第八話 初めて他人と組んでみた
2人で北門を出て、暫く行くとディーネが
『やっぱり、北門側は変わった薬草が多くて良いな!』
「普段はこっちに来ないの?」
『あぁ、普段は西門側で採取してる。北門側は魔物がちょっと強くなるから危ないんだよ。ギルドで聞いてない?』
「ん〜多分、聞いてないと思う……ちなみに東と南はどうなの?」
『東は隣町へ、南は王都へ続く街道が整備されてるし人通りも多いから、魔物の出現率は低いんだけど、薬草もあまり無いんだよ…』
なるほど。ディーネが採取しながら、2人でそんな話をしていると。奥の茂みから魔物の気配が、どうやら普通のオークが2体、前のパーティーが撃ち漏らしたらしく、軽く傷を負っている。
「ファイアーボールx2」
オークも〈火属性〉が弱点らしく、アッサリと倒せてしまった。
『ヘータって、やっぱりちょっと強いんだな⁈』
急にそんな事を言われ俺は
「え?そんな事は無いと思うけど。何でそう思ったの?」
一応、感覚がズレてたらまずいので確認してみると
『普段、西門側で結構な数の魔物倒してるの見てたし、それで疲れてる様子も見た事なかったしね』
ん〜、知らない間に見られてたのね……
「まぁ、たまたまこの辺の魔物と相性の良いファイアーボールを覚えられたおかげだよ!西側の魔物しか倒してないから、レベルもまだ低いしね!」
これで誤魔化せるかな⁈
『そうか⁈そういうもんか。まぁ、私は攻撃系のスキルを持って無いから、なおさらそう見えただけかもな』
「ちなみにディーネは魔物が出てきたら、どうしてたの?」
『大体は剣で対応してる。数が多い時は目潰しポーションや毒ポーションやらを使って、上手い事やってるよ!剣が通らない敵がいたら、逃げの一択だよね』
『オークぐらいから剣が通りにくくなってくるから、一体だけでも目潰ししてもかなり時間がかかるんだよ。だから、北門側には来ない様にしてるのさ』
うん。誤魔化せてるな。しかし、ポーションって回復だけじゃ無いのか……
「そうだ、ディーネはいつも1人で採取してるの?パーティー組んで北門側でやれば良いんじゃない⁈その方が効率良いんじゃないの?」
『うん。まぁ、昔嫌な事あったから、あまり他人と組みたく無いんだよね…1人の方が気が楽だし。ちなみにヘータも1人が楽なタイプでしょ?』
「そうだね!ホント今回はたまたま。何となく気が向いたからってのが正直なところかな。ディーネには申し訳ないけどね」
『ははっ、気にしなくて良いよ!私だって、似た様なものだし。まぁ、何回か君を見かけて何となく似た空気を感じたから、今回声をかけてみただけさ。受けてくれて助かってる!』
それ以降は数体、撃ち漏らされたであろうオークを同じ様に倒し、高ランクパーティーが何組か帰ってきた所で1日が終わった。一応、オークの魔石はギルドで換金し、ディーネと山分け。
話を聞く限り、キング級は何体か居て討伐したが、エンペラー級は発見されなかったそう。それでも、門から5km圏内はほぼ殲滅したから、このお祭り騒ぎは一旦終了らしい。再度、キング級が発見されたら、また調査隊が出向く様だ。
『今日は助かったよ。ホントありがとう。これ店の地図と割引券。良かったら、買いに来てよ。結構品揃えあるからさ!』
ディーネはそう言うと、地図と10枚の割引券を手渡してくれた。
「うん。こちらこそ、ありがとう!今度、店に寄らせてもらうよ。その時は宜しくね!」
『「んじゃ、また!」ね!』
何となしに声が揃ってしまい、ちょっと恥ずかしくなったが、まぁ、機会が有れば行ってみるかと思いながら、ディーネと別れる。
それから2日過ぎ、例の領主の商隊が移動を始める日。俺は〈気配操作〉で、気配を消して商隊を尾行する。念の為、ヤミーには商隊の影に潜伏してもらっている。
商隊の護衛には8人程の冒険者がいる。いずれもCランク以上のメンバーだ。以前のオーク祭りの時に先に出て行った中にいたから間違いないはず。
これ、盗賊側は勝てるのか?盗賊に勝ってもらわないと、予定が狂うな……
「ヤミー、ちょっと〈吸収〉使うから、影から出ない様にね!」
『了解!あまり吸いすぎるなよ。異変に気づかれても面倒になる気がするから』
「分かってる!まだ暫くは目立たない様にするさ」
〈吸収〉を数回使って暫くすると、盗賊のお出まし。かなり手練れの盗賊らしく、俺の〈吸収〉で軽く弱体化した冒険者達をあっという間に、2人を除いて切り捨ててしまった。
そう。残ったのは女性冒険者だ。まぁ、そう言う事だよな……2人の女性冒険者は拘束され、荷馬車に積まれ、盗賊のアジトへと連れ去られていく。
あの女性2人は安楽死コースかな?そんな事を考えながら数分、盗賊のアジトへ到着。洞窟を更にくり抜いた様な中に、それなりのスペースと幾つかの部屋がある。盗賊は全部で20人ぐらいだ。
盗賊達は2人の女性冒険者を奥の小部屋へ連れて行き、見たことのない魔道具を女性の腕に当てる。〈鑑定〉してみると、どうやら麻痺の効果がある物らしい。
なるほど。悪党らしい良い道具だ。是非ともこの続きを見たいところだが、俺も変な気分になっちゃうから、さっさとダンジョン送りにするか…
「ヤミー、〈闇影捕縛〉で全員、動けない様に縛ってもらって良いかな?そうしたら、俺が〈睡眠〉かけるから、影に潜って!」
『了解。んじゃ影移動しながら、縛って行くからちょっと待っててくれ』
「宜しく!その間に、ダンコに一応、連絡入れておく」
「おーい。ダンコ〜!聞こえるかい?」
『はいは〜いっす。こちらダンコ聞こえるっすよ!どうしたんすか?』
「今から、6階に盗賊20名様一行を転送するから、念の為のお知らせ。あと、2人の冒険者を8階に送るんで、宜しく!」
『了解したっす!初めてのお客様でちょっとワクワクするっすね⁉︎』
「こっちの片付け終わったら、俺もすぐそっちに飛ぶから!」
『は〜い!気をつけてっす〜』
念話でそんなやり取りをしてる間に、ヤミーによる捕縛は完了していた。さて、ここから俺の仕事だ。