プロローグ
『勇者』と『魔王』。
それは世界において様々な意味を持つだろう。
そしてある名もない魔法世界も、『勇者』と『魔王』という存在が居る。
その世界にはたった一つの島しか存在しない。
そこを分断するかのように人間と魔族の領土がきっちり分かれている。
人間と魔族は長い歴史の中で、昔から争いあっていた。
歴史の中で二つの種族の全面戦争も多く起こった。
その二つの種族の代表が『勇者』と『魔王』だった。
人間世界を導くとされる『勇者』。
魔族のトップである王『魔王』。
それは世界にとって重要な役割をしている。
いつしか終わらない全面戦争にむなしさを覚えた彼らは、『勇者』と『魔王』だけを殺し合わせる事を決定する。
『聖戦』と呼ばれるそれは、十五年に一度行われる。
そして勝った方の種族がその後、十五年間優位に立てる。
ただし『聖戦』とは別に『勇者』と『魔王』は殺しあうものである。
人間にとって『魔王』は敵である。魔族にとって『勇者』は敵である。
隙あらば『聖戦』関係なしに、殺しあうものだ。
時が立てばたつほど相手は強くなる。それならばさっさと殺してしまおうという考えの『勇者』と『魔王』は多い。
『勇者』と『魔王』は殺し合いをするほどに、敵対している。
それが当たり前だった。
ただし、今代の『勇者』と『魔王』は……、
「なぁ、何でリトと殺しあわなきゃなんねーの?」
「うん。だよねー。僕ら親友だしさー」
仲良しだった。
これは殺し合いを強要されている『勇者』と『魔王』が境遇にうんざりして逃亡(はたからみれば駆け落ち)計画を練る事から始まる物語である。