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妄想怪談お伽話  作者: 狐道まひる
9/9

机の中の怪

 別に、怖いばかりが怪現象じゃない。

       by 宮本政幸

 これは、中学二年の時の話。



 中学二年の二学期に入ってすぐ、席替えがあった。

 前回は通路側の席だったけど、今回は窓際の前から三番目。まだ日差しがキツイのにこれはハズレだと、俺はげんなりしていた。


 前の席はあまり話したことのない女子だ。真面目な子で、友達と話しているのを聞くと(盗み聞きではない。断じて!)家がかなり近い場所にあるらしい。

 置き勉は一切せず、放課後の彼女の机の中はいつも空っぽになっていた。流石に辞書は手提げに入れて、机の横にあるフックに引っかけて置いていたが。


 テスト期間のある日。HRも終わって放課後になったタイミング。

 友達の家で一緒に勉強するらしく、その子は放課後そうそうに机の中を空にして席を立っていた。

 俺はといえば、自分の机突っ伏していた。


『おーい、政幸やーい。おっちょこちょいの政幸くんやーい』


 机の横に立つ俺のイマジナリーフレンド、マサが茶化した調子で話しかけてくる。

 まだ周囲にはクラスメイトが多いので、声には出さず会話をする。


 何?そんなに解答欄ずらして書いてたのが面白かったかこの鬼畜め!

『うん、あの焦りようは面白かった。まぁ、俺は出てこれなかったけど』


 イマジナリーフレンドは保持者の想像の産物だ。

 保持者が何かしらに集中している時はイマジナリーフレンドに割ける意識の余裕が無い為、マサが話しかけてくることはない。普通の人間が同時に二つのことを考えるのは難しいのと同じだ。


 落ち込んでいても仕方ない。明日もテストがあるのだから帰らなければ。気落ちした身体に言い聞かせて、唸りつつ顔を上げる、と。


 机の中の眼と、目があった。


「…………」


 前の席の机の中。置き勉をしない主義の主のおかげで空っぽなそこに。


 引き出しの一番奥に張り付くように、一対の眼があった。


 瞼がないのか瞬きこそしないけれど、何かを探すようにぎょろぎょろと動いている。もっとも、あの眼が周囲を見渡しても自身が引き出しの奥にいるせいで、俺の方向しかまともに見えない気がする。


 俺と目があってもこちらに興味がないのか、目玉側からすぐに逸らす。うむ、こっちが幽霊さんをガン無視するのはいつものことだけど、あちらさんに避けられるのは新鮮だ……!


『害はなさそうだし、ほっといて良いんじゃね?』

 それで良いよな?あ、でも……。

『どうした?……って、ああ……』

 あれ、前の席の女子が中に教科書とか入れたら潰れないか?





 後日、それとなーく前の席の子に「なんで置き勉しないの?」と訊いたところ。家が近いから以外に、彼女はこう言った。


「よくわかんないけど、時々教科書とかノートの下の方……机の奥側に入れた方が、赤く汚れちゃうの。それが嫌だから。でも引き出しの奥は汚れてないんだよね、なんでだろ?」


 結局、その眼が何者かもわからず(そもそも何者か調べてもいない)、俺は三年になってあの机自体を見ることもなくなった。

 今はきっと見も知らぬ後輩に使われているんだろうが、俺は少しだけ心配だった。



 目玉、今日も教科書たちに潰されて怪我してるのかな……と……。




         机の中の怪 終幕

 

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