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第七話 苦い思い出

 一行はヘリを降り、釜山の街で韓国の道路地図と大型のワゴンを拝借して仁川を目指した。

 

 その道中の話。




「そういえば二人って付き合ってんスか?」

 

 現在地は韓国中央部の都市、大田(テジョン)を過ぎた辺りだ。

 太陽の位置からして、時刻は大体午後三時くらいだろうか。

 

 釜山からここまでずっと運転をしてきた光に疲労が訪れ、車を停めて休憩しているところで救宇が口を開いた。

 

「はぁぁぁぁぁ」

「なっなに言ってんのよ」


 恒星と光は予想外の救宇の発言に、動揺をみせた。

 

「だって二人は、昔一緒にいたみたいな口ぶりしてたり、ヘリ乗る前には手を握り合って名前を呼び合っていたり、挙句の果てには一緒に寝ていたり………」


 救宇の表情は自信と確信に溢れていた。


 救宇には、中学のころ二人が恋人であったことは伝えていない。伝えるつもりもなかった。


 恒星の額に汗が滲み出てくる。


 ――もう少し注意を配っておくべきだった。


 別に伝えたとしても、特に問題ないだろう。

 だがこういうのは気持ちの問題だ。

 なんというか……元恋人同士だとバレるのが、気恥ずかしいのだ。

 

 隣に座っている光を一瞥したところ、彼女も同じ状態の様だ。

 恒星と同じように、額に汗を滲ませている。


 救宇は畳みかけるように続けた。


「恒星さんはWGSPの団員じゃないんスよね? いや、団員だとしてもあの行為の数々は説明がつかないっスけど。もしかして、二人は付き合ってるんスか?」


 二人は押し黙った。

 いや、押し黙るしかなかったのだ。


 再び光の方を(べつ)する。

 光は俯いたまま、微動だにしていなかった。

 

 光も、恒星と同じ心情なのだろう。


「いや、今は付き合ってないから」


 恒星は、収縮した声帯から声を振り絞って否定の言葉を発した。

 だが、言葉のチョイスが悪かった。


 救宇はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、言った。


「ほう、 ”今は”ということは、昔は付き合っていたんスか?」


 救宇は鋭かった。

 恒星は再び押し黙り、真横に腰を掛ける光と同様に(こうべ)を垂らした。


「えぇ、そうよ。私と恒星は元恋人よ」


 今までずっと俯いたまま動かなかった光が口を開いた。

 これ以上誤魔化しきれないと悟ったのだろう。


 救宇は、漸く観念したかというような視線でこちらを見る。

 そして再びニヤリと口元を緩ませた。


「ほほう、そういうことだったんスか。でも別れてるんスよね。お二人は。にも拘わらず、随分とお熱いようだったっスけど……もしかして、まだ好き同士だったりして」


 二人は黙る。


 


 ・・・・・・



 

 時は二年半前まで遡る。

 

 中学の卒業式が終わり、家でバトルナイトに勤しんでいた恒星は、光に話したいことがあるとラ〇ンで家に呼び出された。


 恒星と光には学力に開きがあるため、別の高校に進学することになっていた。

 そのため、高校は違うけどこれからもラブラブでいようね、的なことを言うために呼び出したのだと、ラ〇ンで言わなかったのは直接伝えたいからだと、恒星は勝手に想像していた。


 恒星は直ぐにウキウキした足取りで家を飛び出した。

 それから数分で光の家に到着し、家に通された恒星は廊下に散乱する段ボールを不思議に思いながらも光の部屋に上がった。


「ごめん、卒業式の後なのに急に呼び出して」

「ううん、全然。暇だったし。光、急に呼び出してどうしたんだ?」

「あのね、凄く言いづらいんだけど……」


 そう前置きして光は、言った。


 


「私と、別れてほしいんだ」




 恒星は固まった。


 当時の二人はラブラブ中のラブラブ。

 別れるなど、想像もしていなかった。


 現実は非情だったのだ。


「お父さんがアメリカに転勤することになって、私も着いていかなきゃいけないから……ごめん」


 その日、それから何をしたかについて恒星はよく覚えていない。

 唯一記憶に残っているのは、光の家を飛び出して、同級生が卒業式の打ち上げを楽しむ中、一人路上で泣きじゃくったことだけだ。




 ・・・・・・




「あの時はショックだったな。春休みの間、ずっと枕を濡らして眠れない日が続いたよ」

「えぇ、私もアメリカに着いてから何度も泣いたわ」

「つまり未練たらたらであると」


 恒星と光は互いに背を見せ、顔を紅潮させて押し黙る。

 救宇はにやにやとしながら、


「まぁ、今はそんなこと言ってる場合じゃないっスもんね。ゴブリンどもをぶっ倒してみんなを救出した後に三人で話の続きをしましょう」


 と言う。

 とても話の元凶とは思えない発言だが、二人は乗るしかなかった。


「そうだな」

「えぇ、そうしましょう」




 仁川の韓国基地の目の前まで来ると、建物の前に人影が見えた。


「誰スかあれ?」

「背的にゴブリンじゃねぇよな」


 車が更に基地に接近したところで光が声を張り上げた。

 

「……空助!」


 そう、人影の正体は中国基地にいるはずの空助であった。



 

 三人は車を降り、光を中心に空助と正対する。

 

 空助は細身で上背(うわぜい)。堀が深くはっきりとした顔立ちをしていた。

 恒星達と同様にWGSPの団服を身に纏っていて、それが様になっている。


「どうして空助がここにいるのよ。中国基地にいるはずじゃ?」


 光の疑問に、空助は持ち前の低音ボイスで答えた。


 


「なるほど。そういうことね」


 空助曰く、韓国基地から中国基地に救援要請が届き、今朝、一人で援護に駆けつけたのだという。

 だが、それも(むな)しく、空助が到着した時には既に韓国基地は全滅していた。

 それからというもの、先程まで繋がっていた中国基地との通信も途切れ、本部や日本基地にも繋がらず、一人ここで途方に暮れていたらしい。


「光、二人は?」


 空助は光の両脇に立つ恒星と救宇の方へ向けて、順番に視線を向けた。


「俺は恒星、夜光恒星です。広島で光に助けられてから同行しています」

「こんちゃっ! 空風救宇だぜ! 僕は恒星さんと光さんに山口で助けられてから同行してるっス」


 恒星と救宇が自己紹介を終えると空助は小さく頷いて、


「そうか、オレはWGSP日本基地基地長のku-sukeだ。宜しく頼む」


 そう言うと、踵を返して基地の中に入っていった。

遅れてすみません。これからは毎週、土日のどちらかに投稿をしていきたいと思っています。


物語としては中盤に差し掛かった辺りです。PV数やコメント数は酷い有様ですが、一先ず完結までは連載を続ける予定です。それ以降は続編を書くか別の作品を書くかしようと考えています。もしこの後書きを見ている方がいらっしゃれば何か反応を下さると、筆者は泣いて喜びます。こういう催促は正直好きじゃないんですがね(+_+) じゃあすんなよと言われても、そういうわけにもいかないのです。ではまた八話で

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