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No.5 9~5の物語

作者: 夜行 千尋

出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第五四弾!

今回のお題は「箱」「バッドエンド」「山間」


9/20 お題発表

9/22 遊びに行く予定が潰れて急遽プロット作成に時間がさける

9/23 力み過ぎたと後悔しながら書きたいので書き始める

9/24 量が多いよと言いながら部分を泣く泣くカット

9/26 なんとか書き上げる+微修正


うん

ボリューム多すぎたね(苦笑)

その男は目の前に存在する魔族の王から、ある武器を奪い取り逃げ出した。

 息絶え行く仲間を見殺しに、その男は逃げ帰りながらその男の泣き叫ぶ声だけが情けなく尾をひいていた。

人類は魔族に敗北を記したのだ。







――それから20年後







「先生、元気にしてるかな?」


 5年前、12歳だった私たちはエスペランサ学院を出て魔王討伐のためのアイテムを手に入れてくることになった。

 20年前、先生とその仲間たち5人は、世界の存亡を脅かす魔族の王、魔王へ挑んだ。でも結果は悲惨だった。先生たち5人は神に等しい精霊に祝福を受けたというすごい人たちだった。でも魔王にはまるで歯が立たなかった。

 唯一生き残った先生は一人故郷へ戻り、魔王と戦える戦士を教育することを目的とした学院、エスペランサ学院を造った。私たちはその学院の生徒として、戦士として、新たに神に等しい精霊に祝福された5人だ。

 私たちは神話の時代の武器『ロストエイジ』の発動キーを手に入れ、肝心の『ロストエイジ』が保管されている学院へ戻る馬車へ乗り込んでいた。


「先生は元気さ。今でも俺たちより強いかもしれない人だぞ。クーン、お前より強いだろうしな」


 馬車の荷台で、先の先生を思い出して望郷の念に駆られた発言をした、栗毛色の髪をした男の子がクーン。「解析」の精霊の祝福を受け、私たちの誰よりも状況判断が得意だ。そして、その神髄は「完全に真似る」事ができるということ。聞いたことでも、見たことでも、なんでもだ。

 そして、その発言に嫌味で返した、クーンに向かい合う形で座っている、青い髪の男の子がジュード。「知識」の精霊の祝福を受け、あらゆる学問に精通し、神々の時代の言語をもってして術法を使える、私たちの強力な援護役だ。


「えぇー。それじゃ、僕ら要らなくない?」

「そんな弱気でどうする。あたしらにはこの『ロストエイジ』のキーが有る。きっと『ロストエイジ』なら、あたしらは先生より、魔王より強く戦えるさ」


 嫌味に不機嫌になったクーンの隣に座り、彼の脇を小突いた金髪の女の子がヤイダ。彼女は「技術」の精霊に祝福を受け、あらゆる武術をマスターしている。それどころか、彼女は自力で新しい流派を造りだした。もはや、中級魔族は敵ではなく、私たちの支援を受ければ上位魔族とも戦える。心強い戦士だ。ただ……彼女は私には冷たい。理由は女の私には分かる。


「でもでも、使い方がわかんないのでどう戦うっていうのさ。僕らが頑張って集めはしたけど、使えませんでしたじゃ話になんないしさぁあ?」

「それなら、その時考えればいいさ。使えなくてもオレたちは十分強いんだし。先生や他の生徒たちも一緒ならきっと魔王とだって戦えるさ」


 クーンの指摘に対して、馬車の運転座席から答えたのは、白い髪の男の子ロックだ。彼は「愛情」の精霊の祝福を受け、なんども空中分解しかけた私たちを繋ぎとめ、ここまで導いてくれたリーダーの様な人だ。そして……私個人の大切な人でもある。

 その暖かな性格と包容力なら、ヤイダが好きになるのは分かる気がする。私もまた、そんな彼に惹かれたのだから。


「ナナもそう思うだろう?」

「え? ええ、そうね。私たちならきっと……ううん、そうなるに決まってる。私は皆を信じてる」


 私は心からそう思った。運転座席、ロックの隣から荷の皆に振り向いてそう声をかける。ヤイダだけがそっぽを向いて手で返事をした。私はナナ。鳶色と緋色の目を持ち、「勇気」の精霊から祝福をされた者だ。私が一番足手まといだったから、誰より必死に頑張った。その努力に見合った結果を残してこれたとは思わないけれど……でもここまで来れた。もうじき、私たちの5年間に及んだ旅は終わる。


「ん? あれは……」


 ジュードが学院の有る山間を指さす。そこには黒より深い暗黒を湛えた暗雲が広がり稲光を放っていた。


「急ごう。オレたちの帰りを皆待ってる」


 ロックの振るう馬鞭に力が入った。



 暗雲が空を覆うその下、エスペランサ学院へ私たちは帰ってきた。5年前は多くの生徒が居た場所だったはず。しかし今は……


「よく帰りましたね。戦士たちよ」


 薄緑のストレートヘアの男性、私たちが先生と呼ぶ、20年以上前から魔族と戦い続けている戦士、エルフ先生だ。


「先生! 他の人々は? この雲はいったいなんなんです? オレたちは何をすれば!?」

「落ち着きなさいロック。今から説明します。しかし時間が有りません。まずは私の傍へ。『ロストエイジ』の発動キーを持って来てください」


 そう言って先生は私たちを先導する。どうやら、学院の地下室へ連れていかれるようだ。先生は私たちを導きながら言った。


「質問への答えがまだでしたね。あの暗雲は、魔王その物です」

「魔王その物!? ええ!? それじゃ、僕らはアレと戦うって事ですか? そんな無茶な!」

「クーン、先生の話の腰を折るな。『ロストエイジ』が有れば打開策が有る。だから俺たちは5年もかけて世界を巡ったんじゃないか」


 ジュードに半ば叱られ、クーンがしゅんとする。その様子を笑いながら窘めるのが、私の記憶の中の先生だった。けれど目の前にいる戦士エルフは、その会話を気にも留めず話を続ける。


「正しくは、魔王の魔力、その触手部分と言った方が正しいでしょう。あの雲に浸食された場所では人類は住めず、次第に生態系すら変貌し、魔族の住みよい土地、魔界へと変質します」


 そしてある扉の前で立ち止まり、服の胸元を開け首から下げている鍵を取り出して鍵を開ける。氷が割れるような音が何重にも響き、扉は壁へと消える。すると扉が有った壁に面している廊下そのものが、私たちを囲む壁が動き新たに部屋を構成する。最後に新たに部屋となったこの空間の中心に台座が床から伸び、その上に小さな手のひら大の箱が現れた。先生はその箱指さして言う。


「これが『ロストエイジ』失われた時代と称されたこのアイテムは、魔法具などではありません。いうなれば……神の遺物『神具』とでも呼べるでしょう。その力はすさまじく物事の通りすら書き換えると言われています……これがほぼ唯一、魔王に対抗できる有力な武器なのです」


 私たちは先生の指示の下、発動キーを組み立てる。ここに来るまで何ともならなかったガラクタ辺が磁石に吸い寄せられるように一つの小さな鉄片へと姿を変えた。先生は箱から私たちを遠ざけ、その鉄片を私たちの手からそっと取り上げる。その行動は何処か寂しげで、先生の表情は何かをこらえていることに私は気づいた。


「……先生?」

「あれ? 先生、なんでそんな悲しそうにしてんの?」


 クーンが先生が堪えているのが悲しみだと見抜いた。私も嫌な予感がした。でももう遅かった。発動キーは箱に吸い込まれ、あたりに光を放ち始める。その光は先生と私たちの間に線を引き、私たちを弾き飛ばした。


「先生! どういう……説明してください!」


 ジュードが光の壁を叩いて先生に抗議する。皆一様に先生に事情の説明を求めた。先生は静かに首を振って皆を制止し、それから落ち着きを払おうと努力する先生の震えた声が私たちに聞こえ始める。


「黙っていて申し訳ありません。『ロストエイジ』は発動に犠牲を伴う可能性がある物なのです。私たち“先の魔王と戦い逃げ帰った者”はそれを知っていました。知っていて……黙っていました。犠牲があると知れば、あなたたちはキーを探し出すのを止めてしまう。そう思ったからです」


 私たちは光の壁を何とかしようと躍起になった。体当たり、拳、魔法、剣、様々な方法を試そうともビクともしない。先生はそれを静かに見守り、私たちが疲れ、あるいは無駄だと気付いたころ、また話し始める。


「私は君たちを育てて来ました。ですがそれは殺す為ではありません。魔王に勝つためです。全人類の悲願をあなた達に託すためです」


 先生は徐々に震え声になっていき、そして、その袖から赤い雫が垂れはじめるのをクーンが指摘する。私たちは無駄と分かって居ながら光の壁をまた叩く。今度は私たちを無視して先生は話を止めず、自分の最後へ向かって行動していく。


「私は逃げ帰ってしまった。あの時逃げてしまった事がなによりの後悔だった。あのまま終わりを迎えられないと思った。だから、私は『解析』の祝福の力を活用し、私の友が磨いたすべての技を伝授した。……今度こそ、良き終わりを……」


 だが、唐突に先生はハッとし、私たちに振り返る。その表情は痛々しく、その姿は見るに堪えなかった。血だらけになりながら先生は最後の言葉を私たちに言った。


「壁から離れなさい! 独りずつしか入ってはいけない!」


 その一言を絞り出すと、先生は膝から崩れ落ちた。そして……そのまま動かなくなった。


「何? ど、いう……こと? 先生?」


 最初に動いたのはクーンだった。よろよろと先生の元へ歩み寄る。だがそれをジュードとヤイダが肩を掴んで止める。ヤイダがクーンに言う。


「クーン。あんたは『ロストエイジ』に近づくな。……チーム戦だ」

「チーム戦!? 頭おかしいんじゃない? 先生が、先生が! 僕らだって死ぬかもしんない! なのにこんなの!」


 クーンが食って掛かった。ジュードがその脇をすり抜け、箱に近づく。また箱の周りに光の壁ができ、私たちとの間を隔てる。


「悪いな、皆。俺からいこう。もしこいつを持っていけたら魔王との戦闘だ。肉体的に最弱な奴はここら辺が良い扱いだと判断する」

「そんな! ジュード!」

「ナナ、お前の役割を果たせ。俺は俺の役割を果たす。『知識』の祝福を持って、こいつの扱い方を教えておいてやるよ」


 ジュードを何とかしようとした時、私をロックが引き留めた。ロックはとても苦しそうに、私を引き戻した。

 ジュードは泣きながら座り込むクーンに怒鳴りつける。


「いつまでそうしてんだ! 『解析』の出番だろうが」

「……酷い役割だよね、こんなの」


 私は自然とクーンの頭を抱き寄せ、頭を撫でた。私たち5人は何が有ろうと「解析」のクーンだけは生かすように教えられてきたからだ。先生がそうであったように「解析」の役割を持つ者が生きていれば、また何年後かに魔族へ挑める。「解析」の役割が伝達役となり、後世に業を教える為、クーンはどんな時でも私たちの間で、最前線で庇われる役割を担ってきた。そして、今からも……


「……ナナ良いよ。僕に出来ることをする」

「うん、お願いね」


 クーンはジュードと箱の方向へ向き直る。ジュードは箱と自身の様子が分かるように手元を見せながら箱に触り始める。

 箱、神具『ロストエイジ』は純白の輝きを放ちながら形が変わっていく。ジュードはその構造を見ながら触っていく。トラップらしい構造もあるらしく、それを回避する方法を私たちに見せながら進んでいく。だが……

 突如箱は黒い光を放ち、その黒い光がジュードを追いかける。黒光に照らされたジュードの体は血まみれになっていく。


「ジュード! ≪風の足運び(エアリアルステップ)≫で回避だ!」


 ロックの助言にジュードは必死に回避しながら答える。


「いや……それは、無理だ。≪風の足運び(エアリアルステップ)≫は広い場所でしか……くそっ」

「でもそのままじゃあ!」


 必死に回避しながらも、ジュードは箱の扱いを解析していく。だが唐突に足を止める。黒い光に照らされジュードの体が赤く染まっていく。

 ジュードを心配する私たちの声に、ジュードは背中を向けたまま、


「今なら、言える気が……する……俺は、お前らと、一緒に……良かっ……」


 光は収まり壁が消える。ジュードはそのまま前のめりに倒れた。クーンはその様子を一部始終泣きながら見ていた。



 私たちは腫れた目をしたクーンからどうすべきかアドバイスを受けていた。そんな時、地響きに似た音が響き、地下室がかすかに揺れ始める。


「もう時間はなさそうだな」


 ロックがキューブに近づいていく。私はロックを止めようとした。けれど、ロックの性格を考えれば、彼がこれ以上の犠牲に耐えられるような性格じゃないことを私は良く知っている。

 私はロックを見送ろうとした。その時、ロックの背後からヤイダが近寄り、ロックの肩を叩く。振り返ったロックの唇をヤイダは奪った。呆然とする私たちを他所に、その一瞬の隙にヤイダが箱に近寄り壁を作る。


「悪いな、ナナ。気づいてたろう? あたしもロックが好きだってこと」


 ヤイダは微笑みながら続ける。


「でも愛する男を見送るなんざ、いくら相手のことを思ってもしちゃいけねぇよ。特に……命に係わるならなおの事だ」

「ヤイダ、私……」

「言うなよ。今のあたしは、友人の恋人の唇を、その友人の目の前で奪ったいけ好かない女なんだからな。その方が、幾分か……見送るのがマシだろ?」


 ヤイダはそういって笑う。

 ロックは目を伏せて何も言うことができずに居る。私を想ってなのか、ヤイダの想いを考えてなのか……


「あたしはさ。ナナほど前向きには成れない。ナナほど可愛くも成れない。……けどな、あたしにだってあんたを守れるんだって事を証明させてくれよ」


 そういって、ヤイダはジュードと同じように扱い、箱から黒い光が出るところまでたどり着いた。「技術」」の祝福を受けたヤイダは黒光をギリギリで回避、更に箱を小突き、形状を変化させていく。箱は縦に伸び、まるで剣のような姿に変わっていく。だが見る見るうちにヤイダは怪我を負っていく。私たちは見守るしかできなかった。そして、私はヤイダの気持ちを汲んで、なお俯いているロックを押し出した。

 ロックは私の方を見たが、私はロックの顔を見れずに顔をそらした。お願い……どうか。


「ヤイダ、使え!」


 そう言い、ロックは召喚魔法を使う。それは彼がいつも愛用する大盾だ。それを壁の内部に投げ込む。召喚した物だから壁を通れるのか、それともロックの「愛情」の精霊の祝福故なのか、ヤイダの前に盾が割り込み黒光を防ぐ。ヤイダは弾除けとして盾を使いながら箱を小突いていく。そして、次第に光は金色に輝き……

 黒い光が止んだ後、ヤイダは大盾を引きずりながら戻ってきた。そして、そのまま、無言でロックの胸に倒れ込んだ。いや……もう……ヤイダは満足そうに微笑んでいた。


「もう沢山だ……」


 クーンではなく、ロックがそうぼやいたのに私は驚いた。ロックは膝を折って続ける。


「なんで、先生やジュード、ヤイダが死ななきゃならなかった。こんなことのために、オレたちは5年も旅してきたんじゃないだろう……」


 私はロックを励まそうとした。でも、彼の腕の中で眠るヤイダを見て、私は何も言えなくなってしまった。私もまた、彼の為に命を捨てられるだろうか? 私は……。


「なんだよ……何してるんだよ」


 沈黙を破ったのは、クーンだった。ロックの胸元を掴み、無理やり立ち上がらせる。


「今も魔族との争いで亡くなる人が居る。それをこの5年で見て来たじゃないか! ジュードもヤイダも先生も、僕らに託して逝ったんじゃないのかよ! 僕らがこんなところでくじけてる時間なんて有るわけないだろう!」

「クーン……けどオレは……」

「それがどうした! ヤイダが生かしたのは、ロック、君だけじゃないんだぞ! どういう気持ちでそうしたか、君は本当に分からないのか!」


 クーンは、今日はとてもよく泣いていた。今もまた泣きながら怒っている。ロックはクーンの手を離し、私に向きなおった。

 私は、ロックの胸に飛び込んだ。きっとこれが……


「ナナ。聞いてほしい」


 私はロックの体温を感じながら静かに頷いた。本当はそんなこと聞きたくなんてなかった。


「君は生きなきゃだめだ。君はクーンと一緒に新しく次の世代を担ってくれ。オレは……」


 ロックは私の肩を抱いて私の目を見て言った。潤むその瞳を、私は生涯忘れ得ないだろう。


「オレが君を守る。絶対に、必ず……君たちを守って見せる」


 そういって、ロックは私と唇を重ねた。ロックは、私の内緒ごとにもう気づいていたようだ。なら、私は……何としても生き抜かなければならなくなってしまった。

 その別れを促すように、地下室全体は軋みを上げ、壁は目に見える速度で紫色に苔むしてくる。ここも魔界に変わっていく。もう、時間は無い。

 ロックは力強く、今一度私を抱きしめた。


「いってくる」


 私は去ろうとするロックの背中に抱き付いた。そして、私の理性が引き離すままに離れ、彼に言う。


「いってらっしゃい」


 ロックは振り返らずに箱――今では剣の形状――に近づき、それを手に取る。

それとほぼ同時だったろうか。地下室の天井が剥がされ宙に舞っていく。その隙間から暗黒の雲に覆われた空が見える。私たちが助かるには、もう彼にかけるしか『ロストエイジ』に賭けるしかなくなってしまった。

 よく見ると『ロストエイジ』はロックの手を棘で貫き、外せないようになっていた。そして、ロックもまた、鮮血に彩られていく。その棘が彼の体を覆い始める。彼はその痛々しい腕を振り上げ、そして高らかに宣言した。


「神具『ロストエイジ』よ! オレの願いを聞き入れろ! オレの意のままに因果を書き換えろ!」


 地下室の天井は無くなり、暗雲の空から多数の魔族がこっちに来るのが分かる。クーンが私の傍に来て、私を守ろうとする。ロックは更に棘に覆われ、その体のほとんどを飲み込まれている。更に、彼は己の願いを口にする。


「オレの、大事な人を、大事なものをこれ以上魔族のせいで奪われることの無いように、オレの命を使って因果に書き込め!」


 ロックの体は棘に覆われ、甲高い金属音と共に、私たちの視界は金色こんじきに染まった。魔族、暗雲を払いのけ、私とクーンを残して世界は白色はくしょくへ変わった。



 私が目を覚ましたのはそれから一日後の事らしい。その間クーンは私の面倒を見てくれたらしい。クーンが言うには、あの後気が付けば瓦礫の下で、外に出てみると暗雲は完全に晴れかなり遠方まで引き上げたという。私が寝ている間にヤイダ、ジュード、エルフ先生の遺体を掘り出し埋めたという。けれどロックの遺体は見つからず……


「こんなの……どうすりゃいいんだろうね。……とんだバッドエンドだよねぇ」


 箱、この箱さえなければ……でも箱が有ったから、今私は生きている。

 私はかすかにお腹に感じる温かみに答えるように、決心した。私は……


「決まってるじゃない。バッドエンドなんかで終わらせない。次の世代へ継承するの。大丈夫。二番目の物語は、大きな物語では山間のシナリオって決まってるのよ。きっと次は魔王だって目じゃないわ。いいえ、そうして見せる」


 ほぼ更地になった学院後、そして出来たばかりの墓に、残された小さな箱に、私は誓った。






――12年後


「ウーノ、遅れるぞ。俺もう行くからな」

「ええ! 待ってよドゥーエ兄さん!」


 ワタシ、ウーノはエスペランサ学院の理事長の娘だ。双子の兄ドゥーエ兄さんと共に(今日うまくいけば)魔王討伐の旅に出るために、神に等しき精霊から祝福を受ける。

 たとえ受けなくても、ワタシは戦うつもりだ。なにせ、白い髪に鳶色と緋色の瞳、これは母様かあさま父様とうさまの加護の証だ。魔族は決して、ワタシたち双子を傷つけることができない。これほど魔王討伐に適した戦士は居るはずがないからだ。


「ウーノ! 何時までかかってるんだよ」

「だって、父様とおさまの御前なのよ。少しぐらいおめかししても……ああ、兄さん!」

「な、なんだよ……」

「またそんなだらしない恰好をして!」

「べ、別に良いだろう、儀式の間にせいぜい母様かあさまとクーン先生ぐらいだろうが」


 そうなのです。父様とおさまはワタシたちを守るために命を神具に吸い取られてしまったのだそうです。本当はその神具は片づけておくべきらしいのですが、今回の儀式には特別に母様かあさまが持って来てくれるそうなのです。


「あと父様とうさまも、でしょう?」

「……ああ、分かったよ。あと5分で出るからな」


 ワタシは、ドゥーエ兄さんと一緒に、父様とおさまの大盾を持って儀式の間へと向かうのでした。

サクサク死んでいくのは今回の最初のプロットからそうでした。

そして最後の流れまでほぼ初期案です。


唯一心残りは8000字超えちゃった事……orz


ほんとはジュードにも死を悼む時間があったんだじぇ……


更にその後クーンがエルフ先生と同じ立場になったとか

色々書きたい……

ってか良いなぁこの魔族の力では死なない双子の英雄

その後がちょっと書きたいと思うので

余裕が有ったら上げるかもです


まぁ

もちろんその時は魔族以外の敵を出すんですけどねw


ここまでお読みいただきありがとうございました

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