伝統と呪いの始まり
しかし、突然彼らは死んだ。
強風が人々を吹き飛ばし、竜巻が全てを巻き上げた。木々が動物も人も絞め上げ、地面が全てを薙ぎ払った。
無残な亡骸が散らばる国を業火が跡形もなく焼き尽くし、国民のほとんどが死に、四大元素を司る者達も己の力で死んだその夜、静かな雨が止まらぬ涙のように降り続いた。
英雄だった頃の四人はお伽噺か伝説のように語られ、それを嘘か真か考えるほうが馬鹿と見なされた。
この夜の出来事が四大元素を司る者の全てとなり、力を持つ者は忌み嫌われ、またこのようなことが起こらぬように塔に幽閉されるようになった。
それが国中の望みだった。何も知らぬ者達の、せめてもの抵抗だったのかもしれない。
四人が死んで以来、四大元素を司る者が全員揃うことはなかった。それどころか同じ時代に一人以上生まれることはなく、死ねば生まれ、生まれれば死に、それを繰り返した。人々はそれを天罰だと笑った。
国の真ん中に聳える塔に誰かがいない日はなかった。まるで生贄のように赤ん坊や老人が必ずいた。
話す楽しさを知らず、人を愛する喜びを知らず、誰かを失くす悲しさも、何かに屈する悔しさも知らぬままに全員死んでいった。
この国ではそれが当然のことだった。