おいとま
「ぎゃあ! 目が、目があああ」
が、そんな感動も何もかもぶち壊しの悲鳴が後方から聞えてくる。あれは我らが探偵先生だろう。どこかで聞いたようなせりふを口にして、目を覆って床に倒れていた。
「先生、示しがつきませんよ」
「ひどいよかおちゃぁん。みつが直射日光苦手なの知ってるでしょぉお」
いまだ目を両手で覆いながら、探偵先生は泣き言を言う。
「それは申し訳ありませんでした。良かれと思いまして」
そう謝りながら、みつの手をとる。みつは、しぶしぶ目から手を離し私の手を取り、目をしぱしぱさせていた。本当に眩しいらしい。ごめんってば。
瀬尾も、眩しそうに外を見ていた。
「本当に、日の光というのは、良いものですね」
瀬尾が、感慨深そうに呟く。それに、やえかも深く頷いていた。
「さて。黒幕を探さないとねー。こんな素人に、ここまでさせたヤツふっ飛ばさないと示しがつかないもの。指環を作った張本人、ってのもそいつになると思うし、瀬尾の依頼もこなせて一石二鳥だよね。ねえ、あの人、の手がかりはないの?」
直射日光ショックから立ち直ったみつが、伸びをしながらゆるくやえかに聞いた。とりあえずの脅威がさり、いつも通りのみつに戻りつつあるようだ。不穏な言葉は聞えなかった事にしよう。
やえかは、みつの言葉に少し考えこんだあと、机の引き出しから小さい紙を取り出した。その名刺のような紙には、電話番号だけが書かれていた。
「私が紹介してもらった時は、とりあえずこの電話番号にかけてくれって。で、電話したら知らない男の人がでて、それでやり方を教えてくれて。あと、これももらいました」
そう言って、さらに引き出しの奥から出してきたのは、五寸釘。何の変哲もない、五寸釘。
「藁人形とセットでもらったんだけど、藁人形は使っちゃったから……」
「まあ、手がかりにはなるか。その道のプロっぽいなあ、やだやだ」
みつは、やえかから名刺と五寸釘を受け取ると、自身の小さなポーチに乱暴に入れた。
「さて、それじゃ私達はこれでお暇しようか。長居しても仕方ないし」
みつが、扉の方に向い歩き出した。相変わらずあっさりしているなあ。まあ、私も言う事ないし、みつの後に続いた。瀬尾も頷き、黙って後に続く。
「あ、あの! ありがとうございました! 私、かならず謝りに行きます! 許してもらえなくても、私のしたことは、間違ってたから!」
出て行く私達の後ろに向かって、いや、これは多分、瀬尾に向かって、やえかが力強く宣言した。私がその言葉に振り向くと、すぐ後ろの瀬尾は少し嬉しそうに微笑んで、
「うまくいくよう、御祈りしております」
そう言って、もう二度と振り返らず、部屋を出た。
やえかは、その言葉にまた泣きそうになりながら、はい! と何度も頷いていた。
「あ」
階段を降り、玄関まで戻って来た時、みつが不意に声を上げた。
あ。そうか。鍵、勝手に空けて……
「ヤバ! 鍵、壊れてるかも。急いで逃げよう、かおちゃんっ」
最後までしまらない探偵先生である。
どうしてもみつはギャグっぽくしたくなるカルマwあのドアのカギは、多分もう二度と閉まらないのでしょう…w




