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不審者との出会い



 十三夜の月照らす夜道で、不審者に出会った。




 その日は、ついてない日だった。お茶はこぼすし、こぼしたお茶で書類はダメになるし、落ち込んだ私をなぐさめようとしてくれた玉葉くんに気づかずスルーしてしまってしょんぼりさせてしまったし(みつが気づいて教えてくれたので、フォローしたが)とにかく、今日は何だかついてない日だったのだ。

 極めつけが、これか。


「あのー、お嬢さん。道を教えて欲しいのですが」


 玉葉くんを元気付けるために、最近お気に入りのテレビ(録画)を見ていたら、こんな遅い時間になってしまった。

 折りしも、満月まであと数日。月が明るく帰り道を照らし、電灯もあるにはあるので道が見えない程ではない。が、さえた月の光は人の顔すらわからなくさせる。

 そんな時に、男性の声を聞いて振り返ってしまったのは、私の落ち度かもしれない。でも、丁寧だし落ち着いた声だったから、つい振り向いてしまったのも、仕方ないと思いたい。


「はい? ……!」

「あれ、何かおかしいですか?」


 私が振り返った先にいたのは、真っ黒い服を着た、ゆるふわの金髪をもつ、病的なまでに肌の白い美しい男だった。電灯に照らされず月の光だけを受けたその肌の白さは神々しくもあり、だが目の、目の赤さが、白い光に浮く。それは、まるで、あの哀しい女性の瞳のよう……。


「おかしいなあ。今の言葉であってるはずなんだけど。そんなに警戒しないでくださいよ、お嬢さん」


 男が目を細め笑う。次の瞬間には、赤かった瞳は、暗闇では認識できない色になっていた。

 私はじりじりと、後ずさる。


「あっ、もしかして今、目見ちゃった?」


 男が、暗闇でもわかるようにうっすら笑った。さらに背を向けないように後ずさる。熊に会ったら目をそらさず後ずさるのが正しい逃げ方って誰かが言ってたしっ。


「だったらおかしいなあ。なんで魅了が効かないんだろ?」


 男の話し方が、フランクになっている。私との力の優位さのせいか、それとも地なのか。とりあえず、警戒心はマックスで、いつでも隙を見て逃げられるよう心がける。怖いし。心の奥底が、恐怖で満たされる。

 首をかしげていた男が、私の方をまた見た。


「とりあえず、化け物とかって言われるの傷つくから、言わないでくれるとありがたいな。それで、○○までの道を……」


 もぅマジムリ。逃げょ。


 私は男に背を向けダッシュでそこを離れた。

 少し先に交番があった筈だから、そこまでとりあえず走った。無我夢中で走った。

 走りきった先に、明りが見えた。交番だ。助かったと思いながら、交番に駆け込む。


 ガラッと勢いよく開いた扉に、中に居た人が驚いたように私を見た。紺の警察の制服を着た男性二人に、息を整えながら、事情を説明する。

 おぼつかない説明だったが、不審者、男性、というキーワードで納得してくれたらしい。一人が外に出て、一人が私の話しを聞いてくれた。まあ、話す事といっても、妖しい目の事なんて話せないから、変な格好の男性がウロウロしているとごまかしておいた。

 そして、話しながらふと、自分でも不思議に思った。


 なんで、そんなに、あの男性を、怖がっていたのだろう。


 客観的に考えたら、話しかけられた時点で逃げてるから、変な事されそうになったわけではない。あの、赤い目も、鬼の赤い目とは違いおどろおどろしい怖さは感じなかったように思う。でも、怖かったのだ。シチュエーションもあるかもしれないが、何か胸の奥底から感じる違和感と、意味のわからない恐怖。そう感じさせるものが、あの白い肌の男性にはあった。だから、逃げた。それは、この警察の人達でなんとなるようなものではないのかもしれないけれど、とにかく誰かの、人の側に居たくなった。


 とりあえず、見回りに行ってくれた警官が戻って来た。私が言った場所には、もう誰も居なかったらしい。だが、用心のために家まで送ってくれた。お礼を言い、家に帰る。

 家にさえ入れば、もう平気だ。

 人ならざるものだったから、怖かったのだろうか。明日、みつにそれとなく聞いてみよう。

 そう思うと、ちょっと安心して眠る事が出来た。


タイトルで中身をばらしていく今章。よろしくお願いしますw

でも実際、夜道で知らない男性に声かけられたら普通にびびると思う今日この頃。

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