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不思議な事調べます-不破探偵事務所-  作者: 灯流
廻り輪(めぐりわ)
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探る

 電車を乗り継いで着いたのは、県境にある河に架かっている橋の一つだった。河の上流付近らしく、向こう側に林が見える。こちら側にはまだ民家が見えるが、ほとんど田や畑だった。というか、駅からここまで歩くの大変だった。

 しかし、こんなにまだ明るいが、出てくるのだろうか。というか、みつは何を思ってこの橋に来たのだろう。瀬尾の居る場所を、昨日聞いていたのか。


「みつ、この橋に何かあるの?」

「うーん、たぶん。もうちょっと上だったかなあ?」


「もうし」


 私達が橋の上で話していると、後ろから声がかかった。

 私がビクッとして、みつが悠々と振り向くと、そこには、


「瀬尾、さん」

「はい。話し声が聞こえましたので、もしやと思い参りました」


 昨日の、大和撫子だった。日の下にいるのに、その異様なまでの白さが、ヒトではない証のようだった。しかしやっぱり美人だ。妖怪というのも色々あるんだなあ。


「わたくしに、御用でしたでしょうか」

「よく言うよ。指輪、消えたでしょ」

「ええ」


 みつが、ハンカチにくるんだままの指輪を瀬尾に渡した。瀬尾はたいした拒否もせず、それを受け取った。

 瀬尾は指輪を自身のポケットに入れると、綺麗にハンカチをたたんで返してくれた。うーん、女子力高い。


「コレは、持ち主を変えるようでして。わたくしが力のない妖と思ったのでしょう、一瞬でも魅了されてしまったそちらの方について行ってしまったようですね」

「わかってたんデショ」

「いいえ、それは誤解です。わたくしも、ヒトがどうなるかまでは予測できませんでした」

「……かおちゃんが、それに気に入られた。気に入らないから、持ち主に押し付ける事にした。手伝ってもらうよ」


 そうだったのか。まあ、知らない指輪が家の中にあったら、ストーカーか超常現象かのどっちかよね。……ストーカーは本当に勘弁してほしい。切実に。もう二度と嫌だ。本当に嫌だ。


「手伝うのはやぶさかでは無いのですが、わたくし以外の仲間は、ヒトの形をとれません。如何いたしましょう」

「うーん。あ、そうだ、私が聞きたいことあんたが聞いて、私に教えてくれたらいいんじゃない」

「先生、それでは探偵と依頼人が逆になりますよ」

「この厄介を持ち込んだのはわたくしですから、かまいません」

「それとは別に後で、依頼料と迷惑料、もらうからね」

「わたくし達がお支払いできるものであれば、御支払いしますが、ありますでしょうか…?」


 みつの言葉に、瀬尾が困ったように頬に手をあてた。うーん、今はやりの女子力のもっと上位の仕草のような……姫力? 

 私が思考で遊んでいる間に、みつと瀬尾がなにやらボソボソ話していたがまとまったらしい。


「じゃ、そういう事で。とりあえず、その指輪拾った最初の奴に聞いてよ。どこで、どんな状況で拾ったのか。拾った前後で、変な事が無かったか」


 みつの言葉に、瀬尾は一つ一つ頷いた。


「かしこまりました。聞いてまいりますので、少々お待ちを」


 そう言って、瀬尾は橋の向こう側に渡り、横の土手から河の方へ降りていった。橋で見えなくなったが、そろそろ水面に立つ頃か。気になって欄干に近寄り、水面を覗き込む。が、そこには誰もいなかった。まるで小石でも投げ入れたように水面に波紋がうっすら漂っているだけ。どういう、事。いや、これが妖怪という事なのか。みつは興味なさそうに、欄干にもたれかかって空を見ていた。


 数十分後。

 雑談しながら待っていた私達のもとに、また気配なく瀬尾が戻ってきた。また、ビクッとしてしまった。お願いだから、気配を消すのやめて欲しい。一般人の私は、ビビる事しかできない。


「お待たせいたしました。聞いてまいりました」

「お帰りなさい」

「何かわかったぁ?」

「はい。拾ったものは、この河のもっと上流、源流の一つである小川で見つけたそうです。キラキラと光っているから、何だろうと思って拾ったと。その付近には人影がなく、そこにヒトがいる事もマレで、なぜそこに指輪が落ちていたのかわからないそうです。ただ、ええと、くるま? あの、鉄の乗り物が強い光を放って、遠くに行くのを見たと」


 瀬尾の話に、みつは、ふ~んと気のない相槌を打った。その反応はどうなんだろう。みつって、妖怪嫌いだったっけ。いや、好きとは聞いた事無いけど、でもこんなに低姿勢で話が通じるのに。ちなみに私は、信じてない頃はどっちでもなかったが、知った今では怖くさえなければいいと思う。


「車に乗って逃げてるねぇ。その車の下の方にさ、黄色か白色の板がついてて黒い数字が書いてあるんだけど、それはわからない?」

「板に書かれた数字、ですか? あまり目の良くないモノですので、期待は出来ないかと」

「そう。じゃあ、走り去って行った方向は?」

「あちらの、集落の方だそうです」


 そう言って、瀬尾は私達の後ろ側にある民家がまばらに散らばっている方角を指した。このヒト、出来るぞ。いや、ヒトじゃなかった。いや、でも、今回何もしていない私よりよっぽっど仕事が出来る。


「そっか。もし、もう一回その車来たらさ、後つけてくれない? とっても速いけど、追いつける?」

「まあ、くるまとやらにしがみつけば、あるいは。そのように伝えておきます」

「よろしく。じゃあ、次はあんたに私の事教えた情報通とやらの猫又に会いたいんだけど」

「あの子に……シロにですか?」

「そう。情報通なら、その指輪の事も何か知ってるかもしれないしね。呼べる? それか、どこに行けば会える?」


 猫又に、会える? 本当だろうか。猫とお話できる日がついに来るのか! ああ、みつについてきて良かった! シロちゃんと言うのか。じゃあ白い子なんだろうか。うんうん、白い子も可愛いよね。いやいや全部の猫が可愛い。


 瞳がキラキラしているであろう私を余所に、瀬尾はまた困ったように手を当ててた。


【ねたばれ】みつが間延びした喋り方をしないのも瀬尾にあんたとキツめに言うのも、薫を怪異に巻き込んだから怒っているのです。瀬尾に対しても色んな事にも。

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