に終わる、マスコットキャラクターは全身が淡いスカイブルーのオーラを身に纏った天使ちゃん。見た目は可愛いが胸が寂しい。何処(どこ)にでもあるような普通の高校だ。

  しかし、この高校には他の高校とは大きく違う点が存在する。

  それはこの学校には神隠し七不思議なるものがあり、噂によるとその不思議を全て解き明かした者には神様からそれはそれは豪華な褒美を頂けるらしい。

  まあ恐らく誰かが冗談交じりに言った噂が知らない間に広まってしまったのか、意図的にわざとこの噂を流したのかのどちらかだろうけど、前者の方が現実的だろう。

  後者ならとっくに情報元は特定されているだろうからな。

 

  実は俺はこういう不思議を解き明かす類いの推理物が結構好きだったりする。

  まだトリックや謎が明かされる前に自分でその答えにたどり着いた時の達成感は快楽のも似たものを感じる。

  例えるなら、野球のバットがボールを芯で捉えた感覚だ。

 だからといって正解に執着しているわけではなく、俺は別に正解を見つけられなくても良い。何故なら俺はその過程を楽しむ人間だからだ。

 

  だから俺もこの七不思議に挑戦してみることにした。それに学校新聞にネタを投稿すると少しばかりおこずかいが貰える。やらない手はない。

実はこれが俺の運命を分ける大きな分岐点だったと後で気がつくことになる。


 先ず1つ目の七不思議

「天使ちゃんの目は夜になると光る」――目にLEDライト植え付けられたか?

 2つ目

「夜の音楽室、響き渡るピアノの音色。」――学校のピアノ古いからな。修理に出せや。

 3つ目

「夜の校舎、廊下を徘徊する天使ちゃん」――見回りご苦労様でーす。

 4つ目

「夜のトイレ、一人で訪れると便器から姿を現す天使ちゃん」――出来れば近づかないで欲しい。汚い。

 5つ目

「季節ごとに痩せたり太ったりを繰り返す天使ちゃん像」――朝バナナで解決だな。

 6つ目

「悪口を浴びせると『恨んでやるぅ』と喚く天使ちゃん像」――恨むだけか?可愛いな。

 7つ目

「不明」――六不思議になっちゃうな。


  ここの七不思議は殆どが天使ちゃんが関わっているみたいだな。

 七不思議作った奴は何か天使ちゃんに恨みでもあるのか? まあそこんところの解明も含めて推理してみることにしよう。


 そして夜の校舎…俺は人に知られることなく侵入に成功した。警備員はいない。田舎だからな。

  (なん)か誰かに見られている気がするが、ここには自分以外誰もいないし気のせいだろう。

  さあ早速七不思議解明と行きますか‼︎



  そして夜の学校を探索すること1時間、俺は諦めずに色んなシチュエーションを考えて行動した。だが進展ゼロ、手がかりゼロ。結局この話はデマだったのかも知れない。

 今思うと、七不思議は少年に好奇心と恐怖心を(くすぐ)るものである筈が、ここの七不思議は殆ど恐怖なんて感じる要素がないと言える。だって『天使ちゃん』だもんな、そりゃあ怖くないわ。


  まあ、このまま此処でへばっていても仕方ないので最後に一応天使ちゃん像をもう一度だけ見て帰ることにした。

そして今、像の目の前にいるわけだが――

 ――相変わらず、まな板は健在だ。


【だ〜れ〜が〜『まな板』じゃあーーーー!!!!! 】


「 !!?」


 おかしい、何処からか聞こえない筈の声が聞こえてくる。 いや、頭の中に直接声が響いている感じだ。

気のせいでは無いのか?


【ちょっとあなた‼︎ 何無視しているのよ‼︎ 私はこの世で最も偉くて、尊くて、偉い女神様なのよ‼︎‼︎ 】


 今「偉い」2回言わなかったか?


「え…女神様?」


【そうよ 。私は女神アテナ 。貴方は女神である私をたった今ここで侮辱したのよ、覚悟なさい!!】


 どうやらこのバカでかい声の正体は女神様(自称?)らしい。まさか本当に女神がこの世にいるとは。

 しかし、こういうシチュエーションなら漫画やアニメで何回も見たことがあるぞ。こういう時はまず女神様に気に入られておくのがベストだよな。


「えっと... 申し訳ありません 偉大なる女神様。無礼な点が御座いましたこと誠にお詫び申し上げます。しかし私には どうして女神様が御立腹なさっているのか、私の不出来な頭では理解出来ません。宜しければ、その理由を教えてくださらないでしょうか?」


【へえ あんた良い心構えじゃない。 ふん。まあ良いわ。馬鹿な貴方にも分かるように教えてあげる。 でもその前に東雲崇星(しののめしゅうと)、貴方をこっちに移動させるわ。】


 うおおおおおお! 俺の体から眩しい光が溢てきた‼︎ 眩しすぎるだろ。咄嗟に腕で目を隠さなければ失明してたぞ。って‥あれ!? 身体が急に軽くなった。 重力が無くなったみたいだ。

 今まで重力に縛られて生きてきた地球の生き物としては違和感しか感じない。宇宙飛行士は宇宙に行くまでに血もにじむ程の訓練を受け無重力空間での身体の動かせ方をマスターするらしいが、俺は大丈夫なのだろうか?

 そこら辺は心配するだけ無駄だな。俺にどうこうできるわけでもないしな。

 おっ 気がつけば先程までの強烈な光は消えたみたいだ。

 恐る恐る目を隠していた腕を下ろす。 目の前には自分の体を取り囲むように巨大な宇宙が広がっていた。

 そこに輝く星々はどれも1等星は超えており、凛と清らかに輝く葵い星も有れば 燃え盛る炎の如き紅色の星もある。一瞬その光景を目にしてしまえば、心を奪われてしまうだろう。


「ちょっと、いつまでボーっとしてるのよ」


 いきなり声をかけられたことで少し狼狽してしまう。声が聞こえた方に慌てて振り返る。


「あっ女神さ…ま……」


 そこには全体的に白いローブに身を包んだ、身長が160㎝くらいの(あお)い髪が特徴的な愛らしい女性(見た目は)が目の前にいた。

 その姿は正しく…


「……天使ちゃん 」


「そうよ。あのマスコットは私を模したものなの。これで理解したでしょ‼︎ あのマスコットを馬鹿にすることは私を侮辱するのと同義なのよ!! 」


 と言われてもな〜 そんなの知るわけ無いじゃんか。ってゆうかこの女神絶対自分の胸にコンプレックスを抱いているだろ。コイツの前では絶対『貧乳』を連想させる言葉は使ないでおこう。


「あなた、何か私に失礼なこと考えているでしょ。」


「ま...まさか〜そんなことあるわけないじゃないですか〜ヒューヒョロロー♪ 」


 危な‼︎ コイツ結構勘が鋭いぞ。胸は無くてもさすが 女神は女神か。咄嗟に口笛吹かなかったら考えてることバレてたかもな。


「また、何か失礼なことを‥‥まあ良いわ。あなたをこの神のみしか入ることを許されない異空間『クロノスの狭間』に呼んだのには理由があるの。」


「理由?」


「そうよ 。端的に言うわね。 あなたにはこれから異世界に行ってもらってそこで覇神をやって欲しいの。勿論、向こうの異世界人が口から手が出る程欲しがるような最高の特典付きよ‼︎」


 おいおい異世界なんて本当にあるのかよ。漫画やアニメでしか見たことねえしな。それにハジンって何だ?聞いたこともない。それに 特典とやらも気になるな。


「は 覇神?って具体的に何するんですか?それに特典って言ってましたけど…」


「はいはい、焦らない焦らない。そこは順番に説明するわよ。これから貴方を待ち受ける現実はこんなもんじゃ無いんだから。

 じゃあまずはこの高天原高校と神隠し七不思議のことね。」


 おお まずはそこからか。まあ気になるところではあるな。


「実はこの学校は神々によって建てられたの。神界に住んでいる神々の中でもより高位の神々にね。

 そしてその目的は異世界に連れていくべき優秀な人材の確保よ。

 それで私はその選別を任された身なの。

 ところで、あなた、七不思議の7つ目の内容は知ってるかしら?」


「え えっと分かりません。」


「まあ当然よね。 7つ目は『生徒の神隠し』よ。」


 ああ なるほど 今俺はその神隠しにあっている最中ということか。

 そうだな、神隠しにあった人間はいなくなるんだ、当然、最後の不思議は伝えられず、そこだけ空白つまり、不明になる。


「そういうわけであなたが異世界に行くことはもう決定してるの❤︎」


 どういうわけだよ。


「あとは覇神のことだけれど大体は向こうの世界に行ったらわかるわ。でも一応説明すると、覇神には異世界から来た人間しかなれなくて 常に世界の混乱の中心にいる人物よ。争いを起こしたり、逆に戦争を鎮めたりと自由気ままな生活をおくってるやつが多いわね。」


 それは自由気ままの一言で済ませてはいけない気がするのは俺だけか?


「そうそう 名前に神がついてるけど私達神界の神とはべつものよ。でも特典として向こうの世界では神にも似た力をその内使えるようになるわ。いわゆるチートってやつよ‼︎ よかったわね‼︎ 」


 この女神なんかテンション高いな。 こっちでは急な話の展開でそれどころじゃねえのに。


「向こうの世界は魔法に異能、呪術まで何でもあって飽きないわよ。他にもエルフや獣人、さらには龍やペガサスなどこっちでは空想上の生き物もいるわ 。世界観は中世と同じかそれより前の時代を想像してちょうだい。

 今のところはこれくらいしか言うことがないわね。

 じゃあ早速移動してもら…」


「ちょっちょっと待って下さい。肝心な、俺が向こうで何をすれば良いかを教えて貰ってませんよ。それに急なことですし、まだ心の準備が…」


「何よ。あんた男でしょ。なら啖呵切ってかっこよく『行ってくるぜ』くらい言いなさいよ。それにあなたを異世界に送るのは、殆ど神々の娯楽のようなものだし、深くは考えなくて良いのよ。」


 適当かよこの女神。

 てか神々にも娯楽みたいな人間味溢れるとこもあるんだな。そして俺は神々にとって異世界冒険物語というドキュメントをサービスする商品というわけか。なんかあまり心地よいものではないな。


「行く決心はついたかしら? じゃあそろそろ向こうの世界に送るわね。年齢、服装、種族は全て今のままよ。じゃあ行ってらっしゃい。」


 女神がそう言うと、俺の身体から強烈な光が溢れ、それと同時に急激な疲労感を感じ、俺は意識を手放した。





 崇星(しゅうと)が行ってしまった後の『クロノスの狭間』で、女神は少年のこれからの冒険の無事を祈っていた。


「そっちの世界を救えるのはあなたしかいないのよ 崇星(しゅうと)


 こうして東雲崇星(しののめしゅうと)の異世界生活の幕があけた。

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