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決着

 みつは走っていた。

 持っている懐中電灯は、上下に振れてあまり使い物にならない、が、みつは道が見えているようで迷う事なく、石に躓くことなく、目的の場所付近についた。

 息を整えるように、目的地の手前で走るのを止め、歩き出した。

 道を右に曲がると、地蔵堂らしき小さな建物が見えた。

 少し手前で立ち止まり、あたりを見渡す。


「とっとと、でてきたらどうなの」


 それは、誰に向けて放った言葉だったのか。

 少しの沈黙。

 みつがもう一度口を開こうとした時、


「バレていたのか」


 ガサガサという草をかきわける音の後、がたいのよい男が二人、のしのしと出てきた。それは、


「お前達、海で見た奴らだな。やっぱり、お前達か。宿を襲撃したのも、お前達だな」


 そう、薫の事を海の家で聞いていたあの二人組であった。みつは、海の家で彼らの気配を感じていたが、はっきりした確信が得られなかったため、行動に移せないでいた。


「玉の在り処がわかったそうだな。大人しく場所を吐け」

「はあ? こんなニセモノが欲しいの? ばっかじゃない」

「なんだと」

「なんだはこっちの台詞だ。かおちゃんを傷つけた罪、償ってもらうぞ」


 みつが、先制した。

 




 男達もそれなりに強かったようだが、キレたみつには適わなかった。ボコボコにされ足元の草むらに転がされる男が二人。みつは悪い顔で、それぞれの男の頭を鷲掴んだ。


「あくむはみにつけ きちむははなれほうとなれ きゅうきゅうにょりつりょう」


 そう言うとみつはさらに力を入れて頭を鷲掴んだ。次の瞬間、男達がうめいた。うずくまり苦しみだす。


「命をとらないかわりに、終わらない悪夢をあげるね」


 にこっと、笑ってない目で笑い男達を見下ろすみつ。

 犯人達に呪いをかけ、満足そうに顔を歪めると、みつはふと何かに気づいたように、ある方向に目をやった。

 そこには、白く透ける、例の少女がいた。


『ありがとう』

「あなたの為にやったんじゃない。ましてや、その玉の為じゃないから、勘違いしないで」

『それでも、ありがとう』


 少女は、足が宙に浮いて、幽かに白く発光していた。向こうの風景が透けていることから、彼女がこの世のものではない事がわかる。少女の中心、鳩尾の辺りはより強く光り、そこは向こう側の風景が透けていなかった。そこに、ナニかがあるように。


「玉は、あなただったの」

『わからない。なにも、わからないの。なんで起きたのかも』

「ふぅん。まあ、大方あいつらがちょっかい出してきたんでしょ」


 みつはそう言いながら、無遠慮に地蔵堂に近寄りその小さな戸をあけた。観音開きの先には、古ぼけたお地蔵様がちんまりと鎮座していた。


「さて、どこかなー。横かなー、下かなー」


 薫を傷つけた直接の犯人をボコボコに出来て満足したからか、みつはいつもの調子に戻りつつあった。

 地蔵像をひょいっと無造作に持ち上げると、下に小さな扉が出てきた。

少女が焦ったようにみつに手を伸ばしたが、その手はスッとみつを通り過ぎ、掴む事はなかった。


「あ、これだ」

『やめて、放っておいて。お願い』

「私はこんなの欲しかないけど、コレがあったら、またこんな事が起きるよ」

『なん、で』

「何でか知らないけど、ここの玉。裏の世界に知られたみたいだよ。ニセモノなのにね」


 みつはかまわず扉を開いた。中には、桐の小さな箱。それをヒョイッと取り出した。


『お願い、やめて。それをどうするの。大事な物なの』

「子孫が傷ついても?」


 みつの言葉に、少女がハッと黙る。


「あんたのこの後生大事なこの玉のせいで、私の大事な人が傷ついた。あんたの子孫も傷ついた。もちろん、傷つけた奴らが悪いよ。でもね、これからはコレを狙って、そういう悪い奴らがどんどん入ってくる。その時、ふよふよ浮いてる事しかできないあんたに、何が守れるっていうの?」


 みつの言葉が辛辣になった。怒っているのだ。少女に、自分に。


『そ、それは』

「そもそもね、時代は進んだんだよ。こんな玉に頼らなくったって、人は湾岸工事とか色んな知恵で何とかできるようになったの。特別な力なんて無くても、必死に頑張って生きてきたんじゃないの、ここの人たちは」


 桐の箱の上フタをスライドさせると、中から小さなまん丸の玉と、勾玉が出てきた。その二つを持ち上げマジマジと見るみつ。


「なんだ。やっぱりそうか。もともと力があったのかどうかは知らないけど、信心が薄れたところで、あなたがこの玉の力使っちゃったんだね。もう、ほとんどコレに力なんてないよ」


 そう言って、みつは呆然としている少女を見た。正しくは、少女の鳩尾に光る玉のような部分を。


「おかしいとは思ってたんだよね。無差別に見えるなんて。見えるだけで、何もできないようだけど。宝珠とくっついてもそれぐらいの力なんだから、いっその事すっぱり上にいったら?」


 みつは、まん丸の玉の方を手の中でもてあそびながら、こともなげに言った。少女は驚愕したあと、泣きそうに顔をゆがませた。


『でも、これは昔から守ってきたもので、私が守らないと』

「もう、あなたは死んだんだよ。はるか昔に。それが何の悪戯か、上にいけず残ってしまった。そこからずっと眠ってたんでしょう? この町は、この玉やあなたが眠っていても大きな災害にもあわず、存在している。それが何よりの証拠でしょ。もう町の事は町の人にまかせてさ、自分は上にいきなよ。この玉は、私が適切に処理しておくから。玉という執着がなくなれば逝けるんでしょう」


 みつの言葉に、少女は顔をゆがめていた。泣いているようだ。それは、いろいろな思いのはざまで身動きがとれなくて、泣いているようだった。でも、だって、でも、いいのだろうか。


「ま、結論は急がないよ。というか、知らないよ。私は部外者だからね。道は示したし、後は自分で好きにしたらいい」


 みつはそう言うと、桐の箱の中から、残る勾玉を取り出した。まん丸の玉と勾玉、二つ持ってもみつの右の掌に収まるぐらいの小ささだ。

 みつはそのまま地蔵堂から離れ、男達との戦闘の時に邪魔だと投げた懐中電灯を拾い上げ、左手に持った。


「じゃーねー」


 少女が、何もできず呆然と立ち尽くす前を、みつはゆうゆうと左手を振りながら宿屋のほうに戻って行った。

 その後ろ姿を見つめる少女。だんだん、光が弱くなり、身体が透けてゆく。

 その顔には、笑顔。泣きそうな、笑顔。

 最後に、


『ア リ ガ ト ウ』


 聞こえた言葉に振り返る事なく、みつは歩き続けた。






 山幸彦に戻ると、海から眩い光、朝日が差し込んでいた。そういえば、あたりがうっすら明るい。もう、朝か。


 ポルターガイストは宿全体であったらしく、明るいとその惨状がありありと映し出されていた。窓もいくつか割れて、ガラスが散乱している。

ふと見えると、せわしなく動いたり指示を出している女将が見えた。

 肩を竦めて、迂回して宿に入ろうとするみつを、女将が目ざとく見つけた。


「不破さん! ご無事でしたか」


 その声音は、怒っているとか恨んでいるとかではなく、純粋に心配しているように聞こえた。頭をぽりぽりかき、仕方なさそうに振り返るみつ。激怒していたとは言え、わりと酷い言葉をかけ酷い事をした記憶があるので、気まずい。

 だが女将は、みつの前に早足でくると、なんとみつに頭を下げた。


「このたびは、何とお礼を言っていいやら……。ゆかりさんから聞きました。悪い人を倒してくれたこと。ゆかりさんを、助けてくれたこと」

「え?」

「消える前に、私達の所に来てそう言ったんです。ありがとう、って。頑張って、って」

「そう、ですか」

「ご無礼、お許しください。私達は、なんとしてもあの宝玉を守り、世間から存在を隠さなければとそればっかりで」

「あー、私も無礼だったし、それでおあいこって事にしませんか」


 みつが苦笑すると、女将さんは昨晩とは雰囲気が違う事に気づいた。もう、激怒はしていないようだ。


「不破さんが、それで良いのなら」

「いーよー。面倒くさいし。じゃ、かおちゃんが心配だから私はこれで。ああ、あとこれ、つかさちゃんが貸してくれたんですけど、かわりにお礼言っといてください」


 みつは、女将さんに左手の懐中電灯を渡した。女将は黙って受け取り、去り行くみつを見てもう一度頭を下げた。




 みつが急ぎ足で部屋に戻ると、薫は夜の状態のまま安らかな顔で、寝ていた。


「よかったぁ~」


 ぺたんと横に座り込んだ。いや、崩れ落ちた。

 みつにも、睡魔が襲ってきた。昨日、一晩中活動していたし、力も使った。正直、ちょっと、疲れた。

 そのまま、睡魔に逆らう事なく、薫の横に倒れるようにして、みつは眠りに落ちていった。


能力バトルを途中まで書いたところで、これは霊能力バトル小説ではなかった事に気づき、バッサリ省略しましたwww 探偵だからね!めっちゃ強いだけのただの探偵だからね!仕方ないね

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