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意外でもないおわり




 ただの、いつもあるような除霊案件だと思っていたら、意外な展開になった今回。

 もう一つ、意外な展開になった。

 どうやら、あのカエデが証拠になって、容疑者を逮捕する事が出来たのだそうだ。もとから目をつけていはいたが、証拠が無く捕まえられなかったこの容疑者だが、過去彼が住んでいた場所から見つかった、被害届の出ている人形が見つかるというのは、この上ない状況証拠となるらしい。

 カエデちゃんの一件を手がかりに、余罪を調べているという。





「いやあ。まさかこんな事で、手柄になってしまうとはねえ」


 枝野さんは、その報告をするためにわざわざ事務所に寄ってくれた。手土産も持ってきてくれた。

 私の出したお茶を飲みながら、そう呟く枝野さんは、嬉しそうだが複雑な顔をしていた。


「カエデは、物的証拠だからもうしばらく署に置かれるけれど、もう少ししたら元の持ち主に戻すよ。旧家の大きな御家でねえ、カエデが戻ってくると聞いたら、それは嬉しそうにしていたよ」

「良かったです、大事にされていたようですし」

「カエデとは、署内で話した?」


 枝野さんの前で、だらりと座っていたみつが聞いた。枝野さんはそんな様子を気にする事なく、小さく頷いた。


「少しだけね。ただ、あの家から離れると、だんだん薄くなっていたよ。今ではもう、眠っているようで話しかけても、応えてくれない」

「そう。あの家自体にも、未練があったんだね。まあでも、眠っているならその方が良いよ。物は物のまま、大事にされるのが本望だろう」

「そうかもしれないね」


 枝野さんは穏やかに笑って、また一口お茶を啜った。

 聞いてみても、良いのだろうか。ちょっとためらった後、意を決して聞いてみた。


「あの、奥様とはその後、大丈夫でした…?」


 私の言葉に、枝野さんは静かに湯のみをテーブルの上に戻した。


「うん……。不破さんとカエデに言われた事をかいつまんで話したら、やっぱり信じてもらえなかったんだけどね。言われた通り探したら、手紙があったんだよ。それを読んで妻も、時間はかかったが、わかってくれたようでね。今は、七回忌の準備をしているよ」

「そうですか……良かったです。枝野さんも、奥様も」


 私の言葉に、枝野さんは微笑んだ。それは、前に見たような力ない笑顔ではなく、色々飲み込んだ人の微笑みに見えた。よかった、きっと、枝野さん達は良くなる。そんな予感を感じさせる、微笑みだった。


「私、水子供養は出来ないから、枝野さん達自身がふっきれてくれてよかったよ」


 みつが、場の雰囲気を変えようとするがごとく、わざと明るく言った。枝野さんもそれに気づいたのか、同じく軽い調子で返す。


「おや、そうなのかね。フジは出来るようだがね」

「フジさんはねー。私とベクトルが違うからー。フジさんは凄いんだよ。フジさんに任せてたら安心だよっ」


 みつの、異様なフジさん押しに、枝野さんは面白そうに、だが苦笑していた。


「さて」


 事務所の時計を見て、枝野さんが立ち上がった。


「そろそろ、おいとましようかね」


 懐から茶封筒を取出し、テーブルの上に置く。


「今回は、本当に世話になったね。これ、少ないが謝礼だよ。とっておいてくれ」


 みつは、ありがとう、と言って素直にそれを受け取った。


「もし、また何かあったら、ご相談ください。……こんどは柿森さんを通さず、直接に」


 みつの、ちょっと不機嫌顔に、枝野さんは今度こそ笑ったのだった。


「そうさせてもらうよ。それじゃあ」


 みつは右手をひらひらと振り、私はお辞儀をして枝野さんを見送った。


 カラン コロン


 鐘の音がして、扉が閉まる。

 頭をあげ、扉が閉まる瞬間、枝野さんの軽やかな足取りが見えた。




 おわり

















オマケ

数日後

「やあ、みつ坊。依頼を解決したみたいだね」

あいかわらず突然訪ねてきたのは、柿森さんだった。みつが露骨に嫌そうな顔をする。

「ええ。まあ」

「そうかそうか、相変わらず優秀だな。どうだい、やっぱりうちで働かないかい、神凪さんと一緒に」

「やだ」

「つれないねえ」

「ぜったいにやだ」

 みつが唯一柿森さんに否定できるのがその案件だけというのをわかっていながら、話しをふる柿森さんは、サドッ気があると思いました。

「そうだ、キミ達の活躍が名前は出てないけど新聞にでてるよ。ほら」

そう言って柿森さんが取り出したのは、全国新聞の、小さな記事。そこには、あのカエデ人形が白黒で写真に写っており、お手柄人形、犯人逮捕の決め手に! と書かれていた。

「枝野さんは何も言ってませんでしたね、新聞の事。ねえ、先生」

私がみつに話をふると、柿森さんが面白そうに笑っていた。

「それはそうさ。この情報を新聞社にリークしたの、私だからね。枝野は何も知らないよ」

「えっ」

柿森さん、友達にもお構いなしなのか、凄いな。

「そうだ、もう一つ面白い事があったんだった。この新聞の写真を見てね、窃盗犯の家族が数年前ぶりに会いに来たんだと。泣かせるねぇ」

柿森さんは、面白そうに泣く真似をした。そんな柿森さんをうわぁ、という目でみつは見ていた。

あの(カエデ)は、どこまでも優しい人形なんだなと、青く晴れ渡る空を見ながら思った。

事務所内では、まだ柿森さんがみつをイジって遊んでいた。





今度こそ終わり

ここまで読んでくださって、ありがとうございました! 思った以上におっさんが出せなくてしょんぼりです…。主役をまたしても人外にとられたぐぬぬ。

枝野さんとこの窃盗犯には共通点があって、それがカエデで交わるみたいな話にしようとしましたがスキルが足りませんでした!ふんわり感じとって貰えると嬉しいです!

ありがとうございました!次も良かったらよろしくお願いします。

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