ねこまた
正直ページ分けする場所間違った気がする今日この頃
「わたくし、ヒトの住居は良くわからないのです。シロが、ヒトの世話になっている事は知っているのですが、どこ、とまではよくわからなくて。大体の場所でしたら、あの辺りから毎回来る、と言えるのですが」
そう言って瀬尾が指差した方向は、先ほど車が去ったと指差した方向と同じだった。あのあたりの町に、何かあるんだろうか。
みつは瀬尾が指差した先を見ていたが、ついと瀬尾を見た。
「ヒトの世話になってる猫又、ね。ちなみに、そのシロの毛並みと性別は?」
「毛並み、ですか? ええと、三毛猫と言うんですかね。白地に黒や茶色の模様がところどころに散らばってます。あと、シロはオスです。まだ若い仔です」
三毛猫の、オス?! しかも猫又?! なんたる要素盛り盛りの子なんだシロちゃんいやシロ君!
しかし、これで手がかりが見つかったようなものだ。三毛猫のオスは、めったに生まれない。それこそ、売りにだされたら何百という値で買う人間がいるぐらいだ。……あんまり命の売買は好きではないのだけれど。
そんなに珍しいオスの三毛猫を飼っているお宅となると、誰かしら知っている可能性がある。この情報には、みつも少し驚いているようだ。聞き込みで猫探しをしようとしていたのだろう。うん、それでこそ探偵よね。
「そっか、だいたいわかった。ありがと。じゃあ、シロでも探しにいこうか、かおちゃん」
「そうですね」
町に行く事にした私達に、瀬尾が軽く頭を下げた。
「お気をつけて。うまくいくよう、お祈りしております」
みつは肩をすくめると右手を上げただけで、さっさともときた方向に歩き始めた。私もみつに遅れないように、瀬尾に軽く頭を下げ返して、後ろを追った。少し歩いて後ろを振り返ると、もうそこに瀬尾の姿は無かった。
瀬尾が指差した方向は、駅前からまた少し離れた場所だった。駅前も結構のんびりした風景だったが、ここはさらに普通に家の横に小さな畑があったり庭が大きかったりするので、そこここに田舎のような風景が広がっていた。開発に取り残された、と言ってもいいのかもしれない。まあそれが幸か不幸かは、住人の問題だ。
しかし、人通りが無いのは困ったな。
みつを見ると、またいつもの締まらない顔をしていた。なぜか瀬尾といると、目つきがキツクなっているような気がするのだが、気のせいだろうか。
「人、いなさそうね」
「そうだねぇ~。まあ、テキトーに歩いていようよ~。きっと、あっちから見つけてくれるよ~」
「どういう事?」
「猫のほうが、人間よりも数倍耳も鼻も良いってことだよ」
そう言って、みつはあたりをキョロキョロした。左には住宅があるが、右には駐車場がある。その横には手入された畑。と、その時誰かの視線を感じた。バッと後ろを振りかえる。が、誰もいない。さっき通った時と同じ風景。だが、みつも同じく後ろを見ていた。という事は気のせいじゃないのだ。なんだろう。
「ねーえ、私達の声聞こえてるんでしょ。だったらシロのところに連れてってくれない? 瀬尾関係で用があるんだけど」
みつが、あたかもそこに人がいるように呼びかける。私には見えない何かがいるのだろうか。いや、それだったらみつはちゃんと説明してくれるはず。説明が無いという事は、この見える範囲にいる、ナニかなのだ。
みつが、つと視線を移動させた。斜め前にある住宅の塀の上だ。そこには、サバトラというのか、しましまの黒と銀色の毛並みの猫がいた。野良猫だろうか、こんな近くに来て逃げる様子も見せないから、どっかで餌を貰っているのかな。
「シロに用事という事は、不破先生、とやらかにゃ」
渋い、男性の声の語尾に変な音が聞こえた。声のした方を見ても、いるのはサバトラの猫だけ。
みつはその猫から視線を逸らさず、
「そうだよ。会いに来たんだから、案内してくれない」
ちょっと偉そうにその猫に言い返した。
おおう、まさか記念すべき初猫ちゃんとおしゃべりが、渋い男性の声だったとは……言いようの無い幻想が崩された気がした…。だって猫ちゃんの鳴き声って高くて可愛いのしか聞いた事なかったし…。
「わかったにゃ。ついて来るにゃ」
サバトラ猫は、目を細めると、ついてこいと言わんばかりに背を向け、塀の上を軽やかに歩きだした。うーん、猫の歩行っていつ見ても軽やかよね。
みつと一緒に猫の後姿を追いつつ、私は塀の上を歩く子との接触を試みてみた。
「あ、あの、猫さん」
「なんですかにゃ、お嬢さん」
やだ、猫ちゃんなのにすっごく紳士!なにこの子素敵!
「お名前は、なんていうの」
「名前は、ギンですにゃ。シロの父ですにゃ」
おお、なんと目的の子のお父さんだったなんて。どうりで壮年男性のような渋い声がするわけだ。ギンは、面白そうに目を細めていた。
「ここですにゃ」
そう言って、ギンが止まったのは、あるお宅の塀の上だった。見た限りギンは首輪などつけていないが、ここで一緒に飼われているわけではないのだろうか。
私がその疑問を口にすると、ギンは私を見て、顔を洗いながら話してくれた。
「こちらのお宅にお世話になっているのは、シロだけですにゃ。わたくし共ではどうする事もできない怪我をこちらのお嬢さんに一生懸命看病して頂きましてにゃ。それ以来、シロはここに預けておりますのにゃ」
どうりで、どことなく飼い猫の感じがしないはずだ。野良猫特有の、くつろいで見えるのに緊張がとけていない感じ。撫でさせてももらえないのだろう。ちょっと残念。
「わたくし共も、たまにこちらのお嬢さんのお世話になっておりますにゃ。なので、お嬢さんを助けたがったシロのことを、どうか叱らないでやってほしいのにゃ」
どういう、事だろう。そう意味深な言葉を残し、ギンはひらりと塀から降り、どこかへ小走りで走り去ってしまった。
みつを見ると、さあ、といった風に肩を竦めていた。
ある意味衝撃の出会いwwログホラのにゃん太隊長のアニメの声がすっごく好きです。




