おいらはミミック
おいらはミミック。いわゆる宝箱に擬態している魔法生物だ。宝箱だと思ってオイラを開けた瞬間そいつの魔力を吸い取る。だけど殺しちゃいない。魔王様がおいらをここのダンジョンの担当を任す時にこう言ったんだ。「人間は食べちゃダメ」だからおいらは魔力を吸い取ったあと転移魔法をかけてダンジョンの外に送る。そんな生活を何十年も続けているからおいらの魔力量は膨れ上がってきたが、なんせミミックなもんで自分では動くことができない。最近ダンジョンに来る人間の数も減ってきてるし、前までダンジョンにいた他の魔法生物の声や物音すら聞こえない。いつまでおいらはここに居ればいいんだと魔王様にクレームを入れようかと考えているとトコトコと間抜けな足音が聞こえた。おいらは宝箱の姿に擬態し待っていた。久しぶりに人間が来た。と嬉しく思った反面、間抜けな足音を奏でるような奴がおいらのいる部屋まで来れるのかと心配していた。するとそんな心配を拭き取るように1人の人間が現れた。極限まで薄めたような黄緑色の長髪を後ろで結んで丸メガネをかけた長身の人間が。長身なのに全身から滲み出ているほんわかとした雰囲気で全く威圧感が無い。おいらはその人間が着ている真っ白のローブを見て驚いた。そのローブにはこの国の政府Magicerを象徴する杖から光が溢れ出ているマークがワンポイントで刺繍されている。政府の奴がおいらに何の用だと思いながらもおいらは宝箱のフリをしていた。すると人間が「私はMagicer魔法生物保護隊の副隊長エモシオンテ・カリード・フロールだ。同僚からはシオンと呼ばれている。どうぞよろしく。」長い髪と整った顔で分からなかったがどうやらコイツは男らしい。声が中々に低い。保護してくれるっていっても男と分かった途端着いていく気が失せたのでおいらはまだ宝箱のフリをしている。しかしなんでおいらがミミックだって分かったんだ?「君の事は知っている。数十年も前からこのダンジョンにいて、数多の人間が君に会っているというのに未だ死亡事例が無い。そして皆口を揃えて『ミミックに襲われたが助かった』と言うんだ。通常ミミックは人の魔力を吸い取るだけでなく、その者の命も同時に吸い取る。だが君は魔力を吸い取った後に転移魔法をかけている。私達は君のような人間に害を為さない魔法生物を保護したい。どうか着いてきてくれないか。」この人間おいらのこと知りすぎだろ。ファンなのか?だけどおいらはこのダンジョンを離れる気は無いだからこう言ってやった。「おいらが人間を傷つけないのは魔王様からの命令があるからだ。魔王様の下から離れたおいらは何をするか分からないぞ。それにおいらは魔王様にここのダンジョンを任されてんだ魔王様からの命令じゃなきゃここからは離れねぇよ」「そうか。 『コンタット 連絡』」 「おいらと話してるのに連絡魔法をかけるとはいい度胸してるじゃねぇか。一体誰にかけてんだ。」「魔王。」?おいらの頭にハテナが浮かぶ。あいつ今なんて言った?魔王?おいらも歳だな耳が遠くなっちまった。「もしもし」連絡魔法が繋がったようだ。「なんだい?」シオンとはまた違う低く籠っているが優しく聞き覚えのある声。「今クルヒエンテダンジョンに居てそこのミミックを保護しようとしているんだが隊長の言葉じゃなきゃ動かなそうなんだ。」「クルヒエンテのミミック...スワァヴか!」「スワァヴいい名前だな。」「スワァヴよなぜまだダンジョンにおるのだ?とっくの昔に退散令が出されたであろう?」?再びおいらの頭にハテナが浮かぶ。退散令?「ワシが魔王として君臨するのが疲れたから部下である君たちは自由になってもいいと退散令を出したのだ。」何それおいら知らない。だから最近ダンジョンに人間が来なかったのか。「仲間に忘れ去られてしまったようだな。なんとも不憫なやつだ。だが魔法生物保護隊にスワァヴお主を忘れるようなやつはおらん。このワシが隊長であるこの隊に入らんか?世界にはお主のように退散令を知らぬやつ、未だ偏見が抜け切っていない人間に傷つけられている者もいるかもしれん。そんな者たちをワシらと共に救おうではないか。」おいらはもう一度魔王様の下で仕事が出来る嬉しさと、おいらと同じような境遇の魔法生物を救い出したいという情熱が溢れ出てきた。「もちろんこのスワァヴ魔王様の下で今一度お仕えいたします。」「よし。ではスワァヴよシオンのバディとしてこれから共に行動してくれ。そいつは実力はあるが抜けていることが多々ある。助けてやってくれ。」嫌かも。「ってことでこれからよろしくスワァヴ。」魔王様がいい。こうして可哀想なおいらスワァヴとシオンの旅が始まった。
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