依頼内容
「私が妻の行動に気づいたのは、つい最近の事なんです。
私達は結婚して十年になりますが、上手くやってる方だと思っていました。特に大きな夫婦喧嘩もなく、妻はずっと一緒にいたいと言ってくれて、私も同じ気持ちでしたから。
でもある日の夜中に、ふと目が覚めると妻がベッドにおらず、まあトイレかと思って気にせずまた寝たのですが、明け方妻にその事を問うと、夜中にトイレなど行っていない、起きてすらいないと言うのです。まあ、私の思い違いか、寝ぼけていたのだろうと、その日は全く気にしていませんでした。
でも、また数日後今度は私がトイレに起きると、またもや妻の姿がないのです。トイレにも居ないし、リビングにも居ない。もしやと思って玄関に行くと、妻の靴がないのです。こんな夜中に、しかも私に声をかけずに出て行くなんて考えられません。そこで始めて、私は妻の不貞を疑ったんです。私が眠りに落ちたのを確認してから、こっそり浮気相手に会いに行ってるのではないかと。
だから、私はその現場を確かめてやろうと思って、その日寝たふりをして待っていました。夜、案の定横で寝ていた妻が起き出したのを感じたんです。例の浮気相手に会いにいくのかと思い、そっと後をつけました。妻は靴を履きしっかりした足取りで外に出ると、だんだん人気のない所に向かって歩いていきました。普段なら通らないような道を通り、そして、ある場所で立ち止まると、一人で、楽しそうに話しだしたんですっ。
私はあまりの事に後ずさりし、砂利を踏んでしまいました。ハッとしたように妻が私の方を振り返って--。
そこで私の記憶は途絶てしまっているんです。朝起きたら、何事もなかったようにベットの上で寝ていました。あまりのことに妻には問いただせずに、柿森さんを頼ったらあのような事に……」
「だからここへ、ね」
みつが納得したように頷いた。本当の浮気調査ではなくて良かったと思ったことだろう。
「はい。正直、未だに本当にあったのか、夢なのかわからないのです。ただ、妻が本当にヒトでないモノと会っているのなら、止めさせて欲しい。そこまでお願いできますか?」
高山さんは、疲れきった顔に希望を灯しながら、いや縋るようにしてみつを見た。それと同時に、相場よりも大目の金額が書かれた小切手をだし、目の前の机の上においた。
みつは瞳をキラキラさせながら依頼人を見ていた。
私も、瞳をキラキラしながら小切手を見つめていたことだろう。
「わかりました。そういう事でしたら、止める事も含めて、お受けいたしましょう」
みつの自信満々というか好奇心あふれる顔を見て、高山さんはホッとしたように、お願いしますと言って帰って行った。
早速金庫に小切手をしまった。
「よーし。じゃあ早速、今夜から調査に向かいますかぁ」
ソファから立ち上がると、珍しくみつからやる気のある言葉が出た。
「みつ……。今回はえらくやる気ね」
資産家の令嬢であり金に困る事のない彼女が、金の事でやる気を出したとは思えない。ならば、考えられる理由はただ一つ。あの男の妻が会っている現象か。
「んふふ~。今回は珍しいものが見られるかもしれないよ~」
上機嫌である。気持ち悪いくらいに、と言いたいが、彼女は自分の興味のある事に出くわすと、いつもこんな感じなので、慣れた。いつもはダルダルなくせして行動が早いのも、慣れた。
「じゃあ、もうだいたいの目安はついているのね?」
「漠然と、だけどね。あの依頼人臭うし」
そんなに加齢臭しただろうか。あの依頼人も疲れてさえいなければ、割と顔の整った男前なのに、可哀想ではないかそんな事を言っては。という顔をしていたのだろう。みつはにへらと笑って、
「ああ、違うよ~かおちゃん。あの人の匂いじゃないよ獣臭いし。よーし、今夜はその奥さんを尾行してみますかー」
みつは楽しそうに笑った。
仕方ない。
先生様がそう言うのならば、私も夜まで残っておかねばなるまい。
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ネタバレとか気にしません。だって推理するような内容じゃ無いからw




