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依頼

 数分後、みつは首をひねりながらにらめっこしていた本から顔をあげ、鷹也を見た。


「キミの弟、優斗ゆうとだったけ」

「あ、ああ」

「変なもの、たとえば幽霊が見えるとか、予知夢を見たりとか、する?」


 そのみつの質問にも、すぐに鷹也は頭を降った。が、少し考えた後、おずおずと口にした。


「今まで、俺に見えないものを見たり聞いたり、っていうのは無い、と思う。だけど、カミカクシに遭った後、どこに居たんだ、何してたんだって聞いたら、凄く立派なお家で白くて綺麗な男の人に遊んでもらってた、って。そこで蓑虫みたいな格好をした小さい子とか、一つ目の子とか、変な子がいっぱいいて遊んでた、って言うんだ」


 自身なさげに言う鷹也。その言葉に、みつは何かを考えているように頬に人差し指を当てて小首を傾げ、ふぅんと言った。


「キミの弟ね、特に怪しいものに好かれやすいとか、取られやすいって事は無い子なんだよ。だから、本来ならそういった事、に遭遇する確立も低いしそういう変なものを見たりする事もないはず、なんだよねえ。まあ、そういったのに縁が出来てたら知らないけど」


 みつは、自分の考えをまとめるように話すが、鷹也はちんぷんかんぷんだろう。私もそうだし。

 鷹也が何とも言えない顔をしているのに気づいたのか、みつは肩をすくめて言った。


「本来なら、そんな事に何回も遭う子じゃないんだよ、って事。だから、おかしい。探してみても良いけど、人間の分野なら私は門外漢だし、七つまではカミの子っていうし、もし本当にカミに取られてたら、私じゃ取り返せない」


 みつの目が細められ、淵深い瞳が鷹也をとらえる。その目は少し恐ろしく、正面から見据えられた鷹也は、うっとなった。得体の知れない怖さ、というのは存在するのだ。どうやらそれを体感してしまったようだ。


「どうする?」


 みつは、どこかしら楽しそうに呟いた。言葉の意味はわからないが、不穏な内容だというのはわかる。異様なみつの雰囲気に呑まれていたが、鷹也はそれでも、


「探して、ほしい。どこにいるのか、無事なのかっ」


 意思は、変わらないらしい。こんな変な探偵でも、藁でも縋る思いというのか、頼めるのなら頼みたいのだろう。その言葉を聞いて、みつは軽く頷いた。


「いいよ。探してみてあげる。けど、お金は探し出せた後でいいよ。私の手に負えない所にいたら、私何もしないから~」


 みつの言葉をどう受け止めたのかわからないが、鷹也はそれでも少し安心したように頷いた。

 とりあえず、その弟、優斗といったか、が神隠しにあった時に来ていた服を何か持ってきて欲しいとお願いし、今日の所は帰ってもらった。




 外は既に暗闇に覆われ、夜の帳が降りていた。

 案外、長いこと話していたようだ。結構大きい子だったが、無事に帰れただろうか。少し心配になり窓の外を覗くと、街灯が無いともう何m先も見えなくなっていた。


「心配~?」


 そんな私の行動を見て、自分の机に戻っていたみつが声をかけた。


「ええ。弟さんもだけど、あの子も何だか心配。張り詰めてるっていうか。何か事情があるんだろうけれど」


 窓の外を見るのをやめ、振り返って探偵先生を見ると、もう既にあのくだらない雑誌をつまらなさそうに読んでいた。いつも思うのだが、そんなにつまらなさそうに読むのなら、定期購読やめれば良いのに。


「あんまり首突っ込むと、面倒だよ~。あの子達は早くに苦労する相が出てるし~。苦労はしてるんだろうね~」


 雑誌から顔を上げずに、みつが言った。あの時お金をもらわなかったのは、やっぱりみつなりの優しさだったのだろうか。いつもなら、手付け金をもらい依頼人の覚悟を見て、終わった後に報酬として残りを支払ってもらう、というパターンだったから、不思議には思っていたのだ。


「しかも、本当に神隠しにあってたら、私にはどうする事もできないからねえ。カミ様ってのは、気まぐれだ~」

「うか様はそんな事しないよっ」


 みつの言葉に被るように、強い否定の声がした。眠っていたとばかり思っていた、玉葉くんだ。神様の話題で、聞き捨てならなかったのだろう。


「はいはい」

「本当だよっ」

「はいはい」


 玉葉くんの頬がぷぅっと膨らむ。適当にあしらっているみつは、雑誌から目すらあげない。何読んでるのかしら。とふと気になって覗き込んだら、廃神社みたいな写真が上段にあり、下段に何か体験談みたいなものが書かれているようだった。全く、何がおもしろいのやら。


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