近衛騎士として NO.16
近衛騎士となって半年過ぎた。
慣れないことも多かったが、この半年で大分落ち着いてきた。
本日は王太子妃のイリア殿下の孤児院訪問の警護だ。
イリア妃は大変聡明で慈悲深いだけでなく、芯が通った方だ。
イリア妃はエール伯爵家の出だ。
セドリック殿下の婚約者候補の一人だったが、家格が伯爵家であり、論外の扱いだったそうだ。
選考途中で、当時のセドリック王子が病気に倒れ、立太子が見送られそうになった時に、殆どの令嬢が辞退を申し出たが、ただ一人だけ、セドリック殿下をお支えして、毎日お見舞いに行かれたご縁もあって、婚約者となり、王太子妃に選ばれたのだ。
それもあって、大変に仲むつまじく、社交界でも憧れの的となっている。
オルセー王家はとても仲が良く一致団結してる。
訪問後の帰城の馬車の中で、通常は侍女と女性騎士が同乗するのだが、何故か帰りだけ、侍女が後ろの馬車に乗った。
「アマル、今日はありがとう。礼を言います」
「妃殿下をお守りするのが私の役目でございます」
「相変わらず、職務一筋ね。休日は何をしてるのかしら?」
「休日? 主に警護に関する書籍を読んでおります。それから、稽古は毎日の日課ですが、休日は多くの時間を費やしております」
「アマルの休日が目に浮かぶわ。アマルにはお慕いしてる方はいるの?」
「恥ずかしながら、今までに恋文の一つも受け取ったことはございません」
『リーサ将軍とフランソワがあんなに牽制してるのだから当たり前ね』
と、小さくつぶやいてしまったわ。
「それなら、気になる方は? 例えば、その方の事を考えると嬉しくなったり、悲しくなったりとか」
「、、、」
突然フランソワ殿下が浮かんで顔が赤くなるのがわかったが、直ぐに打ち消した。
「アマルは冷静だと思ってたけれど、分かりやすいのね。ウフ」
「なっ何か誤解されてると存じます」
それから、暫くして帰城した。
イリア殿下の言葉が胸に残り、フランソワ殿下とすれ違うたびに何も話すことができなくなった。




