第三話 冒険者ギルドに登録
門番とのやり取りを終えて街に一歩入った瞬間。
サワッ
『ヘータ、感じたか?』
「あぁ、感じた。きっとこの街のどこかに精霊がいるな!」
『小さな感覚だから、大精霊様では無さそうだけど』
「まぁ、地道に気配を探りながら行きますかね!とりあえずギルド行って登録だ!」
精霊の小さな気配を感じながら歩く事数分、これぞ冒険者ギルドという建物に到着。
扉を開けると3つの受付窓口があり、程よく並んでいたが特にイベントも無くすんなりと自分の番に。
『あら、初めて見る顔ね!冒険者登録かしら?』
「えっ、あっハイ。冒険者登録しに来ました」
この受付嬢、すごいな。顔覚えてるんか…
「今日初めてこの街に来て、さっき門番の方から仮の身分証を受け取ってココに来ました。」
『あっはいはい。それじゃ、この用紙に記入して頂戴。文字は書けるかしら?無理なら代筆するから、遠慮なく言ってね。』
ん?文字書けるんか?あっ、なんか恥ずかしいけど、書けるって言って、書けなかったらもっと恥ずかしいから、代筆頼むか。
「自信が無いので代筆お願いします」
『了解。んじゃ、名前は?』
「ヘータです」
『次、年齢は?』
「15です」
『もう、職業や、魔法は覚えたのかしら?』
「いや、まだです」
スキルの事は言わない方が良いかと思ったので、スルー。もしバレたらごめんなさいすれば良いやと。
『んじゃ、レベルとか魔力とか鑑定するから、この水晶に触ってみて』
「あっ、はい」
水晶を触ると同時に心の中で〈吸収〉と唱えると
【《鑑定》を覚えました】
やっぱり!さっき門番のところでも試しておけば良かったなぁと、少し後悔していると、
『もう、離しても良いわよ。特に問題無いわね』
受付嬢さんからの声で現実に戻り、
『この穴に指を入れてちょうだい。ちょっとだけ血を頂くから、チクッとするわよ』
言われたままに採血され、何事も無く無事にギルドカードが発行された。
発行されたギルドカードを見てみると
・名前 ヘータ
・年齢 15
・職業 無職
・ランク F
と、至ってシンプルな情報しか無く、スッキリしてて良いのだが、ただ【無職】って、文字にされるとちょっとくるね…
『はい。これで登録完了。じゃあギルドの事について説明するわね』
と、受付嬢さんから聞いた内容はテンプレ通りの
・ランクはSからF。もちろん上がSで下がFだ。
・受けれるクエストは自分のランクの一個上のランクまでのもの。
・Dランクまではクエスト達成ポイントで自動昇格。Cランクから昇格試験あり。
・怪我云々は、自己責任。
・登録日から5日以内なら、剣士、魔法使い、僧侶、斥候、の4職の方々の講習を1日二枠まで、無料で受けれる。
・Fは1週間、Eは1ヶ月、Dは3ヶ月、Cは半年、B以上は一年に一回クエストを完了させる事。出来なければ、効力を失い再発行Fスタート。
この講習は必須だな。全部受けよう。
「ちなみに今日の講習の枠って空いてますか?」
『ごめんなさいね。今日はもう受付終わっちゃってるのよ。明日からの枠なら今日、予約出来るわよ!』
「分かりました。それでは明日から四日間お願いします。剣魔、僧斥の組み合わせで交互に2日ずつで。」
『はい。承りました。講習は午前中ですので、朝9時までにはこの奥の訓練場に来てくださいね。』
「あっ、はい。わかりました!ちなみにこの辺で安くて安全な宿を紹介してもらえますか?」
『それなら、南門の近くにある〈ベネチの宿〉がお勧めですよ!』
「ありがとうございます。ではまた明日に」
ここでも割と物腰柔らかな対応で、ラノベあるある見たいな人にまだ出会ってないんだよな〜。まぁ、上の方の人達はきっとあるあるなんだろうと思いながら、仮の身分証を返却したり、宿を探したり街中をふらふら探索してみたりしていると、もう夕暮れ。
やばっ、今日何にも食べてないし、早く宿行って晩御飯食べなきゃ!
急いで宿に戻り、部屋で夕食を取る。食事は大盛りで頼んで、街の雑貨屋で購入した食器に取り分ける。
そう、ヤミーの分だ。ちなみに食事はパンと煮込み料理という、中世的な食事で普通に美味い。
「ヤミー、どう?食べれないものとかある?」
『いや、大丈夫だ!人間の食べるものなら、ほとんど俺も食べられる。』
「そうか良かったよ!」
『ところで、ヘータ。精霊の気配がどこへ行ってもあまり変わらなかったから、ちょっとした結界に閉じ込められてると思うんだよね』
「それな!まぁ、明日から午前中は講習。午後は引き続き情報収集兼ねて街をぶらつこうじゃないか!」
「あと、クエストも受けないとね。1週間なんたすぐだから…」
そう、この世界の暦は地球とは違い
・6日で1週間
・5週間で1ヶ月
・10ヶ月で1年
一年が300日しかないのだ。結構、時間無いかも?
なんて思っているうちに、ヤミーは食事を終えて丸くなって寝始め、ボソッとこちらに向かって言う。
『ヘータ、俺は夜中に少し街の様子を見てくるから、居なくても騒ぐなよ』
「情報収集は助かるけど、あまり寝なくて大丈夫なのか?猫って、しょっちゅう寝てるイメージがあるんだけど」
『昼間はヘータの影の中で寝てるし、俺は闇精霊の眷属だから、夜中の方が動き易いんだよ』
なるほど。頼りになる猫様だ。
「分かった。宜しく頼むよ!あまり危険な事は避けてくれよ」
俺はそう言いながら、ヤミーの頭を撫でてから食事を再開したのだった。