第二十一話 初体験
ディーネの父をダンジョンへ送った後、何とも言えない表情をしたディーネを見て問いかけた。
「大丈夫?」
『……』
「ディーネ?」
『私……』
「一度、ダンジョンへ戻ろう」
俺は半ば強引にディーネとダンジョンの我が家へ戻って来た。そして、ディーネからブイオさんから貰った闇魔法を少しだけ〈吸収〉し、今後の事を話す。
「ディーネは暫く休んでくれ。出来れば〈マナ〉を回復させるポーションを作って貰えると助かる」
『私は……』
「ディーネにはポーションを作れるスキルがある。出来る事ならそれを精霊や精霊樹のために使って欲しい」
『ありがとう……』
「もしもの時は言ってね」
『はい……』
何を言われたのかは分からないが、かなり動揺している様でまるで別人の様な感じだ。ケアしてあげたい気持ちはあるが、方法も分からない。
とりあえず今は休んでもらって、様子を見る事にする。もしもの覚悟は俺もしておかないとだな。
それから2日間、俺は精霊を探す為に、〈デルフィーノ〉の街を夜な夜なスキルのレベ上げも兼ねて調査していた。
街の中心部に大きな女神像があり、その地下に中精霊が2人捕まっていた。今回は1人での作業だから、気を抜かずに行こう。
想定外の事は起きず順調に作業は終わった時、俺は1人の気楽さを改めて心地良く思ってしまった。
そして、ダンジョンへ戻り一息つく。するとダンコとドロリーがディーネの塞ぎっぷりを心配し、俺に相談して来た。
『ヘータさん、ディーネさんは大丈夫っすか?あまり、食事も取らないっすけど…』
「まぁ、今はそっとしておくしか方法が思いつかないんだ。何か良い方法あるかなぁ?」
『とりあえず14階に小部屋作って、そっちに移動して貰うのはどうっすか?あそこなら、自然も精霊も多いっすから。』
「ん〜そうだね。そうしようか⁉︎あそこなら、畑もあるし、気持ちも紛れやすいかもね」
『そうですね。幸いここはダンジョンですし、ディーネさんの負の感情から生まれる〈魔素〉はダンジョンが吸い取ってくれますしね。』
早速、ダンコはドロリーと相談しながら、14階に風通しが良くシンプルだけど、単調ではないオシャレな小さい家屋を作った。俺には無いデザイン力だ……
そうして、出来上がった頃、俺はディーネに移動を促す為にディーネの部屋を訪ねた。
「ディーネ、ちょっと良いかな?」
返事は無いが部屋のドアが開く。
「ディーネには14階の家に移ってもらう。決して、ここで邪魔だからとか、ネガティブな理由じゃ無い事は分かって欲しい。」
するとディーネは声を出さずに静かに頷く。そして、俺はディーネの手を取り14階の家へと案内した。
「ここで気の済むまで、生活すると良いよ。何かあれば言ってくれ。俺もダンコもドロリーも誰一人、ディーネを嫌いになった訳じゃ無いし、疎ましくも思ってない。」
「ディーネの力にはなりたい。だけど、誰一人その最善の方法が分からないから、君からして欲しい事を言ってくれると助かる。」
「厳しいかも知れないが僕らは他人だ。他人が思ってる事、考えてる事なんて分からない。自分の考えすら、分からない時があるぐらいだからね!」
「まっ、ゆっくりしててくれ。もし、何かしたくても何したら良いか分からない時は、前にも言った〈マナ〉を回復させるポーションを作って欲しい。」
それだけを伝え、俺はディーネを少しだけ抱きしめた。正直、この行動に対する自分の気持ちが分からない。異性としてなのか、父性のもたらすものなのか……とにかくディーネを安心させてあげたかったのだ。
俺は王都〈カヴァリエレスト〉へ向けて進みだした。いくつかの小さな村を通り過ぎ、特に精霊問題もアクシデントも起きず順調そのものだった。
その間もルーティンの様に午前中は〈精霊樹〉の元へ行き周囲の魔物駆除、〈精霊樹〉への〈マナ〉の注ぎ込み。結界の範囲も広がりつつある。そして午後に移動を進めている。
器用な事に、ダンジョンの第二の入り口がある南側には広がらず、残りの三方へ広がっているのだ。
まるで〈精霊樹〉に気を遣われている様だ。ちなみにディーネの事はヤミーにもブイオさんにも共有はしてある。その時に二人に言われたのが、『本人次第だから、君が悩む事では無いよ』と。
確かにそうなのだが、気にならなくは無い。一応、夜帰ってきたらディーネの所に顔を出して挨拶はしている。だが、未だ復調の気配は無い。
そんな日々を3週間ほど続けてたある日、いつもの様に、ダンジョンに夜帰って来て、ディーネの所へ挨拶しに行くと、ディーネが何か吹っ切れた様な顔をして、俺を待っていた。
『ヘータお願いがあるの。私を抱いて』
いきなりの言葉に、頭が真っ白に。前世も含めて、女性から抱いてなんて言葉にしてもらったことなんて無かった俺にはまさに混乱の魔法そのものだった。
「ちょっと待って。嬉しいけど、急にどうした?」
そう。ここで何も言わずに抱けるほど経験も度胸もないのだ俺は。
『ごめんなさい。この前ヘータに抱きしめられた時、すごく大きなものに包まれた様な感じがしたの。だから……』
「俺こそごめん。野暮な事を聞いたね。」
そして俺はディーネの手を取り寝室へ向かい、そこでディーネと一つになった。




