第十二話 ぐるぐる悩む
薬草採取の護衛中、ディーネに気になっている事を聞いてみる。
「どうして、今回この護衛依頼を出したの?ディーネって、あまり他人とは関わりたく無い感じだよね?」
『えぇ、そうね。理由までは話して無かったわね……』
少し、話しにくそうなディーネ。
「あまり話したく無いなら、話さなくても良いよ。ちょっとだけ気になっただけだし、余計な詮索をするつもりも無いからさ!」
『まぁ、ヘータになら話しをしても問題無いわ。今回のこの薬草で作るポーションでこの街での活動を辞めて、旅に出ようと思って』
『だから、北側の良い薬草がどうしても欲しくてね!報酬を低くしたのもそう言う理由よ。まさか、ヘータが受けてくれるとは思って無かったけどね』
「そっかぁ。旅に出るのか。良いね〜!いつ頃、出発するつもりなの?」
『そうね。店の在庫がもう少し売れてからと思ってるから、あと10日前後ってとこかしら。最悪は店の賃貸契約終了日になる15日後ね』
「結構すぐだね!ちなみに目的地は聞いても?」
『特には無いわ!でも、この街から東に向かうつもり。西は森が続くし、魔物も多いと聞くわ。だから、とりあえずは東側の隣町〈ビランチャ〉かな。』
「そっか!最後の手伝いが出来て嬉しいよ!旅、気をつけてね」
『えぇ、ありがとう。ところでヘータはこの先どうするの?』
やらないといけない事は山ほどあるのだが、正直ノープランなのだ。とりあえず精霊樹周りの魔物討伐でもしようと思ってたところに、この質問。
「う〜ん。今のところは正直、ノープランなんだよね。まぁ、暫くはゆっくり休みながら考えようかなって、感じ」
『あら、結構余裕なのね!羨ましい。』
そうして、2日に及ぶ護衛は終了した。魔物もそこまで多くなく、個体としてもキング、エンペラー級は1匹も出ずにお小遣い稼ぎ程度だった。
『護衛ありがとう。これ今回の報酬よ』
「ありがとう。んじゃ、ディーネが旅立つ前に店には寄らせてもらうよ」
『ふふっ、ありがとう。期待しないで待ってるわ』
他愛も無いやり取りを終え、別れようとした時
『もし良かったら途中まででも構わないから、一緒に旅しない?』
予想もしてなかった突然の誘いに、俺はドギマギしてしまい、うまく言葉が出て来なかった。
「あっ、ご、ごめん。えっと……」
『そうよね。急に誘って迷惑だったわよね。忘れてもらって構わないわ』
「あっ、違うんだ。決して迷惑なんかじゃない。誘ってくれたのは嬉しいんだけど、頭の中で整理出来なくて。」
『そっか。もし良かったらで構わないから、考えておいてもらえると嬉しいわ。ダメならダメでも良いから、返事は頂戴ね!』
「分かった。少し考えさせてもらうよ!返事は必ずする。」
ディーネと別れ、一度街の外へ出てからダンジョンに戻り、ダンジョン内の我が家で考える。
体は15歳だけど、中身が47歳の俺には17歳の女の子と2人で旅とか、どうしたものか。いつかは彼女も消さなければならない存在。これ以上、仲良くなったとしたら、辛くなるのだろうか……
でも、この世界へ来て、初めて出来た人族の知り合い。しかも正直、2人でいても穏やかな気持ちになる。彼女に対してネガティブな感情は無い。
俺の取れる行動はざっくり四択だ。
・何も教えないまま、一緒に旅をする。
・何も教えないまま、一緒に旅はしない。
・全てを話し、一緒に旅をする。
・全てを話し、彼女を消す。
後半の2つは彼女のリアクション次第だしな…
色々な考えが頭の中をぐるぐる巡って、さっぱりまとまらない。
「なぁ、ヤミー。どうしたら良いと思う?」
なんと無しにヤミーに聞いてみた。
『ん?好きにしたら良い。ただ女神様、精霊神様から受けた命を遂行するにあたって、共にするものが増えれば、それだけメリットもデメリットもどちらも増えると思う。』
『わかりやすい所で言えば家事から情報収集など全てをヘータ1人でする事は無くなる。しかも、今までの感じだと、精神上の安定にも繋がると思う。これはメリットだな。まぁ、情報収集については俺もいるが。』
「まぁ、そうだな。なんか、ヤミーに気持ちが見透かされてるのなんか恥ずかしいな……」
『ヘータは分かりやすいからな。そんなだからこそ、彼女がヘータの弱点にもなり得る。行動にも多少の制限が出てくるだろう。彼女が裏切る事になるかもしれない。そして、最後には……これがリスクとデメリットだな。』
『俺から一言だけ言わせてもらうなら、もし共に行動するのなら、全てを打ち明けておいた方が良いと思う。』
「そうだよな……ありがとう。もう少しだけ考えてみるよ」
ヤミーの意見はもっともで、俺の考えている以上に俺の事を知った上で冷静に整理し、話してくれた。
それが嬉しくもあり、チョットだけ怖いとも思った。
それから、5日間精霊樹の元へ行き、定期的に精霊樹へ〈マナ〉を送りつつ、周りの魔物の駆除を進める。その甲斐もあってか、精霊樹の結界の範囲が、少し広くなった気がした。
5日目の駆除を終え、ダンジョンに戻り魔石をダンジョンコアに吸い込ませたところで、ダンコから声を掛けられた。
『ヘータさん、今日もお疲れ様っす。ちょっと相談があるんすけど、良いっすか?』
「どした?何か不具合でもあった?」
『いや、ヘータさんが送ってくれる贄のお陰で、〈DP〉が、結構溜まって来たっす。それでこのダンジョンを広げて見ようかと、思ってるっす。』
「あぁ、良いんじゃ無いか!ダンコの好きなようにやって構わないよ」
『広げたいって、気持ちがあるだけで、何したら良いかが分からないっす』
「ん?ダンコは何でダンジョン広げたいの?」
『ん〜、分からないっす。ダンジョンコアとしての本能みたいなものっすかね?溜まった〈DP〉を処理したいみたいな感じっす』
「なるほど、生理現象みたいなものか……」
「なぁ、ダンコ。聞きたい事があるんだけど、良いかな?」
『なんすか?』
「ここに新しい人族が来ても構わないか?」
『権限を与えるとかは、こちらの判断に任せてもらうっすけど構わないっすよ!お嫁さんすか?』
「違う違うっ!まだ、決まった訳じゃ無いけど、一度連れて来て話をして見ようかと思ってて」
『なるほどっす。問題無しっすよ。』
「ありがとう。話が決まり次第、ダンジョンの増築案をまとめるよ」
『りょ〜かいっす!宜しくっす〜』
俺はディーネに全てを打ち明ける事にしたのだ。




