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不思議な事調べます-不破探偵事務所-  作者: 灯流
廻り輪(めぐりわ)
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被害者

「あの指輪は、シオリさんが買ってきたものにゃ。でも、シオリさんは、あの指輪をってない」


 シロ君は、みつに訴えかけた。その声は悲痛で、私も被害者だが、何だか可哀想だった。


「シオリって子が、キミの飼い主ね」

「そうにゃ。ぼくを助けてくれた、大事な人にゃ。だから、シオリさんがあの指輪を持ち続けてたら、絶対にダメだから、だから……」

「捨てるように、促がした」


 シロ君は、力なくコクリとうなだれた。


「捨てても、戻ってきて……シオリさんが、最後に、あそこの河に捨てに行ったって聞いたにゃ」


 みつが、ピクリと顔を上げた。その顔は、戸惑いだろうか。迷いだろうか。


「ん? ちょっと待って。そのシオリって子は、車に乗ってあの河に捨てに行ったんじゃないの? あと、捨てに行ったことを、誰に聞いたの?」


 みつの言葉に、シロ君は首を傾げた。飼い猫だから、車ぐらいはわかるだろう。


「くるま? シオリさんは、くるま、持ってないにゃ。昼間に歩いてたから、妹のマルがシオリさんを見つけて、ぼくに教えてくれたんだにゃ。マルも最初はシオリさんが死んじゃうんじゃないかって、それで後をつけたみたいにゃ」


 妹がいるのか! マルちゃんというのね!……っと違った。車、そう、車だ。この子の飼い主シオリが徒歩であそこまで歩いて行って捨てたというのなら、まさに私達もここまで歩いてこれたのだから、不可能ではない。

 では、瀬尾が聞いてきた、逃げていく車というのは、誰だ。全く関係の無い車なのだろうか。……それも可能性は薄い、と思う。

 横のみつを見ると、眉間に皺を寄せ、明らかに面倒臭がっていた。どうするのだろう。私としては、みつが持ち主を見つけて返す、という本当の意味が良くわからないから、何も口を挟めた義理ではないのだけど、でも、


「ねえ、みつ。シロ君の飼い主のシオリさんには、あの指輪、返さないよね……?」


 それは、酷だと思うのだ。たとえ、みつが匙を投げて自分でどうにかしないといけなくなったとしても、目の前の心配そうな顔のシロ君の顔を見ていると、それはしてはいけないと思ったのだ。

 みつは、眉を下げ、飼い主に叱られたゴールデンレトリバーのような目で私を見た。別に、叱ってないのに。


「かおちゃん、それは…」

「お姉さんは、そうすれば助かるかもにゃ。なんでにゃ?」


 みつとシロ君の視線に、私は苦笑してしまった。


「さあ、何でだろう。でも、シロ君の言葉が嘘とは思えないし、シオリさんって人も被害者だと思うの。傷口に塩を塗るのは、嫌だわ」


 私の言葉に、シロ君は驚いたような顔をした。みつを見ると、仕方ないなあ、とでも言いたげな顔で眉を下げていた。でも、反対はしないらしい。


「……まあ、とりあえず、あそこに捨てた持ち主はわかったから、瀬尾に報告に行こう。その後の事は、またその後考えようか~」


 みつが、眉を下げたまま、笑う。器用ね。私はシロ君を見た。シロ君は、何か覚悟を決めたような顔で、私を見ていた。


「ぼくは、お姉さんみたいなヒトを見た事がないにゃ。良いにおいもするし、死んで欲しくないにゃ。ぼくが手伝える事なら、手伝うにゃ」


 それはとても嬉しいが、室内飼いの猫に手伝いは厳しいのではないだろうか。気持ちだけ、と断ろうとすると、みつが耳打ちしてきた。


「とりあえず、貰えるものは貰っておいたら。役に立つかもよ。あやかしの約束は強いよ」


 と、良くわからない事を言ってきた。とりあえず指示通り、シロ君の言葉をありがたく頂いた。




 とりあえず、瀬尾に報告をして、また方法を考えなければいけないのだろう。まさか、河に捨てた人すら被害者だったとは…。

 見送りに来てくれたシロ君が、玄関口で私の袖を引っ張った。なにその仕草可愛い!


「どうしたの?」

「お姉さんは、ネコは好きかにゃ?」

「ええ、もう、大好きよ!」


 偽らざる本心だ。その言葉に、シロ君は嬉しそうに眼を細めた。こっちも嬉しくなる。


「それは良かったにゃ。お姉さん、お名前は?」


 名前、教えていいのだろうか。以前みつに、怪しいと思ったら人間妖怪幽霊かまわず本名を名乗ってはいけないと約束させられた事がある。本名は、その人そのものである為に悪用されやすいらしい。だから、みつの許可が無いと教えてあげられないのだ。

 みつを見た。みつはため息をついて、仕方なさそうに頷いた。よし、お許しが出た。


「神凪 薫よ。シロ君」

「かんにゃぎ、かんにゃ、かんに……かんにゃぎさん」


 どうも、かんなぎ、が言いにくいらしく、にゃ、になっている。もう、なんでこの子はいちいち私を萌えさせるのだろう! 可愛いなあ!


「なぁに」

「かんにゃぎさんに、ネコの統領おうから祝福を」


 そう言うと、シロ君は私をかがませ、私のおでこに鼻チューをした。これって、猫の親愛の証よね! うわー、とってもとっても嬉しい。

 嬉しすぎて、言葉の意味までは頭がまわらなかった。


 みつに急かされるようにして、シロ君が飼われているお宅を後にした。みつは、ちょと頬を膨らませていたので、何かが気に入らなかったらしい。

 隣に並んだときに、


「かおちゃん、妖に好かれはじめてるなあ」


 と、あんまり嬉しくない独り言が聞こえてきた。いや、シロ君とか猫関係なら嬉しいけどなあ。

 とりあえず、瀬尾がいた橋を目指してもと来た道を歩き出した。


多分、みつはシロの鼻チューをすごい忌々しそうに見ていたと思いますw

あと、シロは多分シオリに夢の中で指輪を捨てろとか言って脅かした系。ギンはそれを咎められると思ってたけど、みつにはどうでもよかったという裏話。

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