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天泣

「ののか、おれ……っ」


 ののかの言葉に、ようやく時雨が頷きかけた時、時雨の身体から白い霧が立ち込めはじめた。


「時雨っ」

「時雨さんっ」


 二人が慌てて霧を押しとどめようと手を伸ばすが、どんどん身体から霧は立ち上り、それと同時に時雨の身体が、透けていく。存在が、薄らいでいく。


「ああ、ここまでなのか。……ののか、俺と友達になってくれて、ありがとう」


 時雨は、慌てふためく二人を見て、ふっと微笑んだ。


「玉葉も……すまなかった。お前らの事、出来損ないって言ったの、謝るよ。本当は、ののかの言うとおり、お前と仲良くなるの、怖かったんだ。俺が、出来損ないだって認めるようで。でも父親が地狐(ちこ)なのに力があるお前は、白い目で見られても誰にでも優しくできるお前は、凄いやつだと思ってた」

「いい、いいよっ。それよりキミ存在がっ!」

「ああ。もう、限界なんだろう、わかってる。ここまで堕ちたのに、最後に、こんなに話しができて、良かった」


 もう、微笑む時雨の身体越しに床が見える。二人の手も、着物をすり抜け地面につく。


「や、やだっ。やだよ! せっかく、せっかく友達になれたのにっ」

「そうだよっ。これからじゃないか!」


 二人の泣きそうな顔に、時雨は泣きそうな笑顔になった。


「俺ももっと話したかったけど……。ありがとう、二人とも。元気でな」


 そう言うと、時雨は上、天井を向いた。いや、天井より遥か上、空の彼方を。


「申し訳ありません、うか様。俺は、ここで巡ります」


 そう言い目を閉じると、時雨の身体は完全に透き通り、白い靄となり上の方へ昇っていった。

 押しとどめようとする二人の手をすり抜けてそれは、どこまでも、どこまでも上へ。


 天井を抜け


 遥か空へ。







 ざぁー…っと、雨が降る音がし始めた。

 静かな雨音が部屋に満ち、二人の嗚咽を包み込む。


 二人は知らない。


 外は晴れ、それでも雨が降っている事を。

 その雨の事を、天泣てんきゅうと、いうことも。






タイトル回収。

天が泣くと、雨が降る

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