表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/137

明けましておめでとうございまして

2017年のお正月に書いた短編。章の関係で今頃再アップ

---正月三ヶ日中某日---




 本日は正月休み中、なのであるが、私は事務所に来ていた。

 仕事をするわけではない。

 シロくんマルちゃん関係である。

 もちろん、二人?二匹?に何かあったわけではなく、これは自主的な事なのだ。そう!毎年のように呼び出されて行くのではなく!今年は二人を迎えたい!これは新年早々縁起が良い!





 という、私の怒涛の説得に、年末を前にしたみつは苦笑していた。


「凄いヤル気だね、かおちゃん」

「もちろんよ!今年からは、私も出迎えたいっ。どうせ正月は暇しているから」

「そう、なんだぁ」


 そういえば、と、ふと思った。みつって、初詣とかするのかしら?何か特定の神様を崇めてそうであり、全く何も信仰してなさそうであり。こういった事に関して私は無知なので、聞くのははばかられた。

 かわりに、一番気になっていた事をたずねる。


「二人は、いつもどれくらいに来るの?」


 そう。なんとなく来る日はわかっていても、何時かはわからない。二人より先に!ここにいなければ意味が無いのだ。みつは苦笑した顔のまま私を見ていた。


「そーだねー、だいたい日が昇りきる前ぐらいの印象だねー」

「なるほど。じゃあ、いつも出勤するぐらいの時間に来たら、先回りできるのね」

「多分ね」


 何でもない事のように話すみつに、また、ふと疑問を感じた。

 この人、私が居ない時に事務所に居るのだろうか。というか、どうやって二人を中に入れていたのだろう。気づかなければ、流石に二人も帰るだろう。だが、みつは二人を事務所に入れて、私を呼んでいる。

 ……正月早々、実は事務所に居るのだろうか?


 急に私が黙ってしまったのを見て、みつが首を傾げた。


「どーしたの、かおちゃん。あいつらにやる物でも考えてるの?普通に猫缶で良いと思うけどねぇ」


 全く見当外れな事を聞いてくるみつに、私も律儀に答えていた。


「いえ、二人には既にオヤツを買ってあるわ。気になったのは……」

「?」

「みつ、もしかして正月、いえ、休みの日も此処に居たりするの?」


 キョトンとした顔の後、みつはちょっとした秘密がバレた子供の顔で笑った。


「いやいや、流石に居ないよぉ。でも、此処の事務所は特別製でね〜」


 その秘密とやらは教えてくれないらしい。まあ、聞いてもわからない事だろうから、そうなの?と相づちをうつが深くは聞かない。


「とても簡単に言うと、ヒト以外が来ると私にわかる仕組みになってるんだぁ。それでなんか来たなーって降りてみたら、あいつらだったんだよ〜。見つかったら入れろ入れろ五月蝿くてねぇ」


 ようするに防犯カメラみたいなものだろうか?そう言えば、事務所の外には対人用の防犯カメラは設置してなかった。ヒト以外と言ってるから、対人用カメラは付けた方が良いのかしら?


「そう。防犯カメラでも付ける?そしたら、誰か来たかわかるけど」

「あー、カメラ、カメラねぇ。うーん、映るのと映らないのがいるから、面倒なんだよねー。認識したとバレたらコッチに気づく可能性もあるから〜。カメラはいらないかな〜」


 そう言えば、心霊現象って写真やカメラに映ったり映らなかったりするし、そういうものなのだろうか。


「わかったわ。私も、シロくんマルちゃんがいつくるか知りたかっただけだし。来年の年始はビックリさせるわよ〜〜」


 俄然ヤル気が出て来る。いや、盛り上がってくる。誰かの為に、何かを用意するのって、楽しい!ふと、みつを見た。苦笑してる。そう言えばみつも、正月は一人で過ごし帰っていないという。そもそも、家族と交流するという用事を聞いた事が無い。生前分与……色々と事情があるのだろう。


「そう言えば、玉葉くんはこっちに戻ってきてくれるかな」

「さあ?」


 ウチの従業員である狐の玉葉くんは、お正月にはあの姉の所に戻る事になった。年に一度ぐらいは無事な弟の顔を見せて欲しいという、超過保護なお姉さんの願いでだ。(実際は乗り込まれ凄まれて怖かった)

 こっちに戻ってきてくれると信じてるけど、一体いつ戻ってきてくれるやら…。


「まあ、静かで良いよ」

「またそんな事言って」


 みつは肩を竦めて、苦笑した。

 と、まあ、こんな感じで年末のお休みに入ったのだった。








 そして!今日!私は、いつもの出社時間より少し早めに、休業中の事務所に着いた。鞄の中には、あの子達へのオヤツ。そう!最近話題の‘ニュール’だ!細長いパウチに入っていて、猫達がこぞって夢中になるという、魔法のオヤツだ。

 事務所のドアの前で、中を伺う。かすかに、何かの気配がする。……え?

 ちょっと驚きながらドアノブに手をかけると、すんなり開いた。お休みの前日に、確かにカギをかけた。これは、


「あっ!かんにゃぎさんにゃー!マル、少ししか待ってないにゃ!すごいにゃ!」

「あ、かんにゃぎさんにゃ」

「マルのてれぱし〜、がとどいたにゃ!すごいにゃ!」

「それは違うと思うにゃよ……」


 遅かったか。猫耳、尻尾のついたクリクリお目々の兄妹が、私を出迎えてくれた。作戦失敗、か。

 みつが、奥から頭をかきながら歩いてきた。


「明けましておめでとう、かおちゃん。いやー、今年は、えらい早くコイツら来てさあ。電話しても繋がらなかったから、待ってたんだぁ」


 なんか、ごめんね?と眉を下げるみつ。みつが謝る事無いのに。私も肩を竦めながら、年始の挨拶をする。


「明けましておめでとうございます。まあ、そんな事もあるよね。ちょっと残念だけど、会えただけで嬉しいわ」


 みつが、パッと顔を明るくした。


「うん」

「かんにゃぎさん!あけましておめでとー、にゃ」


 中に入り、ドアを閉めるとマルちゃんが寄ってきて、目を輝かせた。手を出して毎回兄に諌められているので、学習したらしい。可愛いなぁ。


「明けましておめでとう、マルちゃん。はい、これ」


 頬が緩みながら、鞄の中にあるニュールを取り出す。マルちゃんが首を傾げた。


「明けましておめでとうございますにゃ。いつも、すみませんにゃ。マルが」

「あにうえ、これ、何にゃ?」


 シロくんが、申し訳なさそうに近寄ってくる。気にしなくて良いのに、真面目で可愛いなぁ。

 マルちゃんがシロくんに細長いニュールを見せる。途端、シロくんの目が光り輝いた。ビックリした。


「ま、マルそれは、それは…!」

「?」


 シロくんが、その光り輝いた目でこちらを振り返った。眩しい!

 シロくんにも、それを渡す。何かわかっているようだ。良かった、喜んでもらえそう。


「こ、これは……ありがとうございますにゃ、かんにゃぎさん。本当に、貰って良いにゃ?本当に、好きなだけ食べて良いにゃ?!」


 シロくんの興奮がわかる。微笑んで頷くと、シロくんは途端にニュールを開けようと悪戦苦闘しだした。いつもマルちゃんの手前行儀良くしているが、まだまだ子供なんだなぁ。可愛い。そんな兄の行動にビックリしながらも、マルちゃんも何とか開けようとしだした。が、二人とも中々うまく開けられないらしい。


「かしてみて、二人とも」


 二人から差し出されたニュールを、真横に手で切る。そして、開けて無い下の方を少し押し、中身をちょっとだけだして渡す。

 すると、シロくんは待ちきれないとばかりに、切り口を舐め出した。マルちゃんもそれをみて、おっかなびっくり舐めた。途端、シロくんのように目を光り輝かせて、夢中になって舐めだした。

 凄い、あのCMは本当だったんだ。『猫が夢中になるオヤツ』二人の様子から、とてつもなく美味しいのだろうと分かる。良かった、喜んでもらえたみたい!


「うわー…」


 事務所の奥で、みつが引いたような声を出した。いつの間にか自分の机に引っ込んでいたらしい。夢中て食べる二人を見て、引いているようだ。こんなに可愛いのに。

 ふと、目が合う。すると、ちょいちょいと手招きされた。何だろう。素直に近づく。


「かおちゃん。はい、これ、どーぞ」


 私が近づくと、みつは机の上から、去年と同じような紙の人形を私に差し出した。今年は、同じ紙でちょっとした飾りがついていた。


「ありがとう。ごめんなさい、毎年貰ってばかりで。私からも、これ」


 みつから人形を受け取り、私も鞄に入れていた物をみつに渡す。みつは、ビックリした顔で、私の手の中にあるものを見つめていた。


「え、これは……」

「おばあちゃんが、不破さんにどうぞ、って。去年みつからこれ貰ったでしょう?だからお返しに渡したら、って言われて」


 みつに、小さなお守りを渡す。何処にでもある物ではなく、私のおばあちゃんの手作りだ。おばあちゃんは、たまにそういった仕事をする。神社とかでは無いんだけど、こういうちょっとしたお守りとか作って、望む人に分けるのだ。効果の程は、まあ、受験は合格したかな?ぐらいだけど。

 みつは、おそるおそるといったていで、お守りを両手で受け取った。そんな、何か力のあるものだったの?コレ。


「ありがとう、かおちゃん。大事にする……」


 みつは、両手でキュッとお守りを握りしめた。


「べ、別にただのお守りよ?そんな」

「ううん。あ、いや、なんか、人にお守り貰うのってはじめてで、嬉しくて」


 そうなのか。確かにみつぐらい力があると、神社で買ったお守りを軽率にあげて良いのかな、ってなるよね。おばあちゃんの手作りだけど、まあ、喜んでいるようだし、渡して良かった。


 みつの嬉しそうな笑顔を見て、私も良かったなぁ、と思うぐらいには、みつに友情のようなものを抱いている自分が、不思議だった。今まで、あまりなかった感覚だ。これも、みつからもらったものに入るのだろうか。


「そんなに喜んでくれるなら、来年もおばあちゃんにお願いしておくわ」

「えっ!本当に?でも、悪いよ。みつが勝手に渡してるだけだから」

「そう。じゃあ、わたしも勝手に渡すわ。来年も」


 私がそう言うと、みつは、眉を下げたり泣きそうになったり、くしゃりと笑ったり、忙しく表情を変えた。


「えへへ。ありがとう。今年も、宜しくね」


 みつが、嬉しそうに言う。


「こちらこそ、今年も宜しくお願いします。先生」


 多分、私も笑っているのだろう。口角が上がっているのがわかる。


「かんにゃぎさん!もういっこ!もういっこ開けてにゃ!」


 ドンと、腰に何かぶつかる。マルちゃんだ。シロくんも後ろでモジモジしている。


「はいはい」


 可愛いなあ、と笑いながら、二人のご要望にこたえる。その様子を、苦笑しながら見ているみつ。ああ、ここに玉葉くんがいてくれて、笑ってくれたら最高なのになあ。

 そんな風に寂しく思っていると、


 カラン コロン


「明けましておめでとうございます」


 軽やかにベルが鳴り、爽やかな声が聞こえる。ハッと振り返ると、そこには、


「あっ、玉葉にゃ!今年は居にゃいんじゃにゃかったにゃ?」

「えっとね、姉さんが1回挨拶して、戻っておいでって。また戻るけど……あ、不破さん、神凪さん。明けましておめでとうございます」


 笑顔の玉葉くんが、いた。ビックリして、とっさに反応できない私の変わりに、みつが苦笑しながら応えた。


「明けましておめでとう。1回戻るんだぁ?」

「うん、姉さんがお正月休みはまだあるでしょって」

「あの姉らしいや」


 ここでようやく我に返り、玉葉くんに声をかけられた。


「明けましておめでとう、玉葉くん」

「うん、おめでとうございます。今年も宜しくお願いします」


 ニコッと笑顔の玉葉くんを見て、ジーンとした。何だか良くわからないけど、ジーンとしたのだ。

 みんなで、お正月を笑顔で過ごせて、本当に本当に、泣きたいぐらいに、嬉しい。


「こちらこそ、今年も宜しくね」

「うん!」


 今年といわず、来年といわず、ずっと、こうやって幸せに過ごしたい。今までの私にはなかった、欲張りな願望が生まれる。

 何が出来るかわからないけど、この幸せを守る為に、頑張ろう。

 暖かな決意が、胸に灯る。

 ほんのりと、確かな想いが、いつか私を照らす気がした。

 



 はっぴーにゅーいやー(おわり)






玉葉「……」

マル「何モジモジしてるにゃ?玉葉」

玉葉「えっとね…」

シロ「なんにゃ?」

玉葉「尻尾が、1本増えたんだ…。変、かな」

シロマル「「……」」

玉葉「やっぱり、変、だよね」

シロ「変じゃないにゃ!尻尾が増えるのは、大変だにゃ!玉葉が頑張ったのに、変なんて言わないにゃ」

マル「そうにゃ!マルは三本の方が良いと思うけど、変じゃにゃいよ!」

シロ「マルっ」

玉葉「えっと、えへへ、二人とも、ありがとう。まだ、友達でいてくれる?」

マル「もちろんにゃ!」

シロ「当たり前だにゃ。玉葉なら、9本あっても、あっても……う〜ん」

マル「あにうえ、マルは正直3本以上は全部同じに見えるにゃ」

シロ「マルが羨ましいにゃ」

玉葉「あの、大丈夫だよ。僕が、9本まで増える事はないから」

シロ「なんでにゃ?ボクらなら気にしないでにゃ」

玉葉「あの、9本ってとっても凄くて大変で、僕なんかじゃとても…」

マル「なんでにゃ!どうせなら目差すにゃ!9本でも100本でもにゃ!」

玉葉「100本はちょっと……あぁ、なるほど、こんな気持ちなんだね…」

シロ「とにかく、気にすることないにゃ。どんどん増やすにゃ」

マル「増やすにゃ!」

玉葉「なんだか良くわからなくなってきたけど、ありがとう二人とも。うん、頑張ってみるね!」


三人はいつまでもハハハと笑い合っていましたとさ。おしまい。え?オチ?ないよ?みたいな感じで今年も宜しくお願いしますw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ