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第十二話 ゴブリンの襲撃と本部基地からの脱出

投稿が遅くなり申し訳ございません。

「基地内に多数のゴブリンが侵入した。巨体が幸いして基地内には侵入していないものの、基地の直ぐ近くにゴブリンストロングもいる。今団員たちがロビー(ドアを開けた先にあった広い空間)で応戦中だ」


 基地内にゴブリンが侵入、それは即ちあの広大な砂漠に隠された基地の入口を発見したということなのだろう。

 

 ――もしかしたら自分たちがここに来たせいで見つかったんじゃ……。


 ゴブリン共があの入り口をノーヒントで見つけられるとは到底思えない。

 そしてタイミング的にも、恒星達が来てから数時間後のことだ。

 何かしら関係性があると思うのが妥当だろう。


 そんなことを考える恒星をよそに、光は口を開く。


「そう……ヤバいわね。私たちは何をすれば?」

「お前たちは武器庫に向かってくれ。弾薬が不足しているから取ってきてほしい。あと恒星と救宇は自分で使う用の銃を取って来い。光、場所は分かるな?」

「えぇ、まぁ」

「空助さんは?」

「オレは本部の団員たちに加勢する。時間がない、早く!」


 空助は声を荒げ、武器庫があると思われる方向に指をさす。


「恒星、救宇、行くわよ」

「分かった」

「了解っス!」




 武器庫の壁には一面に多様な種類の銃が掛けられていた。

 日本で光から受け取ったアサルトライフルもあれば、救宇の家にあったようなスナイパーライフルまであった。ピストルやリボルバー等の小型の銃もある。

 こんなものゲーム(バトルナイト)でしか見たことがない。少しテンションが上がってしまいそうだ。

 尤も、全て対ゴブリン専用のものなのだが。


 恒星はアサルトライフルを手に取った。

 使ったことのある銃の方が良いと思ってのことだ。


「恒星、これを持って」


 光から木箱を手渡された。

 サイズは大きいペットボトル用の段ボールくらいだ。

 そして中々に重い。恐らく中にびっしりと弾薬が入っているのだろう。


 隣にいた救宇も同じ木箱を持たされていた。

 身長の低い救宇が持つと木箱に顔が少し隠れてしまっている。

 童顔なことも相まって、キュートでキューティーでキュートネスだ。


「なぁ、光。これって今使うか? 結構前に拾った魔石なんだけど。光、魔石集めてただろ」


 恒星は己のスーツのポケットから紅く煌めく

魔石を取り出し、眼前で愛銃を弄る光に見せた。

 訳あって、()()()()()()()()()()のだ。


「あぁ、ありがとね。でも使わないわ。それ、スーツの材料になるから集めてただけだから」

「そうか。……良かった」

「良かった?」

「いや、何でもない。急ごう」




 ロビーは地獄だった。

 

 恒星達が来た時には既にゴブリン共によって、頑丈であるはずの入り口のドアが破壊されていた。

 そしてそこからゴブリンがロビーに大量に流れ込んできていた。

 数にすれば、軽く数百はいるだろう。


 団員達が流れ込むゴブリン共に応戦しているのだが、状況は明らかに劣勢。

 

 だが、無理もない。

 こちらは数十人しかいないのに対し、相手は数百。

 圧倒的に数で負けている。

 

 よく見れば、血を流して倒れている団員もいる。

 非常にまずい状況だ。

 

「光達、弾薬は?」


 その時、ゴブリンと戦う団員の集団の中から空助が現れた。

 

 空助は顔や腕に多数の切り傷を負っていた。

 身に纏うスーツも弾薬や血で汚れ、袖の部分は切れて無くなってしまっていた。


「空助さん、大丈夫なんですか?」

「オレは大丈夫だ。それより、弾薬を」


 二人は足元に木箱を置いた。


「ありがとう」


 空助は乱雑に木箱を開け、中から弾薬の入ったボトルを二つ取り出す。

 対ゴブリン用の弾薬は液体だ。通常の弾薬とは違う。ボトルに入れられているのが普通なのだろう。


 そしてそのまま、空助は己のライフルの弾倉に弾薬を流し込んだ。


「空助さん、俺たちはどうすれば?」


 恒星は空助に指示を仰いだ。この場で最も経験があるのは空助だからだ。

 また弾薬を取りに行けばいいのか、それとも加勢をした方がいいのか。将又、負傷した団員の治療をすればいいのか。


 空助の返答は、その中のどれでもなかった。


「ここから逃げろ」


 その言葉に身体が固まっていくのを感じた。


「逃げろって……」

「どういうことっスか!?」


 空助は小さく息を吸った。


「この基地は(じき)に全滅する。オレ達が時間を稼ぐから、その隙に逃げろ」

「……そんな」


 周囲を見回す。

 ゴブリンと戦う団員は空助と同様、皆ボロボロだった。

 中には空助よりも酷い状態にも関わらず、ゴブリンと戦っている団員もいる。満身創痍(まんしんそうい)だ。

 

 今こうしている間にも一人、また一人と団員が倒れていっている。

 時を刻むごとに、地面が紅く染まっていく。


「空助さん達を置いては逃げられないっスよ」

「そうよ。私達も戦うわ」

「ダメだ。お前らまで死ぬことになる」


 もしもここで戦えば、空助の言う通り命を落とすことになるだろう。

 味方は減り続けているのに、ゴブリンの数は依然としてこちらの数倍はいる。

 ゴブリンストロングだって、基地の外に控えている。

 冷静に考えて、勝ち目はないだろう。


 逃げるなら今しかない。今ならまだ逃げられる。

 ゴブリンがいるから入口を通ることはできないが、どこかに裏口くらいはあるだろう。

 そこを封鎖されたら終わりだ。

 迷っている暇はない。


「行こう」


 恒星は小さく、だが強く、そう言った。


「ちょっと恒星、どういうことよ」

「恒星さん。空助さん達を見捨てるって言うんですか」

「見捨てるわけじゃない。後で絶対に助ける。このままじゃ、空助さんの言う通り全滅する。みんなを助けるために、今死ぬわけにはいかない」


 数秒、恒星の周りだけ時が止まった。


「恒星の言う通りだ。早く行け!」


 空助が言う。


「分かったわ。逃げましょう」

「確かにそうっスね。ここで死んだら、誰も助けられないっスもんね」


 空助含め団員達を置いて逃げるのは、無論、少し思うところがある。

 だが……みんなを助けるために、絶対に今死ぬわけにはいかない。


「光、場所は分かるな」

「えぇ、まぁ」

「じゃあ、逃げ口が封鎖される前に早く行け!」


 三人は再び光を先頭にして駆け出した。




「光……これどこに向かっているんだ?」


 恒星は光の後を追って走りながら問う。

 

「ヘリポートよ」


 光はさも当然の様に言って見せた。


「この基地には非常用のヘリポートがあるわ。そこからヘリで脱出するの」

「……マジか」

「ヘリ……っスか」


 恒星と救宇がそう言うと、光はわざわざ振り向いて睨んできた。


「何よ……文句あるの?」

「いや……ないです」

「……僕もっス」


 そうこう話している内に、一枚のドアに辿り着いた。

 そのドアは何故か元々開いた状態だった。団員が締め忘れたのだろうか。


 ドアの先には、地下とは思えない、学校の体育館程の広大な空間に、手前とその奥で合わせて二基のヘリコプターが鎮座していた。

 一見したところ、日本基地にあったものと同一だろう。


「ここ本当に地下っスよね」

「えぇ、勿論よ。ヘリの電源を入れれば自動で天井が開く仕組みよ」


 恒星は天井を見上げる。

 天井は鉄骨とコンクリートのようなもので造られているのだが、よく見ると中央に直線状の亀裂が入っていた。

 恐らくヘリの電源を入れればそこが開くようになっていて、ヘリが外へと出られるようになっているのだろう。


「さぁ、乗るわよ」


 光を先頭に、手前のヘリに向かって駆け出した、その時。


「クソッ」


 ヘリの後ろから、(おびただ)しい数のゴブリンが姿を現した。

 数にすれば、百体以上。

 

 ――何故、こんなところにゴブリンが。


 いや、今はそんなことどうでもいい。

 ロビーを突破したゴブリンが入り込んだのだろう。

 だとすれば、ヘリポートの入口のドアが開いていたのもゴブリンの仕業なのだろう。

 

 恒星達はあっという間にゴブリン共に囲まれてしまった。

 光が愛銃で正面のゴブリンに向けて閃光を放つ。

 だが数が多すぎて殆ど効果がない。


「これじゃあ、ヘリに乗れない。どうする?」

「どうするって言われても……」


 恒星もゴブリンに向けて発砲するが、光と同様に数が多すぎて大した効果がない。

 これでは倒し切ることは不可能だろう。


 ゴブリン共はどんどんと距離を詰めてきている。

 このままでは、ヘリに乗るどころか、恒星達が殺されてしまう。


「じゃあ、どこかに逃げ場は……」


 周囲を見回す。

 全方位に緑色の怪物。どこにも間隙(かんげき)はない。

 逃げ場など――存在しない。

 

「万事休すか……」


 そう、恒星が呟いた瞬間、


「恒星さん、光さん、信じていますからね」


 あろうことか、救宇がゴブリン共に向かって突っ込んでいった。


「救宇!?」

「ちょっと、何してんのよ!?」


 恒星と光が救宇に対し、驚愕と困惑を孕んだ声を上げる。

 

「僕が囮になるんで、その間にヘリで逃げて下さい!」


 救宇はそう言うと、腕をぶんぶん振り回してゴブリンの注目を集めた。

 ゴブリン共は恒星達から救宇に視線を移し、救宇へ向けて襲い掛かる。

 

 瞬間、二人とヘリとの間に、道が出来上がった。


「必ず、みんなを助け出してくださいっス! さぁ、ゴブリン共、お前らの相手はこの空風救宇様だ!」


 その言葉を最後に、救宇は緑の海の中に消えていった。


「救宇……」

「恒星、今のうちに乗るわよ」


 恒星は光に手を引かれ、救宇が作ってくれた道を通ってヘリに乗り込んだ。

 操縦席に座った光は、レバーを引いて機体を浮上させる。

 

「救宇……ごめん」




「うわぁぁぁぁぁ死ぬぅぅぅぅぅ」


 救宇のお陰で、ヘリは無事に基地から脱出すること()できた。

 眼下に一面の砂景色を収めることには成功した。


 のだが……。


 基地を脱出した直後、機体が急に降下を始めた。

 角度が直角に限りなく近づき、フロントガラスが砂色で覆われる。


 ――やばい、激突する。


 そう思った瞬間、今度は機体が急上昇を始めた。

 フロントガラスには一転、広島では見られない満天の星空が映る。


「オロロロロロ」


 恒星は思わず、身体の中のものを果てしなく続く砂海(さかい)に向かって吐き出してしまった。

 急降下からの急上昇に身体が耐え切れなかったのだ。


「ちょっと、大袈裟よ」


 今更ながら、何故光は平気なのだろうか。

 自分で操縦しているからなのだろうか。

 よくわからない。


 恒星は少しでも気分を回復させようと、ヘリの窓を覗いた。

 そこには地平線の彼方まで広がる砂の大地と、ゴブリンストロングと思われる大きな緑の影、それから……。


「おい、あれ……」

「何? 何かあったの?」

「……ゴブリンゲートじゃないか」


 機体の丁度真下。

 そこには黒い石の様な物で縁取られた、巨大なゲートがあった。

 大きさは町で見かける鉄塔程と言ったところだろう。

 兎に角、巨大だ。


「どれよ」


 次の瞬間、ゲートを見ようとした光が、どういう訳か機体を急旋回させた。


「オロロロロロ」


 恒星は耐え切れず、再び砂海に向かってゲロる。

 恐らく、今のゲロでジェット機で食べたものは全て体外に出てしまっただろう。多分。

 

「何もないわよ」

「後ろじゃない。真下だ」


 光は機首を下に向ける。

 フロントガラスに漆黒のゲートが映る。


「本当ね……あれは間違いなくゴブリンゲートだわ。……本物は初めて見たわ。しかも聞いたものよりもサイズが大きいわね。ゴブリンストロングが出現しているからかしら」


 光はそう言うと、機首を水平に戻した。

 夜風がドアの隙間から入れ込んできて、思わず身震いする。


「取り敢えずゲートのことは置いておいて、恒星、この後どうする? 私はヤクーチアの方向に行こうと思うんだけど」

「ヤク……なんだって?」

「ヤクーチアよ。シベリアって言った方が分かりやすいかしら」

「シベリア?」

「もう駄目ね」


 ヤクーチアもシベリアも一度も聞いたことがない。

 恐らくどこかの地名なのだろうが……聞いたことがない。有名な場所なのだろうか。

 

 バトルナイト内の地名なら沢山知っているんだが。

 ソルティ・スフリングスとか、テイルテッド・タワーとか、ミスディ・メドウズとか。


「なぁ、あそこに入ってみないか」

「ちょっとふざけないでよ。本気?」


 恒星がゴブリンゲートを指さしながら言う。


 会議室で恒星が話したこと。

 それを実行に移そうと考えたのだ。


「このままここから逃げても誰も助けられない」


 そうだ。

 このままヤクなんとかに逃げたとしても、誰も助けられない。

 両親もそうだし、恒星と光を逃がしてくれたWGSPの団員も、そして……救宇も。

 

「そうだけど……危険すぎるわ。空助と団長も、そう言っていたでしょう」

「でも救宇に言われたじゃないか。みんなを助け出してくれって」

「中がどうなっているのか分からないのよ。もしかしたらゴブリンストロングよりも強力なゴブリンがいるかもしれないわ。……最悪、帰れなくなるかもしれないわ」


 光の言っていることは尤もだ。

 ゴブリンゲートの中にはゴブリンストロングよりも強大なゴブリン――ゴブリンキング(今適当に恒星が名付けした)がいるかもしれない。

 そんなのと対峙してしまったら……踏みつぶされるか、口に放り込まれて終わりだ。

 たった二人だけで勝てるわけがない。


 それに、もしもゴブリンゲートがゴブリンを除いて一方通行だとしたら、こちらの世界に帰れなくなるかもしれない。

 

 あまりにリスクが大きすぎる。


 ――それでも。


「中で攫われた人が助けを待っているかもしれないだろ」

「でも……」


 恒星は徐に立ち上がり、操縦席に向かった。

 そして、光の肩に手を掛ける。


「大丈夫。俺が光を守るから。……俺を信じてくれ」


 その瞬間、機体がぐらっと揺れる。

 恒星は操縦席の椅子の背凭(せもた)れに掴まり、どうにか耐える。


「分かったわ。行きましょう。みんなを助けるために」


 光はそう言うと操縦桿を倒し、そのままヘリごとゴブリンゲートに突っ込んだ。




 ・・・・・・




 暗闇に包まれる部屋で一際(ひときわ)異彩を放つ紅い石を覗き込みながら、女は言う。

 

「クソッ、また逃がしたわ。すばしっこい。……アイツら、()()()()()()に入ってきやがったわね」


 女は視線を()()()()()()()()()()()()()()()魔石から、背後にある部屋の出入口のドアに向けた。

 

 そして女は、ドアの方向に歩き出す。


 一歩、また一歩。ゆっくり、ゆっくり。


 刹那を経るごとに、ドアが己に迫ってくる。


 一歩、また一歩。ゆっくり、ゆっくり。


 女は立ち止まり、一瞬、たった一瞬だけ、魔石の方に振り返る。


 そしてまた、一歩歩く。

 ゆっくりと。


 女は、目睫の距離となったドアノブに手を掛ける。


「私がこの手で、直々に制裁してやることにするわ」


 女はそう言い残して、()()()()()魔石の部屋を出た。





さぁ、いよいよクライマックスです。恒星達は無事、ゴブリン達をぶっ倒してみんなを助けることはできるのか。空助を含む本部の団員と救宇は無事なのか。そして、女の正体は……?


第十三話以降これらが少しづつ明らかになっていきます。

作者が思うに、本作で最も盛り上がる所になりますので、是非ともご一読ください。





それと、十三話以降は一話の長さが短くなります。ご了承下さい。

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